更新日:2021/05/29
がん再発予防
がん再発予防について、ライフスタイルの改善、早期発見・早期治療、食事、治療法の選択など様々な観点から解説します。
がんの初発を含めた予防
3段階のがん予防
一次予防:ライフスタイルの改善
がんのリスクを高める要因は明らかになりつつあり、その要因を排除することで「がんになりにくい体」に近づくことができます。たとえば、禁煙をしたり、バランス良く食事をしたり、適度な運動をすることです。一般の人が普段の生活の中で生活習慣を改善する予防が、一次予防になります。
二次予防:早期発見・早期治療
一次予防でどんなに気をつけた生活をしていても、がんの原因がまだ全て解明されていないため、100%がんを予防することはできません。そこで、がんをできるだけ早く発見することが、二次予防になります。がん検診を定期的に受けて、転移をしていない早期の段階で見つけることが治癒も可能です。
三次予防:一旦、がんを治療したあとに行う再発を防ぐ様々な対策
がんの予防として近年注目されてきたのが、「がんの転移、再発を防ぐ」という意味での予防です。これをがんの三次予防といいます。
がんが命を脅かす最大の理由は「転移、再発するから」です。転移や再発さえしなければ、現在あるがんを取り除くだけで治療は終わり、命に関わることはありません。手術や放射線といった「がんを取り除く」治療については日々進歩し、検査技術の向上や機器の開発により、早期発見率も高くなっています。もちろん、全員が転移、再発するわけではないですし、再発予防を行わなくても再発しない人はいますが、これからの時代は「転移、再発を防ぐ」三次予防について効果的な対策が望まれています。
がん再発予防と食事
がんの再発予防でも食事は重要となります。がんは、再発リスクが高い病気です。また、治療過程もさまざまであり、がん細胞を全摘出した人、抗がん剤治療や放射線治療を受けながらがんと闘う人とさまざまな人がいるかと思います。ここでは、全過程に共通するがんの再発予防に効果のある食事についてご紹介します。
がん再発予防に効果のある食事
がん再発予防に効果のある食事として注目されているのが低脂肪食です。特に、早期乳がん患者に対する効果等について、研究がなされている分野です。しかし、まだまだ化学的な根拠が不十分な点もあり、引き続き研究が行われています。
また、一般的に栄養が偏っている時に用いられる「サプリメント」についても、がんの予防においては推奨されないことが多いので、極力「口から食事を摂取すること」で栄養を補う方が望ましいとされています。
さらに野菜や大豆においては、体全体の抗酸化力や肝臓の解毒機能を高めたり、さまざまな抗腫瘍作用(がんができにくくなる作用)が報告されています。中には、がんの治療中あるいは治療後に使われる「漢方薬」に使われる生薬と、同等の効果があるものもあります。穀物においては、精製したものよりも無精白の全粒のものの方が、がん予防には良いといわれています。
また、がんの再発予防において大切なのは、自分自身の免疫力を上げるということです。免疫力が低下していれば、いくら良い成分での食事をしたとしても、大切な栄養を吸収する力が弱くなります。
がん再発予防においても、がんの予防と同様に、再発予防に効果のある食材を単一で摂取し続けるのではなく、野菜や果物を多く含んだバランスの良い食事を心がけ、抵抗力、免疫力をつけていくことが望ましいと考えられます。
がん再発予防に効果のある食事方法
がん再発予防のためには、前述したように「バランスの良い食事摂取」が求められます。しかし、治療過程においては、食欲がなくて食べることが難しい、味覚障害などで食事が楽しめない、などという場合があります。しかし、これに甘んじて味付けを濃くしたり、食べたいものだけを食べていては、がん再発予防の効果は期待できません。調理方法を工夫する、新鮮な食材を利用するといった対策をすることが望ましいでしょう。
また、がん再発予防には体重のコントロールも重要とされており、体重が適正体重よりも多い場合には、運動だけでなく、食事の面からもカロリーコントロールをしっかり行い、体重を落としていくことが望ましいとされています。現に「肥満はがんの再発率を高める」といわれています。
そのため、水分や食物繊維が豊富な野菜スープ、果物、未精白の穀物といった、カロリーを減らしながらも量の多い食事をとることで、満腹感を維持しながらカロリーを落とすことができ、肥満解消へもつながります。
しかしながら、現在推奨されている食事療法にも限界があり、ずっと続けていればがんが100%再発しないなどということはありません。それだけでなく、厳格すぎる食事療法が、自分自身のストレスにつながり、時にはがんの再発に繋がってしまうこともあります。そのため、厳格な食事療法を長きにわたって継続するのではなく、時には好きなものを食べるなど、ほどほどの食事療法を行っていくことが良いと考えられています。
がん再発予防と飲酒
がん再発予防において、飲酒は完全に絶つのではなく、節度を守ったほどほどの飲酒であれば、禁止されることはほとんどありません。お酒の量は、男性は1日コップ2杯程度、女性は1日コップ1杯程度までにとどめることが、適切といわれています。
がんの再発予防のために行われる治療法
術後補助療法
①薬物療法:全身に働きかける治療法であり、抗癌剤なら様々な場所に潜んでいるかもしれない微小ながん細胞をたたくことで、ホルモン剤ならがんの中でもホルモン依存性の高いがんに対して体内のホルモン量をコントロールすることでがんの再発を抑える、といった作用があります。
※副作用:個人差はありますが、吐き気や食欲不振、脱毛などの副作用が起こる可能性が高いです。
②放射線療法:放射線治療は、手術でがんを切除した後に、その周囲に放射線を照射して、残っている可能性のあるがんをたたきます。
副作用:放射線はがん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるため、治療後5年上経ってから放射線がんになったり、皮膚の発赤やただれ、こわばりなどが起こることもあります。
③免疫療法:術後補助療法の副作用を考えると、再発の可能性があるのかないのかわからない状況で行うのなら、できるだけ副作用の少ない治療法の方がより良いと考えられますが、活性化自己リンパ球療法は副作用が非常に少ない治療法になります。
※エビデンスのある再発予防策
がんに良いということを聞いたらあらゆることを試したいと思いますが、健康食品の種類などによっては、治療の効果を抑えたり、害が出ることもありこともあります。再発予防を考える際には主治医にもコミュニケーションを取りながら、信頼できるエビデンスがあるかを確認の上、選択をしましょう。
治療法の選択
再発予防については様々な選択肢があります。主治医はこの中から患者さんの症状に合わせて治療を行いますが、再発予防を行うことで副作用が生じる可能性があるので、どの治療を受けるのかは患者さん自身で決定することが大切です。そのためにも、自ら情報収集を行い、主治医と積極的にコミュニケーションを取ることで、再発のリスクと治療による障害のリスクを十分に把握して、治療療法を検討する必要があります。