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更新日:2026/08/08

がんと介護保険・介護認定

「介護保険は、がん患者でも使えるのだろうか」「自宅での療養を支えてくれる仕組みをどう探せばいいか」——そうした疑問を抱えながら、病院と自宅の間で迷っている方やご家族は少なくありません。

この記事では、介護保険の対象と介護認定の受け方をはじめ、在宅療養のメリット・デメリット、利用できるサービスの種類、在宅を支えるチームの役割を、厚生労働省・国立がん研究センター がん情報サービスのT1情報をもとに整理します。療養場所の選択は患者さん本人の希望・状態・家族の状況によって異なります。担当医やケアマネジャーに相談しながら決めることが大切です。

この記事でわかること

  • 介護保険の対象は年齢によって条件が異なる(65歳以上と40〜64歳の違い)
  • 40〜64歳ながんで介護保険を使うには「末期がん(特定疾病)」の認定が必要
  • 介護認定の申請から利用開始まで、原則30日以内に通知される流れ
  • 訪問看護・訪問介護・福祉用具貸与など、在宅で利用できるサービスの種類
  • 在宅支援チームの役割と、相談窓口(地域包括支援センター・がん相談支援センター)

がんと介護保険——対象と介護認定の受け方

介護保険の被保険者区分(第1号・第2号)

介護保険の被保険者は年齢によって2つに分かれます※1。65歳以上の方(第1号被保険者)は、要介護・要支援状態になった原因を問わず、介護保険サービスを利用できます※1。

40〜64歳で医療保険に加入している方(第2号被保険者)は、「老化が原因とされる16種類の特定疾病」により要介護・要支援状態になった場合に限って利用できます※1。40〜64歳のすべての方が使えるわけではない点に注意が必要です。

介護保険の被保険者区分を示す図。第1号(65歳以上・原因不問)と第2号(40〜64歳・特定疾病が原因の場合のみ)を対比した表形式の概念図。
介護保険の対象。65歳以上は原因を問わず利用可。40〜64歳は特定疾病が原因の場合のみ。

末期がんは特定疾病に該当する

特定疾病16種類の筆頭が「がん(末期)」です※1※2。ここでいう末期がんとは、悪性新生物と診断され、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態を指し、医師が医学的知見に基づいて判断します※2。

40〜64歳ながんと診断されている方は、まず担当医に「介護保険の第2号被保険者として申請できるか」を確認するところから始めることができます。詳しい申請の手続きは市区町村の窓口でも案内を受けられます。

介護認定の流れ(申請〜サービス開始)

介護保険サービスを利用するには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。申請から利用開始までの流れは次のとおりです※3。

ステップ 内容
① 申請 住民票のある市区町村窓口に被保険者証を持参して申請(40〜64歳は医療保険証も必要)
② 認定調査・主治医意見書 市区町村の調査員が訪問し心身の状態を確認。主治医意見書は市区町村が医師に依頼
③ 一次判定 認定調査の結果をコンピューターで機械的に判定
④ 二次判定(介護認定審査会) 保健・医療・福祉の専門家による総合的な判定
⑤ 認定結果の通知 原則30日以内に通知。「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」の7段階で判定
⑥ ケアプラン作成 要介護1〜5はケアマネジャー(居宅介護支援事業者)が、要支援1・2は地域包括支援センターが作成
⑦ サービス利用開始 ケアプランに基づきサービス事業所と契約し、利用を開始

末期がん患者への速やかな対応(2024年の厚労省通知)

末期がんの方は状態が急速に変化することがあります。厚生労働省は2024年(令和6年)5月、「がん等の方に対する速やかな介護サービスの提供について」という事務連絡を発出しました※4。

この通知では、認定結果が出る前の段階でも「暫定ケアプラン」を作成して即日サービスを開始できること、入院中の患者さんに対するオンラインでの認定調査を容認することなど、末期がん等の方が早期にサービスを利用できるよう自治体・医療機関に積極的な対応を求めています※4。担当医や病院の相談窓口で、早めに利用の見通しを確認しておくと安心です。詳しくはがんと社会活動・補助もご参照ください。

自己負担割合

介護保険サービスの自己負担は原則1割です。65歳以上(第1号被保険者)で一定以上の所得がある場合は2割または3割となります※2。自己負担割合は市区町村が判定し、「介護保険負担割合証」で確認できます※2。詳しい所得基準については市区町村の窓口にお問い合わせください。

在宅サービスには要介護度ごとに月額の支給限度額が定められており、限度額を超えた分は全額自己負担となります※5。がん治療の費用全体についてはがんの治療費もあわせてご覧ください。

在宅のメリット・デメリット

在宅のメリット

在宅療養では、住み慣れた環境で自分のペースに合わせた生活を続けながら医療・介護を受けられます※6。家族との時間を持てること、日常生活の中で療養できることが、患者さん本人の精神的な安心につながる場合があります※6。

また、緩和ケア(生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者さんとその家族のクオリティ・オブ・ライフを向上させるアプローチ)は、入院中だけでなく在宅でも受けることができます※6。訪問診療・訪問看護・訪問介護などのサービスを組み合わせることで、症状の緩和を自宅でも継続できます※6。緩和ケアの詳細は緩和医療とはをご参照ください。

在宅療養に切り替えることが本人の希望に沿っているかどうかを、定期的に確認し合うことが大切です。

在宅のデメリット

在宅療養では、介護の一部を家族が担う場面が生じ、身体的・精神的・経済的な負担が生じることがあります。家族介護者の状況についての詳細は家族介護者とがんをご覧ください。

また、在宅では入院と比べて医療設備が限られており、急変時にすぐに医師が対応できない状況も起こりえます。訪問診療医や訪問看護師との連絡体制をあらかじめ確認しておくことが重要です。

療養場所(自宅・病院・ホスピス・施設など)は、患者さん本人の希望・病状・家族の状況・利用できるサービス体制を総合的に踏まえて選ぶものです。どの場所が優れているという一律の判断はなく、主治医や相談支援員と繰り返し話し合うことが助けになります。

在宅を検討するタイミング

在宅を始めるに当たって

在宅療養を始める前に、まず家族の間で現状の症状・今後の見通し・本人の希望を共有しておくことが大切です。医療者とのやりとりを担う家族の窓口となる人を決めておくと、情報が伝わりやすくなります。

介護に協力できる家族・親族・友人を確認し、治療費や療養方針について話し合う場を設けてください。このとき大切なのは、家族の都合だけでなく患者さん本人の希望が中心になることです。事情によって協力が難しい場合や、在宅に不安を感じる家族がいる場合も少なくありません。わずかな関わりでも継続することが患者さんの支えになります。

住宅の改修(手すりの設置など)や福祉用具の準備は、在宅を始めてから状況に合わせて整えることも可能です。最初からすべてを揃える必要はありません。在宅医療・介護の全体像についてはがんと在宅医療・介護もご参照ください。

緩和ケア

緩和ケアは、がんと診断されたときから始めることができるとされています※6。「治癒のための治療」から「症状を和らげる治療中心」へと方針が変わる段階では、在宅での療養が一つの選択肢になります。本人が「最後のときを自宅で迎えたい」と希望する場合は、訪問診療医・訪問看護師・ケアマネジャーとともに具体的な体制を早めに整えることが助けになります。緩和ケアは患者さん本人だけでなく、ご家族も対象となります※6。

様々な在宅サービスと福祉用具の貸与

在宅サービス

介護保険では、以下の居宅(在宅)サービスが給付の対象となります※7。ケアマネジャーが作成するケアプランに従い、必要なサービスを組み合わせて利用します。

介護保険の在宅サービスを訪問系・通所系・短期入所系・福祉用具に分類した一覧図。
介護保険の在宅サービスは大きく「訪問系」「通所系」「短期入所系」「福祉用具」に分類されます。
分類 サービス名・内容
訪問系 訪問介護(ホームヘルプ):ヘルパーが訪問し、食事・入浴介助・身体介護などを行う※7
訪問入浴介護:入浴困難な方に専門スタッフが浴槽を持参して訪問入浴を行う※7
訪問看護:看護師などが訪問し、主治医の指示のもと健康状態を管理する※7
訪問リハビリテーション:理学療法士・作業療法士などが訪問し、身体機能の維持・回復を支援する※7
居宅療養管理指導:通院が困難な方に医師・歯科医師・薬剤師などが訪問し、療養上の指導を行う※7
夜間対応型訪問介護:夜間に定期的または緊急時に対応する訪問介護※7
定期巡回・随時対応型訪問介護看護:24時間対応可能な訪問介護と訪問看護の一体的サービス※7
通所系 通所介護(デイサービス):日帰りで介護施設に通い、入浴・食事・機能訓練などを受ける※7
通所リハビリテーション(デイケア):医療機関・老人保健施設に日帰りで通い、リハビリを受ける※7
療養通所介護:医療ニーズの高い要介護者を対象とした通所介護※7
短期入所系 短期入所生活介護(ショートステイ):特別養護老人ホームなどに短期間入所し、介護・機能訓練を受ける※7
短期入所療養介護:医療系施設に短期間入所してケアを受ける※7

福祉用具の貸与

車いす・特殊寝台・床ずれ防止用具・歩行器・歩行補助杖・スロープ・移動用リフトなど13品目が介護保険の福祉用具貸与の対象となっています※8。

要支援1・2や要介護1の「軽度」に判定された方には、原則として貸与が認められない品目があります※8。ただし、がんの急速な状態悪化などにより福祉用具の貸与が特に必要と判断され、市区町村が書面等で確認した場合には、例外的に貸与が認められることがあります※4。詳細は市区町村の窓口またはケアマネジャーにご相談ください。

在宅療養を続ける中で、症状の変化に伴い福祉用具を変更・追加する必要が生じることがあります。レンタル品の変更もケアマネジャーに相談することで対応できます。なお、利用にかかる自己負担割合は介護保険サービス全般と同じく原則1割(所得に応じ2〜3割)です※5。

ポータブルトイレなど入浴・排泄用品の一部は「特定福祉用具販売」として購入費の一部が支給される制度もあります※7。

在宅支援チーム

在宅医療・介護は、複数の専門職がチームを組んで支えます。医師(訪問診療医)・訪問看護師・ケアマネジャー(介護支援専門員)・ホームヘルパー・薬剤師などがそれぞれの役割を担い、連携してケアにあたります※9。

患者さん本人が希望する療養の内容・日常生活で大切にしたいことを在宅支援チームに伝えておくと、支援の方向性が合わせやすくなります。家族介護者が「自分でできることの範囲」について事前にチームに伝えておくと、無理のない体制をつくりやすくなります。家族だけで頑張り続けようとせず、必要なサポートを遠慮なく伝えることが、患者さんにとっても家族にとっても助けになります。

一方で、患者さん本人ができることを過剰にサポートしないことも大切です。本人の意欲と主体性を維持できる環境を整えることが、生活の質につながります。症状にもよりますが、外出や旅行といった日常の楽しみを続けられる場合もあります。移動手段や注意点を事前にチームに確認しておくと安心です。

相談窓口(地域包括支援センター・がん相談支援センター)

在宅療養に関する相談は、住んでいる地域の「地域包括支援センター」で受け付けています。地域包括支援センターは高齢者の総合相談・介護予防・権利擁護などを支援する機関として市町村が設置しており、全国に5,487か所(令和7年4月末時点・支所を含めると7,374か所)あります※9。

また、通院していた病院に「がん相談支援センター」が設置されている場合は、治療・生活・仕事・費用など幅広い相談に対応しています※10。在宅移行を検討している段階からの相談も役立ちます。

よくある質問

Q. 40歳でがんと診断されましたが、介護保険は使えますか?
40〜64歳の方(第2号被保険者)が介護保険を利用するには、「特定疾病(16種類)」が原因で要介護・要支援状態にあることが条件です※1。特定疾病の1つに「がん(末期)」が含まれており、担当医が医学的知見に基づいて判断します※2。まず担当医に「介護保険の利用申請が可能か」を確認し、住民票のある市区町村の介護保険担当窓口に申請してください。
Q. 介護認定の申請から利用開始まで、どのくらいかかりますか?
介護認定の通知は申請後、原則30日以内とされています※3。末期がんの方など状態が急速に変化することが見込まれる場合は、認定結果が出る前でも「暫定ケアプラン」を作成してサービスを開始できる仕組みがあります※4。急いでいる場合は申請時に担当窓口に状況を伝えてください。
Q. 在宅療養でも緩和ケアを受けられますか?
はい。緩和ケアは在宅でも受けることができます※6。訪問診療・訪問看護・訪問介護などのサービスを組み合わせることで、症状緩和を自宅でも継続できます。緩和ケアの内容・費用については担当医や訪問看護ステーションにご相談ください。
Q. 要介護1と判定されましたが、車いすは借りられますか?
要介護1は「軽度者」に分類されるため、車いすの貸与は原則として認められません※8。ただし、がんの急速な状態悪化などにより福祉用具の貸与が特に必要と判断され、市区町村が書面等で確認した場合には、例外的に貸与が認められることがあります※4。市区町村の担当窓口またはケアマネジャーに相談してください。
Q. 在宅療養の相談はどこへすればよいですか?
住んでいる地域の「地域包括支援センター」に相談できます※9。通院先の病院にがん相談支援センターがある場合は、そちらでも幅広い相談ができます※10。介護保険の申請に関しては市区町村の介護保険担当窓口が窓口になります。

本記事は2026年8月9日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。

参考資料

  1. 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護保険とは」(最終確認日: 2026年8月9日)
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「介護保険」(がんとお金)(最終確認日: 2026年8月9日)
  3. 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護サービス利用までの流れ」(最終確認日: 2026年8月9日)
  4. 厚生労働省老健局老人保健課「介護保険最新情報Vol.1266(令和6年5月31日)がん等の方に対する速やかな介護サービスの提供について」(最終確認日: 2026年8月9日)
  5. 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(最終確認日: 2026年8月9日)
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(最終確認日: 2026年8月9日)
  7. 厚生労働省 介護サービス情報公表システム(介護サービスの種類一覧)(最終確認日: 2026年8月9日)
  8. 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「福祉用具貸与」(最終確認日: 2026年8月9日)
  9. 厚生労働省「地域包括支援センターについて」(最終確認日: 2026年8月9日)
  10. 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センター」(最終確認日: 2026年8月9日)

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