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更新日:2021/05/29

がん治療と脱毛

脱毛について、特徴、抗がん剤治療による脱毛、放射線治療による脱毛、治療を受ける前の準備、脱毛が始まってからのケアなど様々な観点から解説します。

脱毛とは

脱毛とは、毛組織の栄養障害や、毛組織そのものに何らかの障害が発生したことによって、発毛の機能が一時的にもしくは永久的に失われて生じる現象のことをいいます。状況によっては、頭髪だけでなく鼻毛や眉毛、まつげなど、さまざまな体毛が抜け落ちていきます。 例えば、がん治療を経験した多くの人が副作用によって脱毛を経験しますが、がん治療の内容(抗がん剤や放射線治療)により、脱毛の周期(脱毛が起こる時期)などは異なります。がん治療による脱毛の場合は、頭髪だけではなく、さまざまな部位の体毛が抜け落ちるという特徴があります。

人の体に生えている毛、つまり体毛にはそもそも、毛が生えてから抜け落ちるまでのサイクルがあり、これを「毛周期」とよびます。毛周期とは、発毛(毛が生える)から成長、成長の停止、さらに脱毛という周期を繰り返すことで自然に毛が抜け落ち、新しい毛が生えてきます。

また、体毛にはそれぞれ、生えている部位によって異なる毛周期があります。特に髪の毛は細胞分裂が活発な成長期にあるものが80~90%を占めるといわれており、体毛の中でも最も毛が抜け落ちやすい部分となります。一旦抜けた頭髪が生えそろうまでは長い時間がかかりますが、例えばがん治療の副作用によって頭髪のほとんどが抜け落ちてしまった場合、頭髪がショートヘアの長さに生えそろうまで、半年から1年はかかります。

抗がん剤治療による脱毛

抗がん剤は、がん細胞だけではなく、細胞分裂が活発な細胞にも同時に作用します。頭髪の抜け方は人によって異なりますが、多くの場合、副作用によって髪の毛の量が徐々に少なくなっていくという変化が起こります。しかし、抗がん剤の副作用による脱毛は一時的なものです。抗がん剤投与を開始してから1~3週間で、脱毛が見られ始めることが多いようです。抗がん剤治療が終了してから1~2か月後に、毛根部へのダメージがおさまると再生が始まり、抗がん剤治療終了後3~6か月経過すると、ほとんど回復します。しかし、脱毛終了後に生えてくる毛は今までの髪質と異なることもあり、発毛直後は産毛のように柔らかい毛が生えてきます。

また、脱毛の程度は薬剤によっても異なることが分かっています。脱毛を来しやすい薬剤とその頻度に関しては、以下のようなものがあるといわれています。高頻度とされる薬剤には、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシドなどがあります。中程度とされる薬剤には、メトトレキサート、ビンクリスチンなどがあります。軽度とされる薬剤には、フルオロウラシル、S-1、ゲムシタビン、シスプラチンなどがあります。(参考:新 化学療法ベストプラクティス 佐々木常雄ら編集 2014年2月10日第2版第2刷発行 照林社)

ただし、脱毛の程度は必ずしも薬剤に依存されるわけではなく、個人差もあります。「軽度である」とされている薬剤を使用した場合でも、頭髪がすべて脱毛するようなケースも充分に考えられます。

放射線治療による脱毛

放射線治療の副作用による脱毛は、放射線を照射した部分を中心にして、見られるようになります。つまり、頭に照射した場合には頭髪の脱毛は見られるものの、頭髪以外の脱毛は見られないというのが、放射線治療の副作用による脱毛の特徴といえます。例えば、頭部への照射なら頭髪、目の周囲などへの照射なら眉毛や睫毛、胸部への照射なら胸毛、腹部への照射ならヘソの周囲や陰毛などの脱毛が見られるようになります。

放射線を照射すると、放射線の照射を受けた部位が、皮膚炎を起こします。放射線の影響が皮膚を介して毛根にまで達すると、毛周期が上手く機能しなくなり、脱毛が始まります。一方で、照射部位の皮膚にしか影響を及ぼさないため、部分的な照射を受けた場合には、円形脱毛症のように部分的に脱毛が起こるという状態になることもあります。

がんに対する放射線照射はそもそも、放射線によって細胞が分裂できないようにするという目的があります。しかしそれと同時に、体外からがん細胞までの間にある「皮膚」に影響を及ぼしてしまうことがあります。その一つが「脱毛」なのです。理論的には、放射線を頭部に照射した場合には頭髪が抜け、目の周辺であれば眉毛や睫毛、胸部への照射であれば胸毛、下腹部であれば陰毛が抜け落ちることになります。

頭髪を例として挙げると、放射線治療を開始後2~3週間くらいで脱毛が始まり、髪の毛の量が減少します。しかし放射線治療が終了すると、3~6か月で発毛が再び始まり、6か月から1年かけて、発毛の機能はほぼ回復します。ただし、髪質は元の髪質と異なるものが生えてくることもあります。

治療を受ける前の準備

抗がん剤治療や頭部(頭皮)への放射線治療など、副作用による脱毛を避けられない治療を受ける場合には、治療前からいくつかの準備をしておきましょう。タイミングとしては、実際に治療が始まる前、治療を受けることが決まった頃からが良いでしょう。

抗がん剤治療、放射線治療ともに、特に頭髪は急に抜け落ちることが多く、外見に大きな影響を及ぼすため、精神的なショックを受ける方が非常に多いといえます。そのため、帽子やバンダナ、スカーフ、かつら(ウィッグ)などを、脱毛に気づいたらすぐに使用できるよう、前もって準備しておくことが必要です。しかし、髪の長いかつら(ウィッグ)の場合は見た目のギャップが大きくなるため、治療前の髪の長さに合わせたかつら(ウィッグ)を準備しておくことも検討しましょう。あるいは、治療前の髪型を写真で収めておくと、治療後に「かつら(ウィッグ)」を作る際に、見た目とのギャップが埋めることも可能です。かつら(ウィッグ)はすぐに使える既製品と、完成まで1か月ほどかかるオーダーメイドのものがあります。毛質も人毛、人工毛、混合毛とあり、それぞれにお手入れ方法が異なります。かぶり心地や蒸れ、サイズ感も、実際に着用してみないと分からないことがたくさんあります。そのため、抗がん剤治療や放射線治療を受けている時にも、かつら(ウィッグ)を着用したいと考えている場合には、実際に治療が始まる前に準備しておくと、治療に専念しやすくなります。また、治療前に予めショートカットにしておくことは、実際に抜け落ちる毛の量が少なく感じられるため、精神的なショックが小さくなり、ケアも容易に行える可能性があります。

頭髪が抜け落ちると洗髪など今まで行ってきた動作によって頭皮を傷つけてしまうこともあります。爪を短く切る、シャンプーなどの洗髪剤は肌に優しいものを使用するなど、頭皮への負担を最小限にできるような準備をしておくと良いでしょう。

脱毛が始まってからのケア

治療が開始され、脱毛が始まってからのケアも非常に重要です。まず大切なのは、頭皮を清潔に保つことです。脱毛を気にして頭皮をあまり洗わないようにすると、頭皮の毛穴が詰まり、皮膚炎などを起こすことがあります。刺激の少ない弱酸性のシャンプーを選ぶ、シャンプーを水で薄めて使用するなども効果的です。

洗髪するときは、爪を立てずに指の腹で優しく頭皮を洗います。洗い流す時は、十分なぬるま湯のシャワーで、シャンプーが地肌に残らないように丁寧に洗い流しましょう。コンディショナーを使用するときは、頭皮には使用せず、髪の先にのみ使用するようにします。

洗髪後は、タオルで抑えるように、優しく水分をとります。ドライヤーはなるべく避けた方が良いですが、使用する場合は冷風でゆっくりと、時間をかけて乾かすようにすることが望ましいとされています。

ブラッシングは、目が粗く、先が丸くやわらかいブラシを使用し、頭皮を傷つけないように優しく行いましょう。特に脱毛が始まった時期は、頭髪がばらばらと床に落ちていきますので、自宅にいるときはナイトキャップやバンダナ、スカーフなどを使用すると良いでしょう。

かつら(ウィッグ)や帽子は、見た目の負担を軽くするだけでなく、寒さや紫外線などの刺激から頭皮を守ることにもつながるため、積極的に活用していきましょう。また、まつげが抜けている場合は、見た目の変化だけではなく、ほこりなどが目に入りやすい状態になってしまうため、サングラスや眼鏡を着用するのも、1つの方法です。鼻毛が抜けている場合にも、ホコリや異物を吸い込みやすくなったり、乾燥しやすくなります。花粉など目に見えないアレルゲンが鼻の中に入りやすくなりますし、鼻毛が本来もつ「フィルター」の機能が低下しますので、マスクの着用が望ましいです。

参考文献

(Web)
国立がん研究センター がん情報サービス 脱毛
https://ganjoho.jp/public/support/condition/alopecia.html
国立がん研究センター 東病院 抗がん剤Q&A 脱毛について
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/pharmacy/kouganzai/index.html
静岡県立がんセンター サバイバーシップ 脱毛ケア 「抗がん剤治療」と脱毛
http://survivorship.jp/datsumou/know/03/index.html
同上 「放射線治療」と脱毛
http://survivorship.jp/datsumou/know/04/index.html
同上 治療を受ける前の準備
http://survivorship.jp/datsumou/know/05/index.html
同上 脱毛が始まってからのケア
http://survivorship.jp/datsumou/know/06/index.html
山口大学医学部付属病院 薬剤部 抗がん剤・放射線治療と脱毛ケア
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/138.pdf
日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン 薬物療法について
https://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g7/q48/
湘南鎌倉病院 オンコロジーセンター 抗がん剤治療を受けるあなたに
https://www.shonankamakura.or.jp/section/section35/01.php
(書籍)
新 化学療法ベストプラクティス 佐々木常雄、岡元るみ子編集 2014年2月10日第2版第2刷発行 照林社

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