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更新日:2021/09/05

アピアランスケア

アピアランスケアとは

アピアランスケアとは、「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化を補完し、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」のことです。国立がん研究センター中央病院の外見関連患者支援チーム(現在はアピアランス支援センター)によって定義されました。

がん治療によって、患者にはさまざまな外見の変化が生じます。しかし、かつては外見の変化を気にするよりも治療に専念してがんを克服すべきだという風潮があり、患者自身が外見の不安を口にすることを避けてきました。これが、外見に関する症状ががん医療において軽視されてきた大きな理由だったと考えられています。

近年のがん医療では、アピアランスケアがとても注目されています。その背景には、昨今のがん医療にまつわるさまざまな事情の変化があります。

例えば、がんと診断される人が増えたことも影響しています。最新の予測では、1年間で新たにがんと診断される人は国内で100万例を超えているとされています。これは、男性・女性ともに2人に1人の割合で「がんになる」という計算です。これだけ身近になったがんという病気に対して、手術や放射線療法、薬物療法などの医療は日々進歩しています。部位や病期にもよりますが、医療技術の進歩によりがん患者の生存率は伸び続けています。

さらに、通院治療環境の整備も進み、多くの患者が仕事をしながらがん治療のための通院を継続できるようになったことも影響しています。2018年3月に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」には、目標のひとつに「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」が、分野別施策のひとつに「がん患者等の就労を含めた社会的問題」が挙げられています。この方針に沿って、がん患者が治療と仕事を両立できるよう環境整備が進められてきました。近年ではがん患者も社会とのつながりを持ち、生きがいを感じながら治療生活を送れるようになりつつあります。

しかし、社会とのつながりを持つことは同時に人とのつながりを持つことです。患者自身が「外見を意識する機会が増える」ことで、アピアランスケアの重要性や注目度がいっそう高まっていると考えられます。

アピアランスケアの目的

国立がん研究センターの通院治療者を対象とした調査によると、医師や看護師が着目する身体症状の苦痛と、患者自身が感じる苦痛は大きく異なっていることが分かりました。特に、患者が感じる苦痛度の上位には、頭髪の脱毛や眉毛の脱毛といった症状が入っていました。

こうした苦痛の本質は、変化した部分や症状そのものに関する悩みではなく、外見の変化によって「自分らしさがなくなったように感じる」とか「周囲からどう思われるのか気になる」ということです。したがって、アピアランスケアは単に外見を美しくすることだけを目的とはしていません。もちろん症状を和らげる治療や、変化した部分を目立たなくして溶け込ませる美容的な手立ても重要です。しかし、苦痛の本質が他者との関係性や自分らしさの喪失にあるとすれば、そうした辛さを軽くすること、家族を含めた社会とのつながりを保つこと、その人らしい生活をサポートすることがアピアランスケアの目的です。もっと言うと、がん治療に伴って外見に変化があったとしても、患者自身が気にならないのであればそのまま生活することに何の問題もないといえます。

アピアランスケアの方法

前述のとおり、アピアランスケアはがん治療を始める前の姿に戻ることではありません。あくまで外見の変化による苦痛を軽くして、その人らしく過ごせるように支援することです。治療前と同じ姿でなくても、自分らしさを実感でき、周囲が気にならなくなる姿であればいいのです。具体的には、頭髪の脱毛に必ずしもウィッグを使うわけではありません。

アピアランスケアの方法は、大きく2つあります。

1、実際の外見の支援

治療と並行して、手術跡や脱毛箇所に対するカバーリング、スキンケア、メイク、ヘアスタイリング、服装などについてのアドバイスをしたり、ケア方法を指導したりします。

2、患者本人の外見の変化に対する認知を変えるための支援

患者本人が外見の変化に対する受け止め方を変えられるよう導くことも重要です。がん治療を行っていない人でも、年齢や流行、TPOなどによって外見は変わったり、自ら変えたりするものです。例えば、薄毛対策のおしゃれウィッグとがん患者が脱毛をカモフラージュするために使う医療用ウィッグは、周囲の人から見れば大きな差はないと思えるようになれば、外見の変化に対しさまざまな見方ができるようになります。

また、「自分らしさ」は場面によって違ってもいいと、選択の幅を作れるようになることも重要です。治療前の外見だけが自分らしさの正解ではないこと、外見以外の部分においても自分らしさは出せることに患者本人が気付けるよう支援します。

外見の変化にかかわらず、以前と同じような人間関係を築けていると患者自身が自信を持てるよう支援することも欠かせません。仕事に復帰するための職場の環境整備や、病気や外見の変化の伝え方を練習することなども支援方法のひとつです。 現在はがん診療連携拠点病院のほぼ全ての医療機関で、アピアランスケアに関する相談対応を行っています。また、相談会を実施している自治体や、アピアランスケアに関する助成制度を行っている自治体もあります。

外見に関する不安や心配は、いつまでも自分の中だけに留めておく必要はありません。少しでも自分らしい生き方に近づけるよう、まずは身近なところで相談してみましょう。

参考資料

(Web):
国立がん研究センター がん情報サービス がん登録・統計 2020年のがん統計予測
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html#:~:text=2020%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%81%8C%E3%82%93%E7%BD%B9%E6%82%A3%E6%95%B0%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%81%AF%E7%B4%84,%E3%82%93%E7%BD%B9%E6%82%A3%E6%95%B0%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E3%80%82
国立がん研究センター がん情報サービス がん登録・統計 最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
国立がん研究センター中央病院 アピアランス(外見)ケアとは?
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/appearance/010/index.html
厚生労働省 健康局がん・疾病対策室 アピアランスケアによる生活の質古城に向けた取組
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000559470.pdf
横浜市 アピアランスケアについて
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/iryo/gan/taisaku/appearance.html

(書籍):
野澤桂子・藤間勝子 編、2017年7月1版1刷発行、臨床で活かすがん患者のアピアランスケア、株式会社南山堂

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