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リンパ浮腫とは

リンパ浮腫について、発生する場所、症状、原因、予防、治療方法、用手的リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法、スキンケア、日常生活で気をつけることなど様々な観点から解説します。

目次


リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、がん治療によってリンパ節やリンパ管が傷つき、リンパの流れが滞るとことで起こるむくみのことです。がん治療以外でも発症する可能性がありますが、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなどの手術や抗がん剤治療、放射線治療後に発症する副作用の一つになります。症状については個人差があり、手術や抗がん剤治療、放射線治療の直後に現れる場合や、数年~10数年後に現れる場合もあります。リンパ浮腫は日常生活に影響を与え、腕がむくむと、ペンで文字を書いたり、料理で包丁を使うといったことが難しくなります。また、脚がむくむと、歩いたりすることが難しくなることもあります。

リンパ浮腫の発生する場所

リンパ浮腫が発症しやすいのは、乳がん・卵巣がん・前立腺がん・皮膚がんなどの治療後です。

リンパ浮腫は、
● 乳がん治療(手術)後は、腕(肘の上下)
● 婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)・泌尿器がん(前立腺がん)は、下腹部、陰部、脚の付け根(内もも)
など、リンパ節郭清(※1)を行った場所に近いところのリンパ管の周囲から浮腫が現れます。腕や太もも付け根から始まり、さらに手先、足先へと浮腫が広がっていきます。


※1 リンパ節郭清:がん手術のときに、がん組織と一緒に、リンパ節も切除することです。がんは、他の部位に転移するとき、リンパ節を経由して全身へ広がっていくという特徴があり、これをリンパ性転移といいます。がん組織を切除するときに、がん細胞が転移している可能性があるリンパ節も一緒に切除することで、再発を防ぐという目的があります。一方で、リンパ節を切除してしまうと、切除した部分を中心に、体中のリンパの流れが悪くなります。その結果、リンパ節郭清を行った場所に近いところの周囲から、浮腫が現れるようになります。

リンパ浮腫の症状

リンパ浮腫は、初期の段階では自覚症状がないため、むくみに気づかないことがあります。重症化しないためには、早い段階で症状に気づくことが大切です。

<早期の症状>
早期の症状としては、リンパ液がたまって皮膚の厚みが増してくるため、「これまで見えていた静脈が見えにくくなる」「静脈の見え方に左右で違いがある」「皮膚をつまむと、しわが寄りにくくなる」といった、症状が現れることがあります。

<軽度から中等度の症状>
軽度では、「腕・脚が重い、だるい」「疲れやすい」「指で押したら痕がつく」「皮膚が硬くなる」といった症状が現れます。中等度は、軽度の症状がさらに重くなった状態をいいます。

<重症の症状>
むくみが大きくなり、早期と比べて皮膚がより硬くなり、浮腫が元に戻りにくくなります。肌が乾燥しやすくなり、腕やが動かしにくくなり、違和感があります。

リンパ浮腫は、一般的には痛みを伴わないとされていますが、むくみが急に進むなど、悪化することで痛みが生じる場合もあります。

また、リンパ浮腫を発症すると皮膚が乾燥し、浅いひび割れを起こすなどして皮膚のバリア機能が障害され、細菌などによる感染を起こしやすい状態になります。例えば、小さな傷や虫刺されなどができると、皮膚から小さなホコリの粒や細菌が侵入して感染を起こします。悪化すると、腕や脚全体へ炎症が広がることもあり、合併症として蜂窩織炎を起こすこともあります。症状としては、赤い斑点や、皮膚の赤み、痛み、38℃以上の高熱などがあります。

リンパ浮腫の原因

リンパ浮腫の8割以上は、乳がん・子宮がん・卵巣がん・前立腺がん・皮膚がんなどの「がん治療後」に起こるといわれています。がんの治療としては、がんが広がるのを防ぐために、がん付近のリンパ節を取り除くリンパ節郭清や、放射線治療を行うことがあります。これらの治療によってリンパ管やリンパ節が傷つけられ、リンパ液の流れが停滞し、むくみが生じます。

リンパ管とは、動脈や静脈のように、身体中に張り巡らされた管のことです。リンパ管の中には、リンパ液が流れており、タンパク質や白血球を運んでいます。リンパ液は、腋の下や、脚の付け根などにあるリンパ節に流れ込みます。リンパ節郭清や放射線治療によって、リンパ管の経路の一部が取り去られたり、傷つけられたりすると、リンパ液の流れが滞ってしまい、リンパ管内の圧力が高くなってきます。その結果、リンパ管はその圧力に耐えられず、中を流れるリンパ液が外に漏れ出していまい、リンパ浮腫が生じます。

また、一度リンパ浮腫を発症すると、むくみが生じやすくなります。例えば、旅行や引越しなどで重い荷物を運ぶことや、長時間座ったままでいることも、むくみの原因になることがあります。リンパ浮腫は、かんの治療によって必ず発症するわけではありませんが、一度発症してしまうと、治りにくい病気です。むくみが出現する初めのころは、むくんでいる腕や脚を上に挙げることで、むくみは軽減します。

<発症時期>
手術直後から発症する場合や、数年~十数年後に発症することもあり、その発症時期には個人差があります。生涯にわたり、腕や脚がむくむこともあります。

リンパ浮腫の予防

リンパ浮腫を予防するためには
1. むくみの早期発見
2. 丁寧なスキンケア
3. 日常生活での自己管理
が大切です。


<むくみの早期発見>
むくみの起こりやすい腕、脚全体を目で見たり、手で触ったりしてむくみがないかどうかを確認しましょう。

<スキンケア>
リンパ浮腫の発症や悪化の原因になりやすいのが、皮膚の炎症です。炎症を予防するために、日頃から、皮膚を清潔に保ち、皮膚の乾燥を防ぎましょう。皮膚が乾燥すると、皮膚の保護機能が低下し、細菌感染を起こしやすくなります。保湿剤を使用し、手荒れ、肌荒れ、しもやけなどに注意しましょう。

また、皮膚を傷つけないよう気を付けることも大切です。虫刺されや切り傷などに注意し、野外で活動するときは、長袖長ズボンなどで、皮膚を保護しましょう。また、日焼けによって軽いやけどを起こすことがあります。服装に気を付けるなど、日焼け対策をしましょう。

その他、料理やアイロンを使用する際は、やけどをしないように気を付けましょう。また、カイロの使用は、低温やけどの原因になることがあります。使用の際は十分に注意しましょう。

<日常生活での自己管理>
・体重管理
体重の増加は、リンパ浮腫によるむくみを発症するきっかけや、悪化の一因になります。いろいろな予防や治療を行っても、太っていると効果がでにくくなります。日頃からバランスの良い食事を心がけ、体重の増加に気を付けましょう。

・衣類
ゴムがきつい下着や靴下で、体の一部分を締め付けることは避け、リンパ液の流れを滞留させないゆったりとした衣服を着ることが大切です。

・腕への負担
重い荷物を無理して一度に持つのではなく、「重い」と感じない程度に小さく分けて持つようにしましょう。

・運動
適度な運動は、リンパの流れをよくします。長時間の立ち仕事や座り仕事をするときは、時々、向いの椅子に足を乗せたり、ひざや足首、腕の曲げ伸ばしをしましょう。寝る時は、クッションなどを使ってむくみのある部分を少し高くするのも効果的です。また、体に負担の少ない水泳はリンパ浮腫の治療として知られています。疲れない程度で運動しましょう。運動することで腕や足がだるくなったり、筋肉痛が残るような激しい運動は避け、過度な負担を体にかけないよう、注意しましょう。

・体に負担をかけすぎない
体に負担をかけすぎないために、以下のことにも注意しましょう。
1.重い荷物は持たない
2.正座はしない
3.旅行する際は、移動途中で休憩を取るなどして、無理のないスケジュールを立てる
4.食事では刺激の強いもの、アルコールは適量に抑える

リンパ浮腫は、いつ起こるのか、何がきっかけで悪化するのか、分かりにくいこともあります。しかし、リンパの流れを停滞させない、体の一部に強い力をかけないなど、自分の体をいたわることが予防策の一つになります。無理な生活をせず、少しでも気になることがあれば主治医医に相談しましょう。

リンパ浮腫の治療方法

がん治療後は、早い段階でむくみを発見し、早めにケアを行うことを心がけましょう。

むくみが発症していないか日頃から注意をすることが大切ですが、むくむが発症したら、すぐに主治医に相談しましょう。確実な治療法がまだないため、一度発症すると完治は難しいですが、適切なケアを行い、普段の生活でもできることを行うことで、QOLを改善することは可能です。リンパ浮腫の治療方法である複合的理学療法は、「用手的リンパドレナージ」「圧迫療法」「運動療法」「スキンケア」の4つから構成されます。自分の症状に応じて、これらを組み合わせた治療を受けましょう。

用手的リンパドレナージ
用手的リンパドレナージとは、腕や脚に滞っているリンパ液を、リンパ節へと誘導し、むくみを改善させるために、医療機関で提供される医療用マッサージ方法です。

リンパ液の流れを、柔らかいマッサージによって適切にし、むくみを改善します。一般的に行われているマッサージや、美容目的のリンパドレナージとは目的・手技が異なるものです。用手的リンパドレナージは、専門的な知識や技術を持つ医療者の指導の下で行う必要があります。むくみがあるからといって、これらのマッサージを受けると、悪化することもありますので、十分に注意しましょう。
圧迫療法
圧迫療法はむくみを和らげ、症状の安定を維持するために重要な治療法です。むくんだ部分を圧迫することにより、皮下組織内の圧力を高めることで、リンパ液が毛細血管から漏れ出すことや、リンパ管の中にたまるのを防ぎます。むくみの程度により、圧迫方法が異なります。

● 軽度から中度のリンパ浮腫の場合:弾性着衣を用いた圧迫を行う
● 高度のリンパ浮腫の場合:弾性包帯を用いた圧迫を行う
など、個々の症状に応じて行うことがあります。これらの方法により圧力を継続してかけることで、次のような効果があります。
  1. むくみを減った良い状態を継続する
  2. リンパ液が滞留しないようにする
  3. リンパ液の流れを良くする
圧迫療法についても、さらに高度な技術が必要です。
運動療法
リンパ浮腫に対する運動療法は、弾性包帯や弾性着衣などを利用して、圧迫したまま脚の関節を動かす運動になります。脚を動かすことで、筋肉は収縮と弛緩をします。これにより、リンパの流れが良くなります。ゆっくりと膝や足首の曲げ伸ばし運動を行いましょう。関節は動かさないと、どんどん動かすのが難しくなります。

腕にむくみがある場合は、ゆっくりと手を握ったり開いたりする運動や、肘や手首の関節の曲げ伸ばし運動を行いましょう。

ただし、強い力がかかるような過度な運動は、身体の負担となり、むくみを悪化させますので注意が必要です。
スキンケア
リンパ浮腫の発症や、悪化のきっかけになりやすいのが、皮膚への細菌感染による炎症です。以下のことに注意しながら、スキンケアを行いましょう。
  1. 家事の際にはゴム手袋などをして、皮膚が傷つけないようにする。
  2. 保湿剤を利用して皮膚の潤いを保ち、乾燥を防ぐ。
  3. 丁寧に洗うことで、水虫などを予防して皮膚の清潔を維持する。

参考文献

国立がん研究センター がんと療法205 がん治療とリンパ浮腫
https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/odjrh3000000purk-att/205.pdf
国立がん研究センター がん情報サービス リンパ節郭清(りんぱせつかくせい)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/lymph_setsukakusei.html
四国がんセンター リンパ浮腫外来 リンパ浮腫(脚のむくみ)の予防と治療
http://www.shikoku-cc.go.jp/hospital/guide/class/lymph/pdf/rinpa_ashi20110920.pdf
大坂医科大学 形成外科 リンパ浮腫
https://www.osaka-med.ac.jp/deps/pla/p-subject-05.html

(書籍)
病気がみえる vol.2 循環器(第3版) 医療情報科学研究所(編)
看護師・看護学生のための なぜ?どうして?4 成人看護 消化器・周手術期・がん看護 医療情報科学研究所(編)

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