更新日:2026/08/26
肺がんとは|症状や検査、治療、ステージなど
肺がんについて、小細胞肺がんと非小細胞肺がんの違い・症状・喫煙と受動喫煙による危険性・40歳から年1回の検診と喀痰細胞診の対象・EGFRやALKなどの遺伝子検査とPD-L1検査で治療が決まること・病理病期別の術後補助療法と術前治療・生存率・治療後の経過観察など、さまざまな観点から解説します。
肺がんは、日本で最も死亡数が多いがんです。
一方で、ここ10年で治療の決め方が根本から変わったがんでもあります。いまは遺伝子検査の結果で使う薬が決まります。この記事では、その仕組みを整理します。
肺がんとは
肺がんは気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです※1。
大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分類されます。非小細胞肺がんには腺がん、扁平上皮がんが含まれます※1。
この2つは治療の考え方がまったく違います。非小細胞肺がんは手術・放射線・薬物療法を組み合わせますが、小細胞肺がんは薬物療法が治療の中心です※1。
日本では2023年に123,989例(男性81,381例・女性42,607例)が肺がんと診断されました。人口10万人あたりでは99.7です※2。
肺がんの症状
早期には症状がみられないことも多く、進行して初めて症状が出ることもあります※1。
症状としては咳、痰、血痰、胸痛、息苦しさ、動悸、発熱などが挙げられます※1。
いずれも肺がんに特有の症状ではありません。だからこそ、症状を待たずに検診を受ける意味があります。
肺がんの原因
喫煙
喫煙者は非喫煙者に比べて男性で4.4倍、女性では2.8倍肺がんになりやすいとされています※1。
受動喫煙
受動喫煙も危険性を2〜3割高めます※1。
自分が吸わなくても関係する、ということです。
そのほかの危険因子
アスベスト、肺結核、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎も危険因子です※1。
肺がん検診とその費用
肺がん検診は、国が推奨する対策型がん検診の一つです※4。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 男女ともに40歳以上※1 |
| 間隔 | 1年に1回※1 |
| 内容 | 問診(質問)と胸部X線検査※1 |
対策型の肺がん検診の項目は、問診と胸部X線検査です。喀痰細胞診は全員が受けるものではなく、喫煙量が多い、血痰があるなど、肺がんのリスクが高い場合に行われることがあります※1。
費用は市区町村が実施する検診では自己負担が抑えられていることが多いものの、金額は自治体によって異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。
肺がんの検査と診断
がんを見つけ、診断を確定する検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 胸部X線検査・CT検査 | 肺の中を画像で調べる※1 |
| 喀痰細胞診 | 痰の中の細胞を調べる※1 |
| 気管支鏡検査 | 気管支の中を観察し、組織を採取する※1 |
| 経皮的針生検・胸腔鏡検査 | 組織を採取する※1 |
| MRI検査・PET-CT検査・骨シンチグラフィ | 広がりや転移を調べる※1 |
| 腫瘍マーカー検査 | 血液検査※1 |
治療を決める検査 ― ここが肺がんの要
がん情報サービスが挙げる検査は次のとおりです※1。
- EGFR/ALK/ROS1/BRAF/MET/RET/NTRK/KRAS/HER2 遺伝子検査
- PD-L1検査
「肺がんの薬」はひとつではありません。この検査の結果によって、使える分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が変わります。
ご自身がどの検査を受け、結果がどうだったかは、必ず確認しておいてください。治療の選択肢がそこで決まります。
肺がんの病期(ステージ)
非小細胞肺がんはTNM分類にもとづきIA1期〜IVB期に分類されます※1。
小細胞肺がんは限局型と進展型に分類されます※1。
肺がんの生存率・予後
肺がんの5年相対生存率は39.3%(男性34.3%、女性48.8%)です。2018年に診断された方についての、全国がん登録生存率データによる数値です※2。
参考として、死亡数は2024年で75,569人(男性52,333人、女性23,236人)でした(人口動態統計死亡データ)※2。
この数字を読むときは、次の点にご注意ください。
- 病期別の数値は、一般向けの統計としては公表されていません。がん情報サービスは院内がん登録生存率集計結果閲覧システムを案内するにとどめています※1。ご自身の見通しは主治医にお尋ねください
- 集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません
- 2018年に診断された方のデータであり、その後に登場した治療の効果は反映されていません。肺がんは分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬が急速に増えた領域です
肺がんの治療法
非小細胞肺がんと小細胞肺がんで考え方が違う
| 種類 | 治療 |
|---|---|
| 非小細胞肺がん | 手術、放射線治療、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬※1 |
| 小細胞肺がん | 薬物療法が治療の中心。限局型では放射線治療と同時に細胞障害性抗がん薬による薬物療法を行うことがある※1 |
手術(外科療法)と、その前後の治療
日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン』2024年版は、手術の前後の治療について病理病期ごとに推奨を示しています※3。
術後補助化学療法
| 対象 | 推奨 |
|---|---|
| 腺癌(病変全体径2cm超、IA3〜IIIA期N0) | UFT療法を強く推奨(推奨の強さ1、エビデンスの強さA、合意率85%) |
| 非腺癌(同上) | UFT療法を弱く推奨(推奨の強さ2、エビデンスの強さC、合意率100%) |
| II〜IIIB期の完全切除例 | シスプラチン併用化学療法を強く推奨(推奨の強さ1、エビデンスの強さA、合意率95%) |
遺伝子変異がある場合の術後の治療
| 対象 | 推奨 |
|---|---|
| EGFR遺伝子変異陽性(II〜IIIB期) | シスプラチン併用後のオシメルチニブ追加を弱く推奨(推奨の強さ2、エビデンスの強さB、合意率48%) |
| ALK融合遺伝子陽性(II〜IIIB期) | シスプラチンの代替としてアレクチニブを弱く推奨(推奨の強さ2、エビデンスの強さB、合意率70%) |
EGFRの推奨は合意率48%です※3。専門家の間でも意見が分かれていることを示しています。説明を受けるときに確認しておくとよい点です。
術前の治療
| 対象 | 推奨 |
|---|---|
| I〜IIA期 | プラチナ製剤併用療法を行わないよう弱く推奨(推奨の強さ2、エビデンスの強さC) |
| II〜IIIB期(EGFR/ALK陰性) | ニボルマブ+プラチナ製剤を弱く推奨(推奨の強さ2、エビデンスの強さB、合意率92%) |
| II〜IIIB期 | ペムブロリズマブ+プラチナ製剤(術前・術後)を弱く推奨(推奨の強さ2、エビデンスの強さB、合意率96%) |
放射線療法
ガイドラインは術後の放射線治療について、I〜II期では行わないよう強く推奨しています(推奨の強さ1、エビデンスの強さA、合意率100%)※3。III期(N2)については「根拠が明確ではない」とされています(合意率63%)※3。
放射線治療全般については放射線療法とはをご覧ください。
抗がん剤(化学療法)・分子標的薬
前述のとおり、遺伝子検査とPD-L1検査の結果で使う薬が変わります※1。抗がん剤一覧もあわせてご覧ください。
免疫療法
肺がんでは免疫チェックポイント阻害薬が治療の柱の一つです※1。前述のとおり、術前治療にも用いられます※3。
一方、自由診療で提供されている免疫療法には、効果が証明されていないものがあります。詳しくは免疫療法の比較をご覧ください。
陽子線治療・重粒子線治療
重粒子線治療では肺がん(I期からIIA期まで)が保険適用疾患とされています※5。また肺がんは先進医療の対象疾患にも挙げられています※5。
肺がんの再発・転移
治療後は、定期的に通院して検査を受けます※1。治療後の経過観察は5年間が目安ですが、10年ほどになることもあります※1。
そして禁煙の継続が重要です※1。
再発・転移の仕組みについてはがんの再発と転移はなぜ起こる?、療養中のつらさについては緩和ケアもあわせてご覧ください。
本記事は2026年8月27日時点の公的機関の情報および学会診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」(最終確認日: 2026年8月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 肺」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン』2024年版 非小細胞肺癌「4.周術期」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 厚生労働省「がん検診」(がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針・令和7年12月24日一部改正)(最終確認日: 2026年8月27日)
- QST病院(量子科学技術研究開発機構)「重粒子線治療が適応となる疾患」(最終確認日: 2026年7月30日)


















