更新日:2026/08/08
がん治療の副作用と合併症
「副作用がどれくらい続くのか」「どこまで我慢していいのか」——治療を続けながら、こうした疑問を抱えている方は少なくありません。副作用や合併症のことを事前に知っておくと、いざというときに落ち着いて対処できます。
この記事では、化学療法・放射線療法の主な副作用と、がんの進行や治療に伴う合併症について、国立がん研究センター がん情報サービスをはじめとするT1一次情報をもとに整理します。個々の治療内容については必ず主治医にご相談ください。
この記事でわかること
- 化学療法(抗がん剤)が正常細胞に影響を与える理由と、脱毛・吐き気・骨髄抑制などの主な副作用の特徴
- 制吐薬の予防投与という考え方と、吐き気・嘔吐の対処の基本
- 放射線療法の急性障害と晩期障害の違い、受診の目安
- がんの進行に伴う症状(胸水・リンパ浮腫など)と治療に伴う合併症(口腔合併症・性機能障害・妊孕性)の整理
- 主治医にいつ連絡すべきか——緊急サインの目安
化学療法(抗がん剤)
作用の仕組みと副作用が起きる理由
細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することでがんを攻撃する薬で、がん以外の正常な細胞も影響を受けます※1。正常な細胞のうち、分裂が活発なところほど影響を受けやすく、これが副作用の起こる理由の一つと考えられています。影響の受け方や程度は薬の種類によって異なります※1。
副作用には種類と個人差があり、出現する時期はある程度予測できます。投与後1〜2週目に現れやすいものとして、吐き気・食欲低下・だるさ・口内炎・下痢があります。2週目以降に現れやすいものとしては、脱毛・手足のしびれ・皮膚症状があります。血液検査で確認できる副作用として、肝機能障害・腎機能障害・白血球減少・血小板減少・貧血があります※1。
脱毛
薬物療法による脱毛は、投与後1〜3週間で始まることが多いとされています※2。治療終了後2〜3か月で産毛が戻り始め、3〜6か月で短い毛が生えそろうことが多いとされています※2。
ただし薬剤の種類によって脱毛の程度は異なり、ほとんど脱毛しない薬もあります※2。ウィッグや帽子の活用について不安がある場合は、がん相談支援センターや担当医・看護師に相談する選択肢があります。脱毛についての詳細はがん治療と脱毛もご参照ください。
吐き気・嘔吐と制吐薬の予防投与
吐き気・嘔吐の頻度は、薬の種類によって異なります※3。制吐薬(吐き気止め)の進歩により、コントロールできるようになってきたとされています※3。
日本癌治療学会の「制吐薬適正使用ガイドライン2023年10月改訂 第3版」では、抗がん薬の催吐性リスクを4段階に分類し、リスクに応じた予防的制吐療法を推奨しています※4。制吐薬は症状が起きてから使うのではなく、催吐リスクに応じて予防的に使う考え方が採られます。症状が続いたり、効果が不十分な場合は、担当医や看護師に相談して調整できます※3。どの薬をどのように使うかについては、主治医にご確認ください。
食欲不振・味覚障害
薬物療法や放射線治療により味細胞が傷ついたり、唾液分泌が低下したりすることで、味覚の変化(味がわかりにくい・金属味・苦味など)が生じることがあります※5。多くの場合、治療終了後数か月で改善するとされています※5。
食欲不振の原因は吐き気・味覚変化・心理的要因など多岐にわたります※5。食事や栄養の工夫については栄養士や医療チームへの相談が有効です。詳しくはがんと食事・栄養についてもご覧ください。
骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)
薬物療法や放射線治療によって骨髄で血液細胞を作る力が低下し(骨髄抑制)、白血球・赤血球・血小板が減少することがあります※6※7。
白血球(特に好中球)が著しく減少すると、感染のリスクが高まります※6。37.5度以上の発熱があったときは、ためらわず、がん治療を受けている医療機関にすみやかに連絡することが大切です※6。感染症が重症化しやすい状態のことがあるためです。感染症への備えについてはがん患者と感染症もあわせてご参照ください。
赤血球が減少すると貧血となり、だるさ・息切れ・動悸などが起きることがあります※7。血小板が減少すると出血しやすくなり、あざ・鼻血・歯ぐきからの出血などが見られることがあります※16。症状が重い場合は輸血を行うこともあります※7。
口内炎
口内炎は、約半数の薬物療法患者さんに発現するとされています※8。原因は口腔粘膜の損傷・唾液分泌の低下・免疫力低下などです※8。口内炎が重症化すると食事や睡眠に支障が出て、がん治療の継続に影響することがあります※8。治療前の歯科受診と、毎日の丁寧な口腔ケアが予防につながるとされています※8。
末梢神経障害(しびれ)
化学療法による末梢神経障害(しびれ・感覚異常)は、特定の薬剤で起きやすいとされています※9。症状は感覚異常(手足のビリビリ・ジンジン感・手袋をはめているような感じ)、運動機能の低下(つまずき・物をつかみにくい)、自律神経障害(便秘・排尿困難)など多様です※9。症状が変化した場合はすぐに担当医に相談することが重要です※9。
下痢
下痢は細胞障害性抗がん薬・免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬・腹部や骨盤部への放射線治療・手術後などで起きることがあります※10。高齢者はとくに脱水になりやすいため、症状が続く場合は早めに担当医や看護師に相談・受診することが大切です※10。
放射線療法
急性障害(治療中〜直後に起きる副作用)
放射線治療中または終了直後に起こる副作用(急性期副作用)として、疲労感・だるさ・食欲不振・皮膚炎があります※11。照射部位によって、口腔乾燥・味覚変化・咳・下痢などが加わることがあります※11。
皮膚炎は通常、照射終了後2週間から1か月程度で治療前の状態に戻ることが多いとされています※11。抗がん薬との併用時は骨髄抑制が強くなる場合があります※11。
放射線治療による吐き気は照射後2〜3時間後に発症することが多く、約10日で落ち着く傾向があるとされています※3。制吐薬についての相談は担当医へ。
晩期障害(数か月〜数年後に起きる副作用)
終了から半年〜数年後に起こる晩期副作用があり、照射部位によって内容が異なります(味覚変化・二次がんのリスクなど)※11。「重篤な晩期副作用はごく少数の人にしかあらわれません」(国立がん研究センター がん情報サービス)※11。
生殖器への照射は不妊につながる可能性があります(妊孕性については後述)※11。リンパ浮腫が晩期障害として起きることもあります。リンパ浮腫の詳細はリンパ浮腫とはをご覧ください。
治療後に気になる症状が現れた場合は、遠慮なく担当医に相談することが大切です。
合併症
がん治療に伴う合併症は大きく2種類に分けられます。①がんの進行・転移に伴い起こる症状と、②治療そのものによる合併症です。
がんの進行・転移に伴う症状(悪性胸水・リンパ浮腫)
がんの進行に伴い、肺の外側(胸腔)に水がたまる(悪性胸水)ことがあります※12。息苦しさが主な症状で、ドレナージ(チューブを挿入して排水する処置)が行われることがあります※12。呼吸困難が急に起こった場合はただちに受診が必要です※12。
手術によるリンパ節郭清・放射線治療・がんの進行がリンパ浮腫の主な原因となります※13。腕や脚などにむくみが起こり、一度発症すると完治が難しいため、予防と早期対処が重要とされています※13。治療としては圧迫療法・用手的リンパドレナージ・運動療法などがあります※13。詳しくはリンパ浮腫とはをご参照ください。
背中や腰の強い痛み、手足の脱力・しびれ、排尿・排便の障害などの新しい症状が急に現れたときは、自己判断せず、早めに担当医に相談してください。気になる変化を早めに伝えることが、適切な対応につながります。
治療に伴う合併症——口腔合併症
口内炎は、頭頸部への放射線治療を受けたほぼ全員に起こるとされています※8。口内乾燥・感染リスクの上昇なども生じます※8。治療前に歯科受診を行い、口腔ケアの方法を専門家に確認しておくことが予防に有効とされています※8。
性機能障害と妊孕性(将来の妊娠の可能性)
骨盤内臓器の手術では、勃起・射精に関わる神経が損傷し、射精障害が起こることがあります※14。放射線治療や細胞障害性抗がん薬により精子形成が低下(無精子症)することもあります※14。治療終了後数年で精子形成が回復することがある一方で、永続的な影響が残る場合もあります※14。
女性では、細胞障害性抗がん薬により一時的な無月経が起こることがあります※15。放射線治療・薬物療法により早期閉経・不妊につながる可能性があります※15。手術だけでなく、薬物療法・放射線療法でも性機能への影響が生じることがあります※14※15。
性機能への影響は治療の種類・術式・個人差が大きいため、担当医や専門医への相談が大切です。
妊孕性温存について
将来の妊娠を希望する場合、治療開始前に妊孕性温存の選択肢を主治医と相談することが重要です※14※15。男性では精子凍結保存が確立した方法として推奨されており、できるだけ治療開始前に実施することが望ましいとされています※14。女性では胚(受精卵)・未受精卵子の凍結保存、卵巣組織の凍結保存などの選択肢があります※15。採卵時の年齢が低いほど成功率が高いとされています※15。
各都道府県に妊孕性温存に関する公的助成制度があります(助成対象の年齢など詳細は各都道府県にご確認ください)※14。治療の緊急度・年齢・状態によって選択肢が異なるため、早めに担当医と生殖医療専門家(産婦人科医など)に相談することが大切です※15。
よくある質問
- Q. 副作用は必ず起きますか?
- 副作用の出方は薬の種類や照射部位、個人差によって大きく異なります。同じ薬を使っても、まったく脱毛しない方もいれば、強く出る方もいます。事前に担当医や看護師に「どのような副作用が予想されるか」を確認しておくと、備えやすくなります。
- Q. 発熱したときはいつ病院に連絡すればいいですか?
- 化学療法中や終了直後に37.5度以上の発熱があったときは、ためらわず、がん治療を受けている医療機関にすみやかに連絡することが大切です※6。白血球(好中球)が減少しているときの発熱は、発熱性好中球減少症のサインである可能性があります。事前に「何度になったら連絡するか」を担当チームと確認しておくと安心です。
- Q. 晩期障害はどのくらいの期間で気づきますか?
- 放射線治療による晩期障害は、治療終了から半年〜数年後に現れることがあります※11。重篤な晩期副作用はごく少数の方にしかあらわれませんが※11、体の変化があった場合は担当医に相談してください。定期的なフォローアップ受診を欠かさないことが大切です。
- Q. 妊孕性温存はいつ相談すればよいですか?
- できるだけ治療開始前に相談することが望ましいとされています※14※15。精子凍結や卵子凍結は治療開始後では間に合わないことがあります。担当医に「治療が妊娠の可能性に影響するか」を最初の段階で確認しておくと安心です。
- Q. 副作用が出たとき、自分で薬を調整してもいいですか?
- 副作用への対処は担当医や薬剤師・看護師と相談したうえで行ってください。市販薬の使用やサプリメントが治療に影響することもあるため、自己判断での追加・中断はせず、チームに伝えることが重要です。
本記事は2026年8月8日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「脱毛」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「吐き気・嘔吐」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 日本癌治療学会「制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版」(Mindsガイドラインライブラリ収載)(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「味覚・嗅覚の変化」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「感染しやすさ(白血球減少)」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「口内炎・口内乾燥」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「しびれ(末梢神経障害)」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「下痢」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療 副作用と対策」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「呼吸困難・咳・痰」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ浮腫」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「妊孕性 男性患者とその関係者の方へ」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「妊孕性 女性患者とその関係者の方へ」(最終確認日: 2026年8月8日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「出血しやすい・血小板減少」(最終確認日: 2026年8月8日)





















