更新日:2026/07/30
脳腫瘍とは|症状や検査、治療、グレードなど
脳腫瘍について、原発性と転移性の違い・良性と悪性・WHOグレード1〜4・神経膠腫や髄膜腫など主な種類と治療のめやす・頭蓋内圧亢進症状と局所症状とけいれん発作・検査と病理診断・手術で機能を残すことと全摘出の両立という難しさ・放射線治療と薬物療法・種類とグレード別の5年生存率・高次脳機能障害とリハビリテーションなど、さまざまな観点から解説します。
脳腫瘍は、「がん」という言葉でひとくくりにできない病気です。良性のものから悪性度の高いものまで幅があり、種類とグレードによって治療も見通しも大きく変わります。
この記事では、その分かれ方を公的機関の情報にもとづいて整理します。
脳腫瘍とは
脳腫瘍とは頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称で、大きく原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の2つに分けられます※1。原発性は脳自体から発生し、転移性は他の臓器のがんが脳に転移したものです※1。
良性と悪性
増殖が遅く正常組織との境界が明瞭な腫瘍は良性で、主に脳実質外に生じます※1。一方、増殖が速く、周辺の組織に浸潤して、正常組織との境界がはっきりしない腫瘍は悪性です※1。
WHOグレード
グレードは1〜4の4段階に分けられます※1。
| グレード | 位置づけ |
|---|---|
| グレード1 | 良性腫瘍。手術で取り除くことができれば、再発の危険はほとんどありません※1 |
| グレード2〜4 | 悪性腫瘍。グレードが上がるほど悪性度が増します※1 |
日本では2023年に5,777例(男性3,135例・女性2,642例)が脳・中枢神経系の腫瘍と診断されました。人口10万人あたりでは4.6です※2。
脳腫瘍の症状
頭蓋内圧亢進症状
腫瘍ができると頭蓋の中の圧力が高くなります。これによってあらわれる頭痛、吐き気、意識障害などの症状を頭蓋内圧亢進症状といいます※1。
特徴的なのはタイミングです。朝起きたときや昼寝のあとに症状が強く出ることがあります※1。
局所症状(巣症状)
脳の中に腫瘍ができると、腫瘍や脳浮腫の影響を受けてその部位の機能が障害され、局所症状としてあらわれます※1。
前頭葉の腫瘍では片麻痺や言語障害、側頭葉では失語や視野欠損、頭頂葉では感覚障害などが生じます※1。
けいれん発作
脳の神経細胞が過剰に興奮し、一斉に信号を送ってしまうことがあります。このときに起こる発作をけいれん発作といい、発作が繰り返し起こる場合をてんかんと呼びます※1。
脳腫瘍の原因
脳腫瘍の原因について、認定した公的機関の一般向け資料に、明確な危険因子として整理された記述はありません。
診断にあたっては、生検あるいは手術で脳腫瘍の組織を採取して組織の遺伝子変異を調べる(遺伝子検査)ことが行われます※1。腫瘍の性質を決める分子生物学的な特徴が、種類の分類と治療方針に関わります。
確かな情報が得られた時点で追記します。
脳腫瘍の検査と診断
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 神経学的検査 | 運動機能や感覚機能のほか、認知機能、言語機能などの高次脳機能に異常がないかどうかを調べる※1 |
| CT検査・MRI検査 | いずれも頭蓋骨の内部を描き出し、腫瘍があるかどうかを調べる。造影剤を使うと腫瘍の詳細が明瞭になる※1 |
| PET検査 | 脳腫瘍の種類や悪性度の診断、脳以外の臓器へのがんの広がりを評価するのに役立つ※1 |
| 血管造影検査 | CTA・MRA・脳血管造影。脳の血管と腫瘍の関係や腫瘍への血流を確認し、手術を安全に実施するために行う※1 |
| 生検と病理診断 | 最終的に診断を確定するためには、生検あるいは手術で組織を採取して遺伝子変異を調べ、病理医が細胞を顕微鏡で観察する病理検査が必要※1 |
脳腫瘍の主な種類とグレード、治療のめやす
| 種類 | 特徴と治療のめやす |
|---|---|
| 神経膠腫(グリオーマ) | 神経膠細胞(グリア細胞)が腫瘍化した代表的な悪性脳腫瘍。原発性脳腫瘍のうち、髄膜腫に次いで多い。星細胞腫・乏突起膠腫・膠芽腫がある。可能な限り手術で腫瘍を摘出し、病理診断後に放射線治療および薬物療法を追加することが原則※1 |
| 髄膜腫 | 原発性脳腫瘍の中では最も多い腫瘍で、大部分は良性。ゆっくり大きくなるため小さいうちは症状がないまま経過することが多い。初発で摘出可能な場合は手術が基本※1 |
| 中枢神経系原発悪性リンパ腫 | 一般に症状の進行が速く、認知機能低下などの神経症状が出やすい。薬物療法を先行し、経過を確認しながら全脳照射を組み合わせる※1 |
| 下垂体神経内分泌腫瘍(下垂体腺腫) | トルコ鞍部に発生。機能性(ホルモン過剰分泌)と非機能性がある。症状がある場合は経鼻的手術※1 |
| 神経鞘腫 | 主に良性。聴神経鞘腫が最も多く、聴力低下、耳鳴り、めまい、歩行時のふらつき、顔面麻痺などが起こることがある。小さく無症状なら経過観察※1 |
| 転移性脳腫瘍 | 腫瘍数や大きさで治療を選択。直径3cm未満で少数なら定位放射線治療。大きい場合や神経症状が強い場合は手術※1 |
脳腫瘍の生存率
まず知っておくべき点があります。脳腫瘍では、他のがんのようなTNM分類やステージ分類はありません※1。
そのため、生存率は種類とグレードごとに示されます。がん情報サービスが示す5年生存率は次のとおりです(2009〜2015年に治療を受けた患者)※1。
| 種類とグレード | 5年生存率 |
|---|---|
| 下垂体腺腫(各タイプ) | 97.5〜99.2% |
| 神経鞘腫(グレード1) | 98.8% |
| 髄膜腫(グレード1) | 96.6% |
| 髄膜腫(グレード2) | 87.2% |
| 乏突起膠腫(グレード2) | 88.4% |
| 乏突起膠腫(グレード3) | 68.3% |
| 星細胞腫(グレード2) | 73.1% |
| 星細胞腫(グレード3) | 37.1% |
| 膠芽腫(グレード4) | 16.0% |
がん情報サービスは、診断や治療の進歩により、現在は治療成績が向上していると考えられますとしています※1。
この数字を読むときは、次の点にご注意ください。
- 2009〜2015年に治療を受けた方のデータであり、その後に登場した治療の効果は反映されていません※1
- 集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません
- 種類とグレードによって大きく異なります。ご自身の診断名を確認したうえで見てください
参考として、脳・中枢神経系の5年相対生存率は37.8%(男性35.4%、女性40.5%、2018年診断例)、死亡数は2024年で3,230人でした※2。これは悪性のものを中心とした集計であり、上の表とは対象が異なります。
脳腫瘍の治療法
粒子線治療について
重粒子線治療の保険適用疾患には脈絡膜悪性黒色腫など眼窩・頭蓋底に近い一部の腫瘍が挙げられていますが、脳腫瘍そのものは保険適用疾患にも先進医療の対象疾患にも記載がありません※3。詳しくは重粒子線治療をご覧ください。
手術(外科療法)
脳腫瘍の治療では、手術によって病変(腫瘍)をすべて摘出できれば、それが最も有効とされています※1。開頭手術が標準的で、腫瘍の場所によっては、鼻から内視鏡を入れて腫瘍を摘出する経鼻内視鏡手術を行うこともあります※1。
ただし、悪性腫瘍では可能な限り腫瘍を摘出することが治療の原則である一方、運動野や言語野に腫瘍ができた場合は、腫瘍の全摘出により症状が悪化することがあるため、無理な摘出は行いません※1。
ここが脳腫瘍の手術の難しさです。「全部取る」ことと「機能を残す」ことが両立しない場合があります。
そのため手術ナビゲーション、術中電気生理モニタリング、覚醒下手術、術中MRIなどの支援技術が用いられます※1。
放射線療法
高エネルギーのX線やそのほかの放射線を照射して、腫瘍細胞にダメージを与える治療方法で、腫瘍の性質に合った照射法を選択して行います※1。
| 対象 | 照射法 |
|---|---|
| 悪性腫瘍 | 分割照射による局所放射線治療。通常は腫瘍と腫瘍が浸潤している周辺部分も含めて広めに照射する局所照射※1 |
| 良性腫瘍 | 定位放射線治療。直径3cm以下の腫瘍に対して行う。ガンマナイフやサイバーナイフといった専用の装置を使うことで、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えつつ、1回から数回程度の短い期間で精度の高い治療を行うことが可能※1 |
放射線治療全般については放射線療法とはをご覧ください。
抗がん剤(化学療法)
悪性の脳腫瘍に対しては、腫瘍の種類や個別の状況を踏まえながら、細胞障害性抗がん薬や分子標的薬などを用いた治療を行うことがあります※1。
良性腫瘍では原則として薬物療法は行いませんが、一部の下垂体神経内分泌腫瘍など高い治療効果が期待できる場合は行うこともあります※1。
抗がん剤一覧もあわせてご覧ください。
脳腫瘍の予後
治療のあとに向き合うことになるのは、生存率だけではありません。
神経症状と高次脳機能障害
腫瘍や治療の影響で、運動や認知の機能にさまざまな障害が生じる可能性があります。しかし、障害の種類や程度によっては、自分で気が付くことが難しいことも少なくありません※1。
ここは家族にも知っておいてほしい点です。入院中には分からなくても、退院後、日常生活の中で、記憶や注意などに問題が出てくることもあります※1。
放射線治療の晩期合併症
放射線治療が終了して数カ月から数年たってから、脳の組織が縮小する脳委縮や脳の一部が壊死する放射線脳壊死などによって、認知機能の低下や運動機能障害が起こることもあります※1。
リハビリテーション
リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行います※1。
運動障害に対しては理学療法・作業療法・言語療法を組み合わせた包括的なリハビリを行い、高次脳機能障害に対しては認知リハビリテーションが推奨されます※1。
日常生活
禁煙すること、飲酒を控えること、バランスのよい食事をとること、適度に運動すること(散歩)などを日常的に心がけることが大切です※1。
脳腫瘍の再発・転移
一通りの治療を終えたあとも、定期的に通院してCT検査やMRI検査などを受けます。検査を受ける頻度は、がんの悪性度(グレード)や治療法によって異なります※1。
髄膜腫では、再発や高リスクの場合は定位放射線治療も検討されます※1。下垂体腺腫では完全切除できなかった場合に定位放射線治療を追加することがあります※1。
相談先として、患者会や患者サロンでの情報交換、がん相談支援センターの利用が推奨されています。困ったことや気になることがあれば早めに担当医や看護師、リハビリのスタッフに相談しましょう※1。
再発・転移の仕組みについてはがんの再発と転移はなぜ起こる?、療養中のつらさについては緩和ケアもあわせてご覧ください。
本記事は2026年7月30日時点の公的機関の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「脳腫瘍〈成人〉」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 脳・中枢神経系」(最終確認日: 2026年7月30日)
- QST病院(量子科学技術研究開発機構)「重粒子線治療が適応となる疾患」(最終確認日: 2026年7月30日)


















