更新日:2026/07/30
乳がんとは|症状や検査、治療、ステージなど
乳がんについて、しこり以外の症状・エストロゲンと危険因子・40歳から2年に1回のマンモグラフィ検診・ホルモン受容体/HER2/Ki67によるサブタイプ分類と薬物療法の使い分け・センチネルリンパ節生検と腋窩リンパ節郭清を省略できる条件・治療後のリンパ浮腫や妊よう性・生存率など、さまざまな観点から解説します。
乳がんは、日本の女性で最も多く診断されているがんです。
そして「乳がん」とひとくくりにできないがんでもあります。サブタイプによって使う薬が変わり、手術の範囲も以前より小さくできる場合があります。この記事では、その分かれ方を整理します。
乳がんとは
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は小葉から発生します※1。
| 組織型 | 内容 |
|---|---|
| 非浸潤がん | がん細胞が乳管内または小葉内にとどまっているもの※1 |
| 浸潤がん | 乳管や小葉を超えて周囲に広がっているもの※1 |
日本では2023年に103,424例(女性102,592例・男性832例)が乳がんと診断されました。女性の人口10万人あたりでは160.7です※2。
男性にも起こります。数は少ないものの、2023年に832例が診断されています※2。
乳がんの症状
主な症状は乳房のしこりです※1。
そのほか、次の症状があります※1。
- 乳房にくぼみができる
- 乳頭や乳輪がただれる
- 左右の乳房の形が非対称になる
- 乳頭から分泌物が出る
しこり以外のサインも知っておいてください。くぼみやただれは見た目でわかる変化です。
乳がんの原因
女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっています※1。
危険因子として次が挙げられています※1。
| 分類 | 危険因子 |
|---|---|
| ホルモンに関わるもの | 初経年齢が低い、閉経年齢が高い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がない※1 |
| 生活習慣など | 飲酒、閉経後の肥満、運動不足、糖尿病の既往※1 |
| 家族歴・遺伝 | 第一親等で乳がんになった血縁者がいる場合、乳がんのリスクが高い。BRCA遺伝子変異が関連する※1 |
飲酒・肥満・運動不足は変えられる要因です。血縁者に乳がんの方がいる場合は、その旨を医師にお伝えください。
乳がん検診
乳がん検診は、国が推奨する対策型がん検診の一つです※4。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 40歳以上の女性※1 |
| 間隔 | 2年に1回※1 |
| 内容 | 問診とマンモグラフィ※1 |
「年に1回」「45歳から」といった古い案内を見かけることがありますが、現在の指針は40歳以上・2年に1回です※1。お住まいの市区町村からの案内でご確認ください。
乳がん検診の費用
市区町村が実施する検診では自己負担が抑えられていることが多いものの、金額は自治体によって異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。
職場の健康保険組合が独自に助成している場合もあります。実施の有無・条件・費用は保険者によって異なります。
乳がんのセルフチェック
前述の症状(しこり、くぼみ、ただれ、左右の非対称、乳頭からの分泌物)は、ご自身で気づける変化です※1。
ただし、セルフチェックは検診の代わりにはなりません。マンモグラフィでは触診では見つからないような小さながんが見つかることがあります。
気づいたときに受診することと、症状がなくても2年に1回の検診を受けることの両方が必要です。
乳がんの検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| マンモグラフィ | 乳房のX線撮影※1 |
| 超音波検査 | しこりの性状を調べる※1 |
| 細胞診・組織診 | 穿刺吸引細胞診、針生検※1 |
| MRI検査・CT検査 | 広がりを調べる※1 |
| 骨シンチグラフィ・PET検査 | 転移を調べる※1 |
| 腫瘍マーカー検査 | 血液検査※1 |
サブタイプを調べる検査 ― 薬の選択に直結する
ここが乳がんの治療で最も重要な検査です。
サブタイプ分類ではホルモン受容体、HER2タンパク、Ki67を調べます※1。
この結果によって、ホルモン受容体陽性乳がん・HER2陽性乳がん・トリプルネガティブ乳がんに分けられ、使う薬が変わります※1。
乳がんの病期(ステージ)
病期は0期から4期に分類され、がんの大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無で決定されます※1。
乳がんの生存率・予後
乳がんの5年相対生存率は89.7%(女性)です。2018年に診断された方についての、全国がん登録生存率データによる数値です※2。
参考として、死亡数は2024年で16,005人(女性15,869人・男性136人)でした(人口動態統計死亡データ)※2。
この数字を読むときは、次の点にご注意ください。
- 病期別の数値は、一般向けの統計としては公表されていません。がん情報サービスは院内がん登録から算出されたデータについて「すべての人に当てはまる値ではない」としています※1。ご自身の見通しは主治医にお尋ねください
- 集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません
- 2018年に診断された方のデータであり、その後に登場した治療の効果は反映されていません
乳がんの治療法
手術(外科療法)
手術は乳房部分切除術または乳房全切除術で、必要に応じてセンチネルリンパ節生検と腋窩リンパ節郭清が行われます※1。乳房再建も選択肢です※1。
腋窩リンパ節郭清を省略できる場合がある
ここは近年大きく変わった部分です。腋窩リンパ節郭清は、腕のむくみ(リンパ浮腫)の原因になります。
日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン2022年版』は、センチネルリンパ節に転移を認めた場合の腋窩リンパ節郭清の省略について、状況ごとに推奨を示しています※3。
| 状況 | 推奨 |
|---|---|
| センチネルリンパ節に微小転移 | 腋窩リンパ節郭清省略を強く推奨する(推奨の強さ1、エビデンスの強さ中、合意率98%) |
| マクロ転移・乳房部分切除術 | 腋窩リンパ節郭清省略を行うことを弱く推奨する(推奨の強さ2、エビデンスの強さ中、合意率87%) |
| マクロ転移・乳房全切除術(放射線療法あり) | 腋窩リンパ節郭清省略を行うことを弱く推奨する(推奨の強さ2、エビデンスの強さ弱、合意率92%) |
| マクロ転移・乳房全切除術(放射線療法なし) | 腋窩リンパ節郭清省略を行わないことを強く推奨する(推奨の強さ4、エビデンスの強さとても弱い、合意率83%) |
いずれも条件があります。微小転移の推奨は全例に適切な術後薬物療法が行われることが前提とされ、マクロ転移・乳房部分切除術の推奨はT1/T2、cN0、センチネルリンパ節転移数2個以下、適切な術後放射線治療および薬物療法が条件です※3。
「リンパ節に転移があったら必ず郭清する」という時代ではなくなっています。ご自身がどれに当てはまるかは主治医にご確認ください。
放射線療法
乳房部分切除後に温存乳房照射を行います※1。放射線治療全般については放射線療法とはをご覧ください。
抗がん剤(化学療法)・薬物療法
サブタイプによって使う薬が変わります。がん情報サービスは次の薬を挙げています※1。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| ホルモン療法薬 | LH-RHアゴニスト、アロマターゼ阻害薬、抗エストロゲン薬※1 |
| 分子標的薬 | 抗HER2薬※1 |
| 細胞障害性抗がん薬 | ※1 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | ※1 |
これらはホルモン受容体陽性乳がん、HER2陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がんで使い分けられます※1。抗がん剤一覧もあわせてご覧ください。
免疫療法
乳がんでは免疫チェックポイント阻害薬が薬物療法の選択肢に含まれます※1。使えるかどうかは検査の結果によります。
一方、自由診療で提供されている免疫療法には、効果が証明されていないものがあります。詳しくは免疫療法の比較をご覧ください。
治療後の生活
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リンパ浮腫 | リンパ節郭清後に腕や手がむくむことがある※1 |
| ホルモン療法の副作用 | ホットフラッシュが起こることがある※1 |
| 妊よう性 | 薬は胎児に影響を及ぼすため、治療終了後一定期間は避妊が必要※1 |
乳がんの治療実績
全国の治療成績は、院内がん登録から算出されたデータで確認できます。ただしがん情報サービスは、この数値について「すべての人に当てはまる値ではない」としています※1。
施設ごとの治療実績については、がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターで相談できます。相談は無料で、その病院にかかっていない方も利用できます。
乳がんの治療費用
公的医療保険の対象となる治療であれば、年齢や所得に応じた自己負担割合(1〜3割)での支払いになります。ひと月の自己負担が一定額を超えた場合は高額療養費制度の対象になります。
乳がんはホルモン療法が数年にわたって続くことがあるため、長期の見通しを立てておくと安心です。直近12か月で3か月以上、上限額を超えた場合は4回目以降の上限額がさらに下がります(多数回該当)。
詳しくはがんの治療費をご覧ください。乳房再建の費用や、実際の金額は治療を受ける医療機関にご確認ください。
乳がんの再発・転移
治療後は定期的に通院して経過をみます。
前述のとおり、腋窩リンパ節郭清を省略する推奨には、いずれも「適切な術後薬物療法」「適切な術後放射線治療」が条件として付いています※3。手術の範囲を小さくできるのは、術後の治療とセットになっているためです。
ホルモン療法は長期にわたることがあります。自己判断で中断せず、副作用がつらいときは主治医にご相談ください。
再発・転移の仕組みについてはがんの再発と転移はなぜ起こる?、療養中のつらさについては緩和ケアもあわせてご覧ください。
本記事は2026年7月30日時点の公的機関の情報および学会診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 乳房」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン2022年版』外科療法 CQ1(最終確認日: 2026年7月30日)
- 厚生労働省「がん検診」(最終確認日: 2026年7月30日)


















