更新日:2026/08/19
悪性リンパ腫とは|症状や検査、治療、ステージなど
悪性リンパ腫について、病型の分け方・症状・検査と診断・病期(Lugano分類)・病型ごとの治療・生存率・再発など、さまざまな観点から解説します。
悪性リンパ腫は、血液のがんのひとつです。診断を受けたばかりの方やご家族にとって、「リンパ腫」という言葉だけでは何が起きているのかがつかみにくく、調べるほど専門用語が増えていく病気でもあります。
この記事では、公的機関と学会の診療ガイドラインにもとづいて、病気の全体像を整理します。
この記事でわかること
- 悪性リンパ腫がどんな病気で、どのように分類されるのか
- どんな症状があらわれ、どんな検査で診断されるのか
- 病期(ステージ)の考え方と、治療方針を決める材料になる指標
- 病型ごとの治療の考え方と、「すぐに治療を始めない」という選択肢があること
- 統計としての生存率と、その数字をどう受けとめればよいか
悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫は、白血球のうちリンパ球ががん化する病気です※1。リンパ球は細菌やウイルスから体を守る免疫のはたらきを担う細胞で、リンパ節のほか、脾臓や扁桃腺、骨髄、消化管など全身に分布しています。そのため悪性リンパ腫も、体のさまざまな場所から発生します。
特徴的なのは、病型が100種類以上あることです※1。同じ「悪性リンパ腫」という名前でも、進行の速さも、治療法も、見通しも病型によって大きく異なります。診断書に書かれた病型名を確認することが、自分の病気を理解する最初の一歩になります。
ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫
悪性リンパ腫は、大きくB細胞リンパ腫、T細胞・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫の3つに分けられます。このうちB細胞リンパ腫とT細胞・NK細胞リンパ腫を合わせて非ホジキンリンパ腫と呼びます※1。
日本ではホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫全体のおよそ5%で、年間約1,500例が診断されています※3。つまり日本の悪性リンパ腫の大半は非ホジキンリンパ腫です。
進行の速さによる分け方
病型は、進行の速さでも語られます。B細胞リンパ腫では次の3つに分けられます※8。
| 分類 | 進行の速さ | 該当する病型の例 |
|---|---|---|
| インドレント型 | 年の単位でゆっくり進行する | MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫 |
| アグレッシブ型 | 週〜月の単位で速く進行する | ― |
| 高度アグレッシブ型 | 進行が極めて速い | バーキットリンパ腫 |
濾胞性リンパ腫も年単位でゆっくり進行することが多いインドレントリンパ腫です。ただし、インドレント型は途中から月・週単位で急速に進行するアグレッシブリンパ腫に変わる場合があります※5※8。
「ゆっくり進む=軽い」という意味ではありません。進行が速い病型は薬物療法がよく効くことがあり、ゆっくり進む病型は長く付き合うことになる、という違いです。
悪性リンパ腫の症状
もっとも多いのは、首、腋の下、脚のつけ根などのリンパ節の腫れやしこりです※1。多くは痛みを伴いませんが、急速に大きくなる場合には痛みを伴うことがあります。発熱や発疹、皮膚のしこりがみられることもあります※1。
ホジキンリンパ腫では、首や鎖骨の上のリンパ節が腫れることが多く、発熱・体重減少・寝汗(盗汗)という3つの症状は「B症状」と呼ばれます※3。
胸やお腹の奥のリンパ節に病変ができた場合は、外から触れることができず、症状が出にくいこともあります※5。健康診断や別の病気の検査で偶然見つかることも珍しくありません。
原因とわかっているもの
悪性リンパ腫の多くは、はっきりした原因を特定できません。ただし一部の病型では、原因となるウイルスや細菌が明らかになっています。
HTLV-1と成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)というウイルスの感染が原因で起こります※9。主な感染経路は母乳による母子感染(垂直感染)と性行為による感染です。日本では1986年から輸血用血液の検査が行われており、輸血による感染はなくなっています※9。
ここで大切なのは、感染していても大多数の人はATLを発症しないことです。国内の感染者(キャリア)は約108万人と推定されますが、生涯でATLを発症するのは2〜5%で、新たに診断されるのは年間約1,000例です※9。
ピロリ菌と胃MALTリンパ腫
胃に発生するMALTリンパ腫では、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の関与が知られています。胃MALTリンパ腫ではピロリ菌を除菌する治療に効果があることが多いとされています※8。抗がん剤を使わずに、除菌薬でリンパ腫が縮小することがあるという点で、ほかの病型とは大きく異なります。
検査と診断
悪性リンパ腫の診断には、生検による組織の検査が欠かせません※1。腫れているリンパ節や病変の一部を採取し、顕微鏡で調べて診断を確定します。血液検査や画像検査だけで確定診断をつけることはできません。
診断が確定したあと、または並行して、次のような検査を行います※1。
| 検査 | 何を調べるか |
|---|---|
| 生検(組織学的検査) | 診断の確定。病型の特定 |
| 細胞の性質の判定 | B細胞由来かT細胞由来かの区別 |
| 染色体・遺伝子検査 | 病型のさらに詳しい分類 |
| CT・PET-CTなどの画像検査 | 病変の広がり(病期)の評価 |
| 内視鏡検査 | 消化管に病変がないかの確認(必要に応じて) |
| 骨髄穿刺・骨髄生検 | 骨髄への広がりの確認(必要に応じて) |
画像検査についてはPET-CT検査もあわせてご覧ください。なお、病理分類は日本血液学会の診療ガイドラインではWHO分類(2017)が採用されています※4。
病期(ステージ)の考え方
病期は、がんがどこまで広がっているかを示す分類です。悪性リンパ腫では、2014年にAnn Arbor分類を修正して作られたLugano分類(2014)が用いられます※4。
Lugano分類では、Ann Arbor分類から次の点が変わりました※4。
- FDGが集まりやすいリンパ腫では、治療前にFDG-PET/CTを行って病期を決める
- 非ホジキンリンパ腫では、A症状・B症状の記載が不要になった
- 古典的ホジキンリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、FDG-PET/CTを行った場合は骨髄生検を省略できる
治療方針を決めるもう1つの材料 ― 国際予後指標(IPI)
悪性リンパ腫では、病期だけで治療方針が決まるわけではありません。国際予後指標(IPI)と呼ばれる指標も使われます。以下の5つが予後不良因子とされ、あてはまる数でリスク群に分けられます※4。
| 予後不良因子(5項目) |
|---|
| 年齢が61歳以上 |
| 血清LDHが正常上限を超える |
| Performance Status(全身状態の指標)が2〜4 |
| 病期がIII期またはIV期 |
| リンパ節以外の病変が2個以上 |
| あてはまる因子の数 | リスク群 |
|---|---|
| 0〜1 | 低リスク |
| 2 | 低中間リスク |
| 3 | 高中間リスク |
| 4〜5 | 高リスク |
病型・病期・IPIを組み合わせて、主治医は治療方針を検討します。ご自身がどのリスク群にあたるかは、主治医に確認できる項目です。
悪性リンパ腫の治療
悪性リンパ腫の治療は、薬物療法、放射線治療、造血幹細胞移植が柱になります※1。病型によって治療の組み立てが異なるため、以下は代表的な病型の考え方です。
手術は治療ではなく診断のために行われる
ほかの多くのがんと大きく違う点として、悪性リンパ腫では腫瘍を手術で切除することが治療の柱にはなりません。リンパ球は全身をめぐる細胞であり、病変を取り除くことが治療にならないためです。手術(生検)は、診断を確定するために組織を採取する目的で行われます※1。
薬物療法で使われる薬の種類
薬物療法で使われる薬は、はたらき方によって次のように分かれます※10。
| 薬の種類 | はたらき |
|---|---|
| 細胞障害性抗がん薬 | 細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することで、がんを攻撃する |
| 分子標的薬 | がんの発生や増殖に関わるタンパク質などの分子を標的とし、その機能を抑えることでがんを攻撃する |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外して、免疫細胞ががんを攻撃できるようにする |
副作用は使用する薬によって異なります※10。どの薬を使うのか、どんな副作用がいつ頃出るのか、出たときにどう対処するのかは、治療を始める前に主治医や薬剤師に確認しておくとよいでしょう。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の場合
分子標的薬と細胞障害性抗がん薬など、複数の薬を組み合わせた薬物療法が行われます。薬物療法のあとに放射線治療を行うこともあります。リンパ腫の病変がなくなったら治療を終了し、経過観察に移ります※6。
古典的ホジキンリンパ腫の場合
複数の細胞障害性抗がん薬による薬物療法、または分子標的薬を併用した薬物療法と放射線治療の組み合わせが行われます。再発した場合は造血幹細胞移植が選択肢になります※3。
結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫では、限局期の場合に放射線治療が推奨されています※3。
濾胞性リンパ腫の場合 ― すぐに治療しないという選択肢
濾胞性リンパ腫では、薬物療法・放射線治療・造血幹細胞移植のほかに、無治療経過観察という選択肢があります※5。症状がない場合には、すぐに治療を始めずに定期的な検査で経過をみることがあります。
「治療しない」と言われると見放されたように感じるかもしれませんが、これは進行がゆっくりな病型に対して確立された考え方のひとつです。なぜ経過観察なのか、どうなったら治療を始めるのかを主治医に確認しておくと、待つ時間の不安が軽くなります。
胃MALTリンパ腫の場合 ― 除菌療法
胃MALTリンパ腫では、ピロリ菌を除菌する治療に効果があることが多いとされています※8。原因が特定でき、その原因を取り除くことが治療になる、悪性リンパ腫のなかでは特殊な例です。
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の場合
ATLは急性型・リンパ腫型・慢性型・くすぶり型の4つに分かれ、予後因子(LDH・アルブミン・BUN)によってアグレッシブATLとインドレントATLに分類されます※9。
くすぶり型と、予後不良因子のない慢性型は経過観察のみとされています。アグレッシブ型では多剤併用化学療法を行い、可能な場合には造血幹細胞移植が検討されます※9。
CAR-T細胞療法
CAR-T細胞療法は、自分のT細胞を体の外に取り出してがん細胞を攻撃するCAR-T細胞に変えて増やし、再び体に戻す治療です。一部の血液・リンパのがんの治療で保険診療の対象になっています※7。
ただし治療できる施設は限られ、治療費は高額です。また、血圧や酸素濃度の低下、心臓・肺・肝臓などの臓器障害が起こるサイトカイン放出症候群や、意識障害などの強い副作用が起きやすく、入院での治療が必要とされています※7。
放射線治療
放射線治療は、手術・薬物療法と並ぶがんの3大治療法の1つで、局所的な治療です※12。放射線があたっても、痛みや熱を感じることはありません※12。
目的は2つあり、完治を目指す根治的治療と、苦痛をやわらげる姑息的治療があります※12。悪性リンパ腫では、薬物療法のあとに放射線治療を行うことがあり※6、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫の限局期では放射線治療が推奨されています※3。
体外から放射線をあてる外部照射は1回おおむね10〜30分で、毎日行うことが一般的です。治療内容によって終了まで何週間もかかる場合があり、通院で行うのが一般的です※12。
副作用は時期によって分けられます。治療中・終了直後に起こる急性期の副作用と、終了してから半年から数年たった後に起こる晩期の副作用があり、それぞれ全身的なものと局所的なものに分かれます※12。若い年齢で治療を受ける方が多い病型もあるため、晩期の副作用については治療前に説明を受けておくとよいでしょう。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植は、化学療法や放射線治療が効きやすい白血病やリンパ腫などに対して、多くの場合、完治を目指して行われる治療です※11。骨髄の造血幹細胞を移植により置き換える治療法で、数カ月の入院が必要になります※11。
主な合併症として、GVHD(移植片対宿主病)と感染症が挙げられています※11。治療そのものの負担が大きいため、病型・病期・全身状態をふまえて適応が検討されます。
治療後の生活やお金のことについては、がん相談支援センターで相談できます※11。
「効果が証明されていない免疫療法」について
免疫療法という言葉は、保険診療で使われている治療と、効果が証明されていない治療の両方に使われています。後者は治療効果や安全性が立証されておらず、医療として確立されたものではありません。自由診療として提供される場合は全額が自己負担になるため、治療効果・安全性・費用を慎重に確認する必要があるとされています※7。
治療法については抗がん剤一覧、放射線療法とはもあわせてご覧ください。
悪性リンパ腫の統計 ― 罹患数・死亡数・生存率
日本では2023年に37,601例(男性20,073例、女性17,528例)が悪性リンパ腫と診断されました。人口10万人あたりの罹患率は30.2(男性33.2、女性27.4)です※2。
死亡数は2024年で13,920人(男性7,685人、女性6,235人)、人口10万人あたり11.6(男性13.1、女性10.1)でした※2。
5年相対生存率
2018年に診断された方の5年相対生存率は67.5%(男性66.7%、女性68.4%)です※2。相対生存率とは、同じ年齢・性別の一般の人と比べて、5年後に生きている人の割合がどのくらいかを示した数値です。
この数字を読むときは、次の2点に注意してください。
- これは100種類以上の病型をひとまとめにした平均です。病型によって見通しは大きく異なるため、ご自身の病型にそのままあてはまる数字ではありません
- 集団を対象とした統計であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。また、診断されてから5年前の医療にもとづく数字であり、その後に登場した治療の効果は反映されていません
国立がん研究センターのがん統計では、悪性リンパ腫の病期別の生存率は公表されていません※2。病型による違いが大きいためと考えられます。病期別の見通しについては、ご自身の病型と病期をふまえて主治医にお尋ねください。
再発と、その後の療養
治療によって病変が消えたあとも、再発の可能性があるため定期的な検査で経過をみます。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、病変がなくなったら治療を終了して経過観察を行います※6。再発した場合、ホジキンリンパ腫では造血幹細胞移植が選択肢になります※3。造血幹細胞移植は数カ月の入院を要する治療であり、GVHD(移植片対宿主病)や感染症といった合併症があります※11。
治療中・治療後は、感染症への注意や体力の回復、仕事や生活との両立といった課題が出てきます。つらい症状をやわらげるケアは、治療の段階にかかわらず受けることができます。緩和ケアもあわせてご覧ください。
なお、同じ血液のがんである白血病とは、がん化する細胞やあらわれ方が異なります。
よくある質問
Q. 悪性リンパ腫は手術で取り除けないのですか。
A. 悪性リンパ腫の治療の柱は薬物療法・放射線治療・造血幹細胞移植です※1。手術は、診断を確定するために組織を採取する生検として行われます。
Q. リンパ節が腫れていますが、悪性リンパ腫でしょうか。
A. リンパ節の腫れは感染症などでも起こります。悪性リンパ腫の診断には生検による組織検査が必要です※1。腫れが続く場合は医療機関を受診してください。
Q. 病期がIV期だと治療できないのでしょうか。
A. 悪性リンパ腫では、病期に加えて病型や国際予後指標(IPI)を組み合わせて治療方針が検討されます※4。病期だけで治療の可否や見通しが決まるわけではありません。
Q. 「様子をみましょう」と言われました。治療しなくて大丈夫でしょうか。
A. 濾胞性リンパ腫のように年単位でゆっくり進行する病型では、症状がない場合に無治療経過観察が選択肢になります※5。どうなったら治療を始めるのかを主治医に確認しておくとよいでしょう。
Q. 生存率67.5%というのは、自分にあてはまる数字ですか。
A. これは2018年に診断された方について、100種類以上の病型をひとまとめに集計した5年相対生存率です※2。ご自身の病型・病期にそのままあてはまる数字ではありません。
本記事は2026年7月27日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「悪性リンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 悪性リンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「ホジキンリンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)」リンパ腫 総論(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「濾胞性リンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「B細胞リンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「成人T細胞白血病リンパ腫」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法(抗がん剤治療)」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「造血幹細胞移植」(最終確認日: 2026年7月27日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療」(最終確認日: 2026年7月27日)


















