更新日:2026/08/11
医療機関と介護施設のサポート
自宅で療養したいと希望しながらも、「急に体調が変わったらどうすればいいのか」「退院後の介護をどう整えればよいのか」と不安を感じている方は少なくありません。医療機関や介護施設には、こうした不安に応える支援体制が整備されています。
本記事では、医療機関・介護施設が提供する支援の仕組みを、T1一次情報(国立がん研究センター・厚生労働省・日本医療ソーシャルワーカー協会)をもとに整理します。療養場所の選択から、退院支援、介護保険の迅速利用、そして在宅での24時間体制まで、主治医やケアマネジャーへ相談するときのてがかりとしてご活用ください。
医療機関・介護施設に望まれるサポート体制
国立がん研究センターの調査(令和5年度・がんを含む10疾患の遺族を対象)では、療養場所について患者さんと医師の間で話し合いがあった割合は25〜53%、希望した場所で過ごせた割合は37〜60%でした※1。いずれも前回調査から改善していますが、まだ多くの方が希望と現実の間にギャップを抱えています。
療養の場を整えるには、医療機関・介護施設が有機的に連携することが欠かせません。厚生労働省が推進する在宅医療・介護連携推進事業は、日常の療養から入退院、急変時、看取りに至るまで、医療と介護をまたぐ切れ目のない支援体制を市町村が構築することを求めるものです※2。
選択肢の提供
在宅療養の主な選択肢は、自宅・緩和ケア病棟・介護施設の3つです※3。それぞれに特徴があり、患者さんの状況や希望、生活環境(一人暮らしか同居家族がいるかなど)、経済的な条件によって最適な選択は異なります。
- 自宅:住み慣れた環境で生活のペースに合わせた緩和ケアを受けられます。急変時の入院やレスパイト入院(介護者が一時的に休息をとるための短期入院)も組み合わせることができます※3。
- 緩和ケア病棟:症状コントロールや心理的サポートに特化した病棟です。痛みや身体症状の管理を専門チームが担います。
- 介護施設:施設に入所中であっても、訪問診療による緩和ケアを受けられる場合があります※3。
どこで過ごすかは患者さん自身の意思が中心になります。がん相談支援センターでは、選択肢の提示や意思決定のサポートを行っています。全国のがん診療連携拠点病院などに設置されており、看護師やソーシャルワーカーが無料・匿名で相談に応じます※4。
療養場所についての悩みや不安は、主治医のほか、担当の看護師や医療ソーシャルワーカー(MSW)、あるいは緩和医療とはで解説する専門チームにも相談できます。
要介護認定
在宅療養に介護サービスを組み合わせるには、介護保険の要介護認定が必要です。がんの場合、病状が急速に変化することがあるため、認定のタイミングが療養の質に直結します。
介護保険の被保険者は65歳以上の第1号と、40〜64歳の第2号に分かれます。第2号被保険者が介護保険を使えるのは、16種類の特定疾病が原因の場合に限られます。がんは「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの」として特定疾病に含まれており、40〜64歳の方でも申請できます(2019年2月に「がん末期」から「がん」へ表記変更)※5。
要介護認定は申請から結果まで最長30日かかりますが、厚生労働省は2024年5月31日付の事務連絡(介護保険最新情報 Vol.1266)で、がん等の急速に病状が変化する方については、認定結果が出る前でも暫定ケアプランを作成してサービスを先行開始できること、また入院中にオンライン認定調査を行えることなどを周知しました※6。具体的な手順についてはケアマネジャーや主治医にご相談ください。
介護保険サービスの種類や費用負担の詳細は、がんと介護保険・介護認定をご覧ください。
医療と介護の連携
医療機関と介護事業者が情報を共有し、継続的に連携することが、在宅療養の質を支えます。
退院が見えてきた段階では、退院前カンファレンス(退院時共同指導)が重要です。病院側(担当医・看護師・医療ソーシャルワーカー等)と在宅側(訪問診療医・訪問看護師・ケアマネジャー等)が一堂に会し、患者さんの病状・生活上の希望・利用するサービスの内容を確認・共有します。この場で、どのような状態の変化が予想されるかも伝えられます※7。
医療ソーシャルワーカー(MSW)は、厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針」(令和8年3月13日改定・約23年ぶりの全面改定)に基づき、入退院支援・療養支援・意思決定支援・社会生活との両立支援を担います※7。入院早期から患者さんの生活歴や社会的な事情を把握し、院内外の関係機関と連携して計画的・継続的にかかわります。
在宅療養・介護連携の制度的な枠組みとして、厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムがあります。住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制で、市町村が主体となって構築します※8。この仕組みの窓口となる地域包括支援センターは全国5,487か所(ブランチ含む7,374か所・令和7年4月末現在)設置されており、介護保険の相談や在宅療養に向けた調整を担います※8。
訪問介護・訪問看護・福祉用具(介護用ベッド・車いす等)の情報提供と調整は、担当のケアマネジャーが行います。詳細はがんと在宅医療・介護で紹介しています。
患者の不安の軽減
在宅療養中、患者さんやご家族が最も心配されることのひとつが「急に体調が悪くなったとき、どうすればよいか」です。あらかじめ急変時の対応方法と連絡先を確認しておくことが、不安の軽減につながります※3。
24時間対応体制加算を算定している訪問看護ステーションは、夜間・休日を問わず電話相談や緊急訪問に対応します。急変時の第一連絡先は原則として訪問看護ステーションで、看護師が状況を確認したうえで訪問診療医に連絡する体制が標準的とされています※9。
在宅療養開始前に、医療チームから次のことを確認しておくことが大切です。
- 今後どのような症状の変化が起こりうるか
- 急変時の最初の連絡先と連絡方法
- 緊急入院が必要になった場合の受け入れ先医療機関
ご家族の気持ちや負担については、家族介護者とがんもあわせてご覧ください。
仕組みの整備
地域で在宅医療を支える重要な役割を担うのが在宅療養支援診療所です。夜間・休日を含めて24時間対応する体制を持つ、一定の基準を満たした診療所として位置づけられており、患者さんが突然の症状悪化に直面した際にも対応できる体制を整えています※10。
訪問診療と往診の違いも知っておくと便利です。訪問診療は医師があらかじめ決めた日時に定期的に訪問して行う診療で、往診は患者さんの求めに応じて臨時に行くものです。どちらも自力での通院が困難な方が主な対象で、公的医療保険が適用されます※10。
在宅療養支援診療所の仕組みと訪問診療を組み合わせることで、住み慣れた場所で病院と同等の緩和ケアを受けることも可能とされています※3。在宅緩和ケアの概要については緩和医療とはで詳しく解説しています。
在宅医療・介護連携推進事業は平成26年(2014年)の介護保険法改正で市町村の地域支援事業に位置づけられ、地域の特性に応じた連携体制の整備が進められています※2。主治医や担当のケアマネジャー、あるいはお住まいの市区町村窓口に相談することで、地域の在宅医療・介護の資源を確認できます。
よくある質問
- Q. 40代でがんと診断されました。介護保険は使えますか?
- 40〜64歳(第2号被保険者)でも、「医師が回復の見込みがないと判断したがん」は介護保険の特定疾病に含まれるため、要介護認定を申請できます※5。申請はお住まいの市区町村窓口で受け付けています。詳細は主治医またはケアマネジャーにご相談ください。
- Q. 退院支援はどこに相談すればよいですか?
- 入院中の方は、担当の医療ソーシャルワーカー(MSW)または病院の入退院支援部門に声をかけてください。MSWは療養場所の選択から介護保険の申請手続き、家族への説明まで幅広い相談に対応します※7。がん相談支援センター(全国のがん診療連携拠点病院などに設置・無料・匿名)でも相談を受け付けています※4。
- Q. 在宅療養中に夜間に具合が悪くなった場合はどこに電話すればよいですか?
- 24時間対応体制を持つ訪問看護ステーションに連絡するのが基本です。在宅療養開始前に緊急時の連絡先を医療チームから確認しておくことが大切です※9。万一の入院が必要な場合の受け入れ医療機関についても、あらかじめ確認しておくと安心です。
- Q. 介護施設に入所したら、がんの治療は受けられなくなりますか?
- 施設入所中でも、訪問診療を利用することで継続的な医療(緩和ケアを含む)を受けられる場合があります※3。具体的には入所する施設と訪問診療医の連携状況によって異なりますので、施設のスタッフや主治医に確認してください。
- Q. 地域包括支援センターとはどのような機関ですか?
- 市町村が設置する高齢者の総合相談機関で、全国5,487か所(令和7年4月末現在)あります※8。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーの3職種が配置され、在宅療養の支援や介護保険申請の相談にも対応しています。
本記事は2026年8月12日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター「人生の最終段階の医療および療養生活の質に関する調査結果報告(令和5年度調査)」2025年7月3日公表(最終確認日: 2026年8月12日)
- 在宅医療・介護連携推進ポータルサイト(厚生労働省委託)「在宅医療・介護連携の推進」(最終確認日: 2026年8月12日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(最終確認日: 2026年8月12日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センター」(最終確認日: 2026年8月12日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「介護保険」(最終確認日: 2026年8月12日)
- 厚生労働省老健局老人保健課「介護保険最新情報 Vol.1266」(2024年5月31日付事務連絡)(最終確認日: 2026年8月12日)
- 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針」(令和8年3月改定)(最終確認日: 2026年8月12日)
- 厚生労働省「地域包括ケア(地域包括ケアシステム)」(最終確認日: 2026年8月12日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(急変時対応・24時間体制)(最終確認日: 2026年8月12日)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第557回)在宅(その1)」(最終確認日: 2026年8月12日)





















