更新日:2026/08/19
すい臓がんとは|症状や検査、治療、ステージなど
すい臓がん(膵臓がん)について、早期発見が難しい理由・症状・危険因子・検査と診断・病期(ステージ)と切除可能性による区分・生存率・手術と薬物療法・粒子線治療の保険適用・膵臓を切除したあとの体の変化・再発と転移など、さまざまな観点から解説します。
すい臓がんは、早期には症状が出にくく、見つかった時点で進行していることが多いがんです。一方で、危険因子がはっきりしており、該当する人が定期的に調べることには意味があります。
この記事では、症状・検査から治療の分かれ方までを、公的機関の最新の情報にもとづいて整理します。
すい臓がんとは
膵臓は胃の後ろにある、長さ20cmほどの細長い臓器で、消化を助ける膵液を出す働き(外分泌)と、血糖を調節するホルモンを出す働き(内分泌)があります※1。
すい臓がんの多くは膵管に発生し、そのほとんどは腺がんという組織型です。浸潤性が強く、小さいうちから周囲のリンパ節や他の臓器に転移しやすい腫瘍とされています※1。
日本では2023年に47,540例(男性23,761例・女性23,779例)がすい臓がんと診断されました。人口10万人あたりでは38.2で、男女差はほとんどありません※2。
すい臓がんの症状
早期は症状が出にくく、早期の発見は簡単ではありません※1。
進行すると次のような症状があらわれます※1。
- 腹痛
- 食欲不振
- 腹部膨満感
- 黄疸
- 体重減少
- 腰や背中の痛み
さらに、糖尿病が発症したり、悪化したりすることがあります※1。
この最後の点は見落とされがちです。今まで問題のなかった血糖値が急に悪くなった、糖尿病の治療がうまくいかなくなったという変化は、すい臓を調べるきっかけになります。
すい臓がんの原因
がん情報サービスは、次の要因がすい臓がん発生のリスクを高めるとしています※1。
| 危険因子 | 内容 |
|---|---|
| 家族歴 | 血縁のある家族の中ですい臓がんになった人がいること |
| 糖尿病 | 糖尿病にかかっていること |
| 慢性膵炎 | 慢性膵炎にかかっていること |
| 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) | IPMNにかかっていること |
| 生活習慣 | 喫煙・飲酒・肥満 |
すい臓がんは検診の対象になっていないため、これらに当てはまる方が、かかりつけの医師に相談して定期的に調べることが、現実的な早期発見の道になります。
すい臓がんの検査と診断
すい臓は体の奥にあり、超音波では見えにくい位置にあります。そのため複数の検査を組み合わせます※1。
腫瘍マーカー検査
血液検査で膵酵素と、腫瘍マーカーであるCA19-9・CEAなどを調べます※1。
腫瘍マーカーだけでがんの有無を判断することはできません。詳しくは腫瘍マーカーとはをご覧ください。
腹部超音波(エコー)検査
体の外から超音波を当てて、膵臓やその周囲を調べます※1。負担が少なく最初に行われることが多い検査ですが、膵臓は胃や腸のガスの影響を受けやすく、これだけで判断することはできません。
CT、MRI検査
造影CT検査とMRI検査で、がんの広がりや周囲の血管との位置関係、転移の有無を調べます※1。この評価が、後述する切除できるかどうかの判断に直結します。
MR胆管膵管撮影(MRCP)
MRIを使って胆管や膵管の状態を調べる検査です※1。
超音波内視鏡検査(EUS)
内視鏡の先端についた超音波で、胃や十二指腸の中から膵臓を近くで観察する検査です※1。体の外からの超音波では見えにくい部分を調べられます。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
内視鏡を十二指腸まで入れ、胆管・膵管に造影剤を入れてX線で撮影する検査です※1。
PET
全身への広がりを調べる検査です※1。
病理診断
診断を確定するには細胞診・組織診による病理診断が行われます※1。
すい臓がんの病期(ステージ)
すい臓がんの病期は0期からIV期まであり、がんの大きさ、周囲への広がり、リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかによって決まります※1。
もう一つの分け方 ― 切除できるかどうか
すい臓がんでは、病期とは別に、治療方針を決めるときに次の3つのどれにあたるかが判定されます※1。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| 切除可能 | 手術でがんを取りきれると判断される状態 |
| 切除可能境界 | 取りきれるかどうかが微妙な状態 |
| 切除不能 | 手術では取りきれないと判断される状態 |
出典は※1です。「ステージいくつか」だけでなく、この3区分のどれにあたるかを主治医に確認してください。治療の進め方が変わります。
すい臓がんの生存率
すい臓がんの5年相対生存率は13.2%(男性13.6%、女性12.8%)です。2018年に診断された方についての、全国がん登録生存率データによる数値です※2。
参考として、死亡数は2024年で41,235人(男性20,371人、女性20,864人)でした(人口動態統計死亡データ)※2。罹患数47,540例に対して死亡数が41,235人と近いことが、このがんの厳しさを表しています。
この数字を読むときは、次の点にご注意ください。
- 病期別の数値は、一般向けの統計としては公表されていません。がん情報サービスは院内がん登録から算出されたデータを案内するにとどめています※1。ご自身の病期における見通しは主治医にお尋ねください
- 集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません
- 2018年に診断された方のデータであり、その後に登場した治療の効果は反映されていません
すい臓がんは、この10年で薬物療法が変わってきた領域です。過去の統計をそのまま自分に当てはめないでください。
すい臓がんの治療法
手術(外科療法)
がんのある場所に応じて、次の術式が行われます※1。
| 術式 | 対象 |
|---|---|
| 膵頭十二指腸切除術 | 膵頭部のがん |
| 膵体尾部切除術 | 膵体部・膵尾部のがん |
| 膵全摘術 | 膵臓全体に及ぶ場合 |
抗がん剤(化学療法)
すい臓がんでは、薬物療法が手術と組み合わせて使われます。
がん情報サービスは、手術の前や後に、一定期間薬物療法を受けると、再発しにくくなる可能性が示されていますと説明しています※1。
切除できない場合の薬物療法では、細胞障害性抗がん薬・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬が使われます※1。抗がん剤一覧もあわせてご覧ください。
放射線療法
すい臓がんの放射線治療は、化学放射線療法として薬物療法と組み合わせて行われるほか、痛みを和らげる目的でも行われます※1。
放射線治療全般については放射線療法とはをご覧ください。
免疫療法
すい臓がんでは、切除できない場合の薬物療法の選択肢の一つとして免疫チェックポイント阻害薬が挙げられています※1。使えるかどうかは検査の結果によります。
一方、自由診療で提供されている免疫療法には、効果が証明されていないものがあります。詳しくは免疫療法の比較をご覧ください。
陽子線治療
粒子線治療について、すい臓がんは保険適用の対象に含まれています。
重粒子線治療では遠隔転移のない膵臓がんと膵がんの術後局所再発が保険適用疾患とされています※3。
ただし、これはすべてのすい臓がんが対象になるという意味ではありません。適応があるかどうかは、がんの広がりや全身の状態によります。陽子線治療もあわせてご覧ください。
重粒子線治療
上記のとおり、遠隔転移のない膵臓がん・膵がん術後局所再発が重粒子線治療の保険適用疾患とされています※3。対象になるかは主治医・治療施設にご確認ください。詳しくは重粒子線治療をご覧ください。
膵臓を切除したあとの体の変化
膵臓を切除すると、その働きが失われるため、次のことが起こります※1。
- 血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が減少して、糖尿病になったり、悪化したりすることがあります※1
- 消化不良による下痢や脂肪肝などを起こしやすくなります※1
食事はバランスよく、なるべく消化のよいものをとることが勧められています※1。手術を検討する段階で、術後の食事と血糖の管理についても説明を受けておくと、生活の見通しが立てやすくなります。
すい臓がんの再発・転移
再発
手術でがんを取りきれた場合でも、再発することがあります。がん情報サービスが手術の前や後の薬物療法によって再発しにくくなる可能性を示しているのは、このためです※1。
治療後は定期的に通院して検査を受けます。
転移
すい臓がんは浸潤性が強く、小さいうちから周囲のリンパ節や他の臓器に転移しやすいとされています※1。早期の発見が難しい理由の一つでもあります。
再発・転移の仕組みについてはがんの再発と転移はなぜ起こる?、療養中のつらさについては緩和ケアもあわせてご覧ください。
本記事は2026年7月30日時点の公的機関の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 膵臓」(最終確認日: 2026年7月30日)
- QST病院(量子科学技術研究開発機構)「重粒子線治療が適応となる疾患」(最終確認日: 2026年7月30日)


















