更新日:2026/08/01
骨軟部腫瘍とは|症状や検査、治療、ステージなど
骨や筋肉・脂肪などの軟部組織に発生する希少がん「骨軟部腫瘍」の種類・検査・病期(ステージ)・手術や化学療法、重粒子線治療などの治療選択肢を、最新のガイドラインと一次情報をもとに解説します。
骨軟部腫瘍は、骨や筋肉・脂肪などの軟部組織に発生するがんの総称です。まれな腫瘍(希少がん)であり※1、病型によって治療の考え方が大きく異なります。この記事では、診断直後の方やご家族が「次に主治医に何を聞けばよいか」を判断できるよう、最新のガイドライン・一次情報をもとに解説します。
- 骨腫瘍と軟部腫瘍の違い、主な病型の種類
- 確定診断に重要な生検(針生検・切開生検)と遺伝子検査の役割
- 現行の病期(ステージ)分類の考え方(UICC TNM第8版・2017年)
- 手術・化学療法・放射線治療・重粒子線治療・分子標的薬の選択肢
- 受診先・生検・患肢温存など、診断直後によくある疑問
骨軟部腫瘍とは
骨軟部腫瘍とは、骨組織や軟部組織(筋肉・脂肪・神経など)に発生する腫瘍の総称です※1。同じ「骨軟部腫瘍」という名称でも、骨から直接発生する「骨腫瘍」と、骨以外の組織から発生する「軟部腫瘍」は、症状・診断・治療の考え方がそれぞれ異なります。また、他の臓器のがんが転移してできる「転移性骨軟部腫瘍」、血液系腫瘍が骨や軟部組織にしこりを形成したものも広義の骨軟部腫瘍に含まれます※1。
骨腫瘍・軟部腫瘍はいずれも良性と悪性に分けられます。悪性の骨腫瘍・軟部腫瘍は「肉腫(サルコーマ)」と呼ばれ、希少がんに分類されるまれな腫瘍です※1。
種類
骨軟部腫瘍の分類を以下の図に示します。
悪性骨腫瘍の主な病型(国立がん研究センター希少がんセンター「骨の肉腫」による)※2
| 病型名 | 特徴 |
|---|---|
| 骨肉腫(Osteosarcoma) | 悪性骨腫瘍のなかで最も多く、骨の肉腫全体の約30%を占める※2。10〜20歳代に多い |
| 軟骨肉腫(Chondrosarcoma) | 軟骨組織から発生。中高年に多く、化学療法・放射線治療の効果が乏しいとされる※2 |
| ユーイング肉腫(Ewing Sarcoma) | 小児〜若年成人に多い。放射線感受性が高く、化学療法も有効とされる※11 |
骨巨細胞腫(Giant cell tumor of bone)は、良性と悪性の中間的な性質をもつ「中間悪性腫瘍」に分類されます※2。なお、「骨髄腫(多発性骨髄腫)」は形質細胞由来の血液がんであり、骨原発の肉腫(悪性骨腫瘍)の分類とは別の疾患です※2。
悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の主な病型(国立がん研究センター希少がんセンター「軟部肉腫」による)※3
- 脂肪肉腫
- 悪性線維性組織球腫(未分化多形肉腫)
- 平滑筋肉腫
- 粘液線維肉腫
これらは代表的な病型ですが、軟部肉腫の組織型は非常に多岐にわたります※3。約60%が四肢に発生し、希少がんであることから、専門施設での診断・治療が重要です※3。
骨腫瘍の症状
骨腫瘍(特に骨肉腫)では、発生した部位の痛みや腫れが初期の症状として現れます※5。骨盤や背骨(脊椎)に発生した場合は、表面から腫れがわかりにくいため、診断がつくまでに腫瘍が大きくなっていたり、麻痺が出てから気づいたりすることもあります※5。
軟部腫瘍の症状
軟部腫瘍の主な症状は、皮膚の下や筋肉の中にできる腫瘤(しこり)や腫れです※6。痛みを感じにくいことが多いため、しこりが大きくなってから受診するケースも少なくありません※6。神経の近くに発生した場合は、しびれなどの神経症状が出ることもあります※6。
骨軟部腫瘍の検査と診断
骨軟部腫瘍の診断には複数の検査が組み合わせて用いられます。画像検査で腫瘍の位置・広がりを調べ、最終的な確定診断は組織の一部を採取して調べる「病理組織学的検査(生検)」によって行われます※7。
「原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022」(日本整形外科学会、Minds収録)および「軟部腫瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)」(日本整形外科学会、Minds収録)でも、各種の検査・診断方法についてのCQ(臨床的な問い)が設定されており、診療の標準的な考え方が示されています※9・※10。
主な画像検査
- レントゲン(単純X線)検査:骨の変化を把握し、骨腫瘍の良悪性診断の端緒となる※7
- 超音波(エコー)検査:軟部腫瘍の評価に用いる※15
- CT検査:腫瘍の広がりや、肺への転移の有無の確認に用いる※7
- MRI検査:腫瘍の範囲や内部構造の評価に優れ、術前の治療計画に重要※7
- 骨シンチグラフィ:ほかの骨への転移の有無を調べるために用いる※7
生検(病理組織学的検査)
画像検査だけでは確定診断はできません。確定診断には、腫瘍の組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検が必要です※7。生検には大きく2種類あります。
| 種類 | 方法 |
|---|---|
| 針生検 | 局所麻酔下で太めの針を用いて組織を採取する。外来でも実施可能な場合がある |
| 切開生検 | 手術室で皮膚を切開して組織を採取する。より多くの組織量が得られる |
どちらの方法を選ぶかは、腫瘍の部位・大きさ・性質などをもとに主治医が判断します。「原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022」でも生検方針についてのCQが設定されています※9。生検の計画は後の手術に影響することがあるため、骨軟部腫瘍の専門施設で行うことが重要とされています※7。
遺伝子検査(キメラ遺伝子)
病理組織検査だけでは診断が困難な場合に、遺伝子検査が行われることがあります※8。とくにユーイング肉腫では、特異的なキメラ遺伝子(EWS-FLI1融合遺伝子・EWS-ERG融合遺伝子)が存在し、分子生物学的解析によって診断の確定に役立てられます※8。免疫染色(CD99・NKX2.2など)も診断に用いられます※8。「軟部腫瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)」でも遺伝子検査の役割についてのCQが設定されています※10。
骨軟部腫瘍の病期(ステージ)
病期(ステージ。がんの広がりの程度を示す分類)は、治療方針を決める際の重要な指標です。骨腫瘍と軟部腫瘍では用いる分類体系が異なります。
骨腫瘍の病期分類
骨腫瘍(骨肉腫など)の病期分類には、整形外科領域で引き続き使われているEnneking(エネキング)の外科的病期分類(Surgical Staging System: SSS)と、国際対がん連合(UICC)・米国がん合同委員会(AJCC)のTNM分類(第8版、2017年)の両方が活用されています※9。今後の日常臨床ではTNM第8版が使われていく方向とされています※9。
Enneking外科的病期分類(SSS)
| 病期 | 悪性度(G) | 腫瘍の位置(コンパートメント) | 転移(M) |
|---|---|---|---|
| IA | 低悪性度(G1) | 区画内(T1) | 転移なし(M0) |
| IB | 低悪性度(G1) | 区画外(T2) | 転移なし(M0) |
| IIA | 高悪性度(G2) | 区画内(T1) | 転移なし(M0) |
| IIB | 高悪性度(G2) | 区画外(T2) | 転移なし(M0) |
| III | 低悪性度・高悪性度のいずれも | 区画内・区画外のいずれも | リンパ節転移または遠隔転移あり(M1) |
「区画(コンパートメント)」とは、骨・筋膜・関節包などの解剖学的な境界で囲まれた領域のことです。腫瘍が区画の境界内にとどまっているか(区画内・T1)、境界を超えて広がっているか(区画外・T2)によって評価します※9。
軟部腫瘍の病期分類
軟部肉腫の病期分類は、UICC/AJCC TNM分類(第8版、2017年)が現在の標準です※10。腫瘍サイズ(T)・リンパ節転移(N)・遠隔転移(M)・組織学的悪性度(G)の4つの軸で評価します。以前の分類で用いられていた「筋膜より表にあるか深いか」という基準は、現行の第8版では採用されていません※10。
| 病期 | 腫瘍サイズ(T) | リンパ節(N)・遠隔転移(M) | 組織学的悪性度(G) |
|---|---|---|---|
| ステージIA(1A期) | T1:5cm以下 | N0・M0(転移なし) | Grade1またはGradeX |
| ステージIB(1B期) | T2〜T4:5cmより大きい | N0・M0(転移なし) | Grade1またはGradeX |
| ステージII(2期) | T1:5cm以下 | N0・M0(転移なし) | Grade2または3 |
| ステージIIIA(3A期) | T2:5〜10cm | N0・M0(転移なし) | Grade2または3 |
| ステージIIIB(3B期) | T3〜T4(10cmより大きい)またはリンパ節転移(N1) | M0(遠隔転移なし) | 任意 |
| ステージIV(4期) | 任意 | M1(遠隔転移あり) | 任意 |
組織学的悪性度(Grade)は、腫瘍細胞の顕微鏡的な悪性度を示す指標です。GradeXは評価が難しい場合に使用されます。なお、頭頸部・胸腔・腹腔内臓器の軟部肉腫については、上記と統一された病期定義が設けられていない場合があります※10。
骨軟部腫瘍の治療法
骨軟部腫瘍の治療は、骨腫瘍か軟部腫瘍か、病型、病期、発生部位などによって大きく異なります。手術・化学療法・放射線療法・重粒子線治療・分子標的薬など複数の選択肢があり、複数を組み合わせる集学的治療が基本となります。治療方針は、「原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022」※9および「軟部腫瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)」※10に基づいて主治医と相談しながら決定します。
骨腫瘍の治療
手術(広範切除術)
骨腫瘍の手術の基本は、腫瘍と周囲の正常組織を一塊として切除する「腫瘍広範切除術」です※2。近年は再建技術の向上により、四肢に発生した症例では患肢温存手術(脚や腕を残したまま腫瘍を切除する手術)が可能なケースが多く、四肢症例での患肢温存率は約90%とされています※2。切除後には、人工関節や処理骨・自家骨を用いた再建術が行われます※2。
化学療法
化学療法が特に有効とされているのは、骨肉腫とユーイング肉腫です※4。骨肉腫の標準治療は、MAP療法(メトトレキサート大量療法・ドキソルビシン・シスプラチン)と広範切除術を組み合わせた集学的治療です※4。一般的な治療の流れは「術前化学療法→手術→術後化学療法」であり、治療期間は合計で約9ヶ月を要します※4。具体的な薬剤の量・スケジュールは患者さんの状態によって異なり、主治医と相談しながら決定します。
ユーイング肉腫の治療は、化学療法・手術・放射線治療の3本柱による集学的治療が基本です※11。
一方、軟骨肉腫は「化学療法や放射線治療の効果が乏しい」とされており、手術による切除が主な治療となります※2。
放射線療法
骨腫瘍の中では、ユーイング肉腫が放射線治療に感受性が高く、手術が困難な脊椎・骨盤部の症例や切除断端が陽性の場合に放射線治療が適用されます※11。根治照射量は50〜60Gy、肺転移に対して全肺照射(12〜14Gy)が行われることもあります※11。骨肉腫に対しては、放射線を用いた治療が効きにくいため、放射線治療はほとんど行われません※14。詳しくは放射線療法とはもご参照ください。
軟部腫瘍の治療
手術(広範切除術)
軟部肉腫の治療の基本も、腫瘍広範切除術です※12。腫瘍の反応層(腫瘍周囲の組織変化の層)の外側の正常組織を含めて切除します。近年の再建技術の進歩により、以前は切断が必要だった症例でも患肢温存が可能になってきています※12。
化学療法・分子標的薬
軟部肉腫の化学療法は、ドキソルビシン(アドリアマイシン)を中心とした多剤併用が標準的な選択肢とされています※3。組織型によっては、化学療法と手術を組み合わせた集学的治療が行われます※3。
軟部肉腫の進行例に対して、以下の薬剤が国内で承認されています。このうちパゾパニブ(ヴォトリエント)は分子標的治療薬です※3。
| 一般名(商品名) | 国内承認年月 |
|---|---|
| パゾパニブ(ヴォトリエント) | 2012年11月 |
| トラベクテジン(ヨンデリス) | 2015年9月 |
| エリブリン(ハラヴェン) | 2016年2月 |
これらの薬剤の適応・効果は組織型や前治療の状況によって異なります。どの薬剤が選択肢になるかは、主治医とご相談ください。
放射線療法
軟部肉腫に対する放射線療法は、手術が難しい場合や、術後の局所再発リスクが高い場合の補助療法として活用されることがあります※12。詳しくは放射線療法とはもご参照ください。
重粒子線治療
重粒子線治療(炭素イオン線を使った放射線治療の一種)は、手術による根治的な治療が難しい切除非適応の骨軟部腫瘍(肉腫)に対して、保険適用の治療選択肢となっています※13。治療は照射回数8〜16回・治療期間2〜4週間が目安です※13。
骨肉腫では、手術による広範切除が難しい脊椎や骨盤に発生した場合に、重粒子線治療などの粒子線治療が行われることがあります※14。
重粒子線治療はすべての骨軟部腫瘍に適応されるわけではありません。適応の判断は専門施設での検討が必要です。詳しくは重粒子線治療|特徴や対象となるがん、副作用、費用などをご参照ください。
骨軟部腫瘍の治療にかかる費用については、保険適用の範囲や高額療養費制度なども関係します。がんの治療費もあわせてご確認ください。
生存率は病型・病期・発生部位により大きく異なります。具体的な数値については、担当の主治医にご相談ください。
よくある質問
- 骨軟部腫瘍と診断されたら、まずどこを受診すべきですか?
- 骨軟部腫瘍は希少がんであり、診断・治療には専門的な知識と施設が必要です。国立がん研究センターのような希少がんの専門施設や、骨腫瘍・軟部腫瘍を専門とする整形外科腫瘍の医師がいる病院(がん診療連携拠点病院など)への受診が推奨されます。紹介状の取得について現在の担当医にご相談ください。
- 骨軟部腫瘍の「生検」はなぜ重要なのですか?
- 生検は病型を確定するために欠かせない検査です。骨軟部腫瘍は病型が多岐にわたり、同じ「肉腫」でも治療の方針が大きく異なります。生検の計画(採取する部位・方法)は後の手術に影響することがあるため、専門施設で計画・実施することが重要とされています※7。
- 患肢温存手術はすべての方に行えますか?
- 患肢温存手術が適用できるかどうかは、腫瘍の大きさ・位置・神経や血管との位置関係などによります。四肢の骨肉腫では患肢温存率が約90%とされていますが※2、全ての症例に適用できるわけではありません。どの術式が選択肢になるかは主治医とご相談ください。
- 軟部肉腫の化学療法はどのような場合に行われますか?
- 軟部肉腫の化学療法は、切除不能な進行・転移のある場合の全身治療や、若年者に多い一部の組織型での集学的治療として行われます※3。一方、軟骨肉腫(骨腫瘍)では化学療法の効果が乏しいとされており、手術が基本となります※2。組織型の確認が治療方針を決める上で特に重要です。
- 治療に対する不安はどこに相談できますか?
- 治療方針や生活への影響について不安を感じることは自然なことです。がん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」が設置されており、医療スタッフへの相談窓口として利用できます。がんの不安の記事もあわせてご参照ください。
本記事は2026年8月2日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「肉腫(サルコーマ)」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター 希少がんセンター「骨の肉腫」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター 希少がんセンター「軟部肉腫」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター 希少がんセンター「骨肉腫」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「骨肉腫(小児)」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「成人軟部肉腫」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「骨肉腫(小児)診断」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「ユーイング肉腫(小児)診断」(最終確認日: 2026年8月1日)
- Mindsガイドラインライブラリ「原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022」(日本整形外科学会)(最終確認日: 2026年8月1日)
- Mindsガイドラインライブラリ「軟部腫瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)」(日本整形外科学会)(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「ユーイング肉腫(小児)治療」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「軟部肉腫(小児)治療」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 QST病院「重粒子線治療の適応疾患」(最終確認日: 2026年8月1日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「骨肉腫(小児)治療」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「軟部肉腫(小児)検査」(最終確認日: 2026年8月2日)


















