更新日:2026/08/19
子宮体がん(子宮がん)とは|症状や検査、治療、ステージなど
子宮体がんについて、最も多い症状である出血・エストロゲンとの関係・リンチ症候群・検診の位置づけ・検査と診断・病期(ステージ)・手術を中心とした治療・妊よう性を残す選択肢とその条件・再発と経過観察・生存率など、さまざまな観点から解説します。
子宮体がんは、子宮のいちばん奥にある子宮内膜から発生するがんです。最も多い自覚症状が出血であるため、ほかのがんに比べて早い段階で気づかれやすいという特徴があります。
この記事では、症状・原因から治療、妊よう性を残す選択肢までを、公的機関と学会診療ガイドラインの情報にもとづいて整理します。
子宮体がんとは
子宮体がんは子宮体部にできるがんで、ほとんどは子宮内膜から発生する子宮内膜がんです。閉経後の女性に多く発症します※1。
主な組織型は類内膜がん・漿液性がん・明細胞がんで、類内膜がんはさらにグレード1〜3に分類されます※1。このグレードは、後述する治療方針や、子宮を残せるかどうかの判断に関わります。
日本では2023年に19,945例が子宮体がんと診断されました。人口10万人あたり31.2です※2。
子宮体がんの症状
最も多い自覚症状は出血です※1。
特徴的なのは、月経ではない期間や、閉経後に出血があることです※1。真っ赤な出血とは限らず、おりものに血が混じる程度のこともあります。
進行すると、下腹部痛や腰痛があらわれます※1。
閉経後の出血は、量が少なくても婦人科で相談してください。子宮体がんが比較的早く見つかりやすいのは、この症状があるためです。
子宮体がんの原因
主な原因は、エストロゲン(女性ホルモンの一つ)に長期間さらされることです※1。
具体的には次の要因が挙げられています※1。
- 出産経験がない
- 閉経が遅い
- 肥満
- 糖尿病
- リンチ症候群
リンチ症候群と子宮体がん
リンチ症候群は、遺伝子の変化が原因で複数のがんが起こりやすくなる体質です。
日本婦人科腫瘍学会の『子宮体がん治療ガイドライン』2018年版によれば、リンチ症候群に関連する子宮体がんは、子宮体がん全体の2〜6%とされています。日本でも同様の頻度が報告されています※3。
リンチ症候群の家系の女性では、70歳までに子宮体がんが28〜60%、大腸がんが30〜52%の割合で発生すると報告されており、診断された方やその血縁者には、大腸・子宮・卵巣・胃などの定期的な検査が提唱されています※3。
子宮体がん検診とその費用
まず前提として、子宮体がん検診は、国が推奨するがん検診には含まれていません。
国の指針にもとづいて市区町村が実施するがん検診は胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5種類で、子宮に関しては「子宮頸がん検診」のみです※4。
子宮頸がん検診と子宮体がん検診は、調べる場所も検査方法も別のものです。子宮頸がん検診を受けていても、子宮体がんを調べたことにはなりません。
自治体や健康保険組合が独自に子宮体がん検診の助成を行っている場合がありますが、実施の有無・条件・費用は地域や保険者によって異なります。お住まいの自治体や加入している健康保険組合にご確認ください。
子宮体がんは症状が出やすいがんです。検診を待つより、閉経後や月経以外の時期の出血に気づいた時点で受診することが、実際には早期発見につながります。
子宮体がんの検査と診断
基本となる検査は次のとおりです※1。
| 検査 | 何を調べるか |
|---|---|
| 細胞診 | 子宮内膜の細胞を採取して調べる |
| 組織診 | 確定診断に必須。組織を採取して診断を確定する |
| 経腟超音波検査 | 子宮内膜の厚さなどを調べる |
| MRI検査 | 筋層浸潤の程度(がんが子宮の筋肉にどれだけ入り込んでいるか)を評価する |
MRI検査による筋層浸潤の評価は、病期の判断と治療方針に直結します※1。
子宮体がんの病期(ステージ)
子宮体がんの病期はI期からIV期に分類されます※1。
判定に用いられるのは次の4点です※1。
- 筋層浸潤の深さ
- 頸部・腟への浸潤
- リンパ節転移
- 遠隔転移
子宮体がんの生存率・予後
子宮体がんの5年相対生存率は81.1%です。2018年に診断された方についての、全国がん登録生存率データによる数値です※2。
参考として、死亡数は2024年で3,136人でした(人口動態統計死亡データ)※2。
この数字を読むときは、次の点にご注意ください。
- 病期別の数値は、一般向けの統計としては公表されていません。がん情報サービスは「5年生存率は病期により異なり、院内がん登録生存率集計結果で確認できる」と案内するにとどめています※1。ご自身の病期における見通しは主治医にお尋ねください
- 集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません
- 2018年に診断された方のデータであり、その後に登場した治療の効果は反映されていません
子宮体がんの治療法
子宮体がんの治療は手術が中心で、術後の追加治療を行うかどうかは再発リスクの分類によって判断します※1。
手術(外科療法)
基本となるのは、子宮と両側付属器(卵巣・卵管)の摘出です。リンパ節郭清もあわせて行われます※1。
術式について、日本婦人科腫瘍学会のガイドラインは、術前にI期と考えられる症例では国内外とも筋膜外単純子宮全摘出術が標準としています※3。
また、2014年4月に腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が、2018年4月にロボット支援下子宮悪性腫瘍手術が保険適用となりました※3。対象は、傍大動脈リンパ節の郭清を必要としない再発低リスクの術前推定I期の症例です※3。
リンパ節郭清については議論がある
ガイドラインはリンパ節郭清の治療的意義は未だ明確でないと述べています※3。
イタリアと英国のグループによるランダム化比較試験では、骨盤リンパ節郭清は全生存期間や無再発生存期間の延長に寄与しないと報告されました。一方、米国国立がん研究所の解析では、再発中・高リスク群において郭清されたリンパ節の個数が予後の改善に寄与するという報告もあります※3。
郭清の範囲は施設によって差が大きいのが実情です※3。どこまで行うか、なぜそうするのかは、手術の説明のときに確認しておくとよい点です。
抗がん剤(化学療法)
術後の薬物療法を行うかどうかは、再発リスク分類にもとづいて判断されます※1。
進行した子宮体がんに対する化学療法について、ガイドラインはAP療法(ドキソルビシン+シスプラチン)を標準治療とし、TAP療法(パクリタキセルを加えたもの)やTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)も考慮するとしています※3。
TAP療法はAP療法を上回る成績が示された一方、神経障害をはじめとする毒性はTAP療法でより高率であった点に留意すべきとされています※3。抗がん剤一覧もあわせてご覧ください。
放射線療法
術後の放射線治療も、再発リスク分類にもとづいて判断されます※1。
再発したときの位置づけは後述します。放射線治療全般については放射線療法とはをご覧ください。
ホルモン療法
ホルモン療法には2つの使われ方があります。
進行・再発した場合
ガイドラインは、エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体が陽性の症例では、MPA(メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)によるホルモン療法の効果が期待できるとしています※3。受容体が陽性かどうかが前提になります。
妊よう性を残したい場合
子宮を残す選択肢としての黄体ホルモン療法は、対象が明確に限られています。
がん情報サービスは、妊よう性温存の条件をグレード1の類内膜がんで、がんが内膜にとどまる場合としています※1。ガイドラインも、対象は子宮内膜異型増殖症と、子宮内膜に限局する類内膜癌G1相当としています※3。
成績と限界の両方を知っておく必要があります。ガイドラインが引用する391症例のレビューでは、奏効率は全体で78%でした※3。一方で温存療法後の再発率は、子宮内膜異型増殖症で23%、類内膜癌G1相当で35%と比較的高いことが問題とされています※3。再発した場合は子宮全摘出術が原則です※3。
また、黄体ホルモンの投与では脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症などの重篤な血栓症が起こることがあると警告されており、血栓性疾患やその既往のある方、重篤な肝障害のある方などは禁忌とされています※3。
この治療を検討する際は、婦人科腫瘍を専門とする医師による評価と、十分な説明・同意が必要です※3。
免疫療法
免疫療法のうち、有効性が確認され保険診療で使われているのは免疫チェックポイント阻害薬などの一部に限られます。自由診療で提供されている免疫療法には、効果が証明されていないものがあります。
詳しくは免疫療法の比較をご覧ください。
陽子線治療
子宮体がんは、粒子線治療の保険適用の対象に含まれていません。
婦人科領域で重粒子線治療の保険適用となっているのは、子宮頸部腺がんII〜IVA期・局所進行子宮頸部扁平上皮癌(長径6cm以上)・婦人科領域の悪性黒色腫で、子宮体がんは保険適用疾患にも先進医療の対象にも記載がありません※5。
治療の仕組みについては陽子線治療をご覧ください。
重粒子線治療
上記のとおり、子宮体がんは重粒子線治療の保険適用疾患には記載がありません※5。仕組みについては重粒子線治療をご覧ください。
治療後の療養
治療が終わったあとは、1〜3年は3〜6カ月ごとに通院して経過をみます※1。
治療の影響として、排尿障害・便秘・リンパ浮腫・卵巣欠落症状の管理が重要になります※1。卵巣を摘出した場合、閉経前の方では更年期に似た症状があらわれます。
子宮体がんの再発・転移
腟断端再発 ― 最も根治が望める再発
ガイドラインは、再発のなかで最も根治が望める可能性があるのは腟断端再発であるとし、治療には放射線治療を推奨しています※3。
術後の腟断端再発に対して放射線治療を行った症例の解析では、5年骨盤内制御率は約40〜80%、5年生存率は約30〜75%と報告されています※3。切除可能であれば手術も考慮されます※3。
そのほかの部位の再発
腟断端以外でも、単発あるいは限局した腫瘍で手術により残さず摘出できる場合は、手術が選択肢になります。この場合は「根治性」と「侵襲性」のバランスを考慮した患者選択が重要とされています※3。
切除できない部位の再発や、手術が生活の質を損なうと考えられる場合には、放射線治療が選択肢になります※3。
再発を見つけるのは、検査だけではない
ガイドラインには、経過観察について注目すべき記述があります。
欧米の報告では、定期的な経過観察による再発の診断率よりも、患者さんの自覚症状によって再発と診断される率のほうが高く、自覚症状に加えて身体診察のみで80%以上の再発が発見されると報告されています※3。
つまり次の通院日を待たずに、気になる症状が出たときに受診することに意味があるということです。
再発・転移の仕組みについてはがんの再発と転移はなぜ起こる?、療養中のつらさについては緩和ケアもあわせてご覧ください。
本記事は2026年7月30日時点の公的機関の情報および学会診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮体がん(子宮内膜がん)」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 子宮体部」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン「子宮体がん」(日本婦人科腫瘍学会『子宮体がん治療ガイドライン』2018年版)(最終確認日: 2026年7月30日)
- 厚生労働省「がん検診」(最終確認日: 2026年7月30日)
- QST病院(量子科学技術研究開発機構)「重粒子線治療が適応となる疾患」(最終確認日: 2026年7月30日)


















