更新日:2021/05/28
【インド】インドの15%の女性を悩ます子宮がん
インドの女性が発症する癌の中でも最も発症率が高いのが子宮がんである。特に首都のデリーでは女性の約14.6%が子宮がんを持っており、同国では約7万人以上が毎年この癌により死亡していると2012年10月27日のDECCAN HERALD誌が報告している。
子宮がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンはすでにアメリカで開発されているが、その効果に対して懐疑的な意見を持つ人がインドでは多く見られる。保健省に認可されていないワクチンも出回っており、これを接種した患者が死亡するというケースも過去に報告されている。また中には接種するタイミング・量を誤ってしまう患者もおり、医師とのコミュニケーションが取れていないという問題も露呈した。
通常子宮がんの予防・早期発見には二十歳前後か初めて性交渉をもってから検診を受け、必要に応じてワクチンを接種することが適切だが、インドのような新興国では医療体制が完全には整っていないため、定期的な検診を受けることは難しい。子宮がんの早期発見によく用いられるパップテスト(細胞診検査)も効果的だが、テストを実施する機関は少ない。検診を受けることが物理的に困難という問題もあるが、癌を発症しながらも家族の健康を優先し、医師に末期の段階・手遅れになるまで助けを求めない、といった社会的な要因もある。またワクチン自体が高価なため(一回分で約2800ルピー = 約4088円)貧困層にいる人にとっては接種が不可能である。
また隣国のネパールでも政府の対応が遅れており、HPVのどの型(1000種の内5つ程が子宮がんに繋がると言われている)が癌に変異しているか未だに特定されていないのが現状だ。世界保健機関(WHO)も細かな情報を持っておらず、明確な解決案が出されていない。オーストラリアでは12~26歳の女性に対して無料でワクチンを提供しているが、このようなサービスを行うためにも政府による大幅な改革がいずれの国でも求められる。また先述のようにワクチンに関する情報を患者に向けて的確に伝え、病院側も使用法を誤らないよう明確なガイドラインを作成することが急務である。
(Medister 2012年11月19日 Taro)