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更新日:2026/08/10

仕事とがん治療

がんと診断されても、経済的な理由や生きがいから、仕事を続けたいと考える方は少なくありません。入院や退院後の通院治療があっても、職場の理解と使える制度を知っておくことで、治療と仕事を両立できる可能性があります。

この記事では、患者さんと雇用する側の双方の視点から、職場への伝え方、使える休暇や給付の制度、就職時の考え方、事業者に求められる配慮を、厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」と国立がん研究センター がん情報サービスのT1情報をもとに整理します。制度の利用や働き方の調整は、状況によって異なります。担当医や職場の担当者、相談窓口とよく相談しながら進めることが大切です。

この記事でわかること

  • 職場ではまず上司、次に人事労務担当者、産業医・保健師などに相談するとよい
  • 伝えるのは「仕事への影響と希望」「治療の見通し」「復帰の見通し」の3点
  • がん専用の法定休職制度はないが、会社の休暇・休職制度や傷病手当金が使える
  • 就職時に過去の病歴を必ず申告する義務はなく、がんを理由の不採用は不適切
  • 2026年度から、治療と就業の両立支援は事業主の努力義務になる

仕事とがん治療を両立するため職場に伝える時のポイント

治療と仕事を両立するには、まず職場にがんのことを伝え、必要な配慮について理解を得ることが出発点になります。誰に、何を、どう伝えるかがポイントです。

職場の誰に伝えるか

両立支援は、支援を必要とする本人が会社に申し出ることから始まります※1。まず相談したいのは直属の上司です。業務の量や内容を調整できる立場にあり、通院や入院、体調不良で休むときのフォローをお願いする相手になります※1。次に、人事・総務(人事労務担当者)に相談します。休職制度や休暇、給与に関する制度に詳しく、利用できる仕組みを一緒に確認できます※1。産業医や保健師などの産業保健スタッフがいる職場では、健康面の相談ができ、上司や人事労務担当者との情報共有の橋渡しをしてもらえることもあります※1。

伝え方のポイント

一度に多くの情報を伝えても理解を得にくいため、次の3点を整理して伝えるとよいとされています※1。

  • 仕事への影響と自分の希望:病状や治療によって仕事にどう影響しそうか、どのような配慮を希望するか。がんの部位まで伝えるかは本人が決めてよい
  • 治療の見通し:入院の有無、通院の頻度、休暇や早退・遅刻が必要かなど
  • 職場復帰の見通し:復帰の時期の目安、復帰時に予測される体調や副作用の影響

検査結果が出そろわず治療計画が定まらないこともあります。その場合も、担当医に「予想される見通し」を確認し、今後変わる可能性があることを添えて暫定的に伝えておくと、休暇の申請や引き継ぎの準備を早めに進められます※1。休暇取得や復職の際には、担当医の診断書が重要な役割を果たします※1。

治療と仕事の両立支援の進め方の図。会社へ申し出、勤務情報を主治医へ提供、主治医の意見書を取得、就業継続の可否を判断、両立支援プランを作成・実施の5段階。
両立支援は、本人の申し出から主治医・会社が情報を共有して進めます。

上司と人事労務担当者を交えて今後についての検討を

報告のあとは、上司と人事労務担当者を交えて今後の働き方を話し合うことがすすめられます。上司が就業規則の細部まで把握しているとは限らず、休職できる期間を思い違いしていると、実際には規則の期間を超えて不利益が生じることもあります。厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」では、本人の申し出をもとに、会社が職場の状況を主治医に伝える書式(勤務情報提供書)や、主治医の意見書を用いて就業継続の可否を判断し、両立支援プランを作成する流れが示されています※2。就業規則で休める期間などをあらかじめ確認し、無理のない計画を立てましょう。

仕事と通院治療を両立するためのポイント

入院治療を終え、通院治療を続けながら働けると医師から認められた後の、両立のポイントを整理します。

休職

がん治療に特化して法的に義務づけられた休職制度は、現行の法律にはありません※3。ただし、会社ごとに「病気休暇制度」や「休職制度」を設けている場合があるため、まずは自分の勤め先の制度を確認しましょう※3。なお、2026年度(令和8年度)からは、労働施策総合推進法の改正により、治療と就業の両立支援に取り組むことが事業主の努力義務となります※3。

傷病手当金

会社員や公務員などが加入する健康保険には、病気やけがで働けず給与が受けられないときに支給される「傷病手当金」があります。療養のために仕事を休み始めてから連続する3日間(待期)を経て、4日目以降の働けない日について支給され、支給期間は支給開始日から通算して1年6か月です※4。傷病手当金は健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)の被保険者を対象とする給付で、自営業などで国民健康保険に加入している方は制度上の対象外です(市区町村独自の制度がある場合を除く)※4。金額や手続きの詳細は、加入先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)や勤め先に確認しましょう。治療にかかるお金についてはがんの治療費やがん保険についてもあわせてご覧ください。

働き方の調整

治療によって現れる副作用は人それぞれです。状況に合わせて働き方を調整することが両立の助けになります。厚生労働省は、事業主が整えられる勤務の仕組みとして次のようなものを示しています※2。

働き方を調整する制度のツリー図。時間単位の年次有給休暇、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務(テレワーク)、試し出勤、病気休暇の6つ。
通院や体調に合わせて、勤務時間や働く場所を調整できる制度があります。

たとえば、定期的な通院には時間単位の年次有給休暇が使えます。通勤の負担が大きいときは時差出勤や在宅勤務(テレワーク)、体力の回復に合わせて短時間勤務や試し出勤を利用する方法もあります※2。抗がん剤の副作用で外見が変化して人と接する仕事がつらいときには、外見を整えるケアを取り入れたり、担当業務を一時的に調整したりする工夫もあります。外見のケアについてはアピアランスケアを参考にしてください。副作用のつらさは周囲に伝わりにくいことがあるため、公的機関のパンフレットなどを用いて説明し、理解を得られるようにするとよいでしょう。

就職

がんの経験があることを理由に、採用に消極的な企業がないとは言えません。また就職後も、治療の状況によっては働き方に配慮が必要になることがあります。就職にあたっては、過去のがんの病歴を必ず申告しなければならないというものではありません※1。応募した職務を遂行できる健康状態であれば、過去の病歴は本来、採用の合否に関係しないという考え方が示されています※1。一方で、通院の頻度が高い、副作用で一部の業務が難しいなど、仕事に具体的な影響がある場合は、配慮してほしいことを事前に伝えておくと、自分に合った職場を見つけやすくなります※1。伝えた場合でも、がんの病歴だけを理由に不採用にすることは不適切とされ、現在の健康状態や職務遂行能力、職種との適合性から総合的に判断することが求められます※1。

仕事を探すときは、公的な支援も利用できます。ハローワークの長期療養者就職支援事業では、本人の同意のもとでがん相談支援センターと連携し、治療状況や配慮すべき点をふまえた職業相談・紹介を行っています※1。休業や職場復帰の相談は、各都道府県の社会保険労務士会の総合労働相談などでも受けられます※2。

雇用者に求められる配慮と支援

雇用者によるサポートは重要

がん治療は入院日数が短くなる傾向にあり、通院しながら働く方が増えています。治療と仕事の両立は、本人だけでなく、雇用する側や社会全体にとっての課題です。厚生労働省は「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を示し、事業者が両立支援に取り組む際の進め方をまとめています※3。前述のとおり、2026年度からは両立支援が事業主の努力義務となります※3。

配慮すべきポイント

事業者に求められる配慮として、次の点が挙げられます。

  • 本人の話をよく聞く:治療の見通しや必要な配慮を確認する。専門用語はかみくだいた説明やパンフレットで理解を補う。ただし、がんの部位や進行度など話したくない内容は本人の意思を尊重する※1
  • 就業規則を確認し、休める日数を示す:人事労務担当者と連携して利用できる制度や休める日数を提示し、治療の予定を立てやすくする※3
  • がんを理由に不利益な扱いをしない:がんを理由とした解雇や、通院のための休みを一律に不利益に扱うことは、両立の妨げになる。採用面接でも、病歴だけを理由に不採用とすることは不適切とされている※1

産業保健スタッフ・両立支援コーディネーターの活用

社内にがんを経験したスタッフがいない場合、本人の状況を理解するのが難しいこともあります。産業医や保健師などの産業保健スタッフを配置し、密に情報交換を行うことで、職場復帰後のフォローや主治医との情報共有がしやすくなります※1。近年は、本人・医療機関・職場の間の調整を担う「両立支援コーディネーター」の配置も広がっています※5。事業主や人事労務担当者は、全国の都道府県に設置された産業保健総合支援センター(さんぽセンター)による研修・相談・訪問支援などを利用できます※5。

よくある質問

Q. がんであることは、職場の誰に伝えればよいですか。

A. まず直属の上司、次に人事労務担当者に相談するとよいとされています。産業医や保健師がいる職場では、健康面の相談や情報共有の橋渡しをしてもらえます※1。

Q. 治療で休むあいだの収入はどうなりますか。

A. 健康保険の加入者であれば、働けない期間について傷病手当金が支給される場合があります。待期3日を経た4日目以降が対象で、支給期間は通算1年6か月です※4。金額や手続きは加入先の健康保険や勤め先に確認してください。

Q. 就職の面接で、がんの病歴を必ず言わなければいけませんか。

A. 必ず申告する義務はないとされています。ただし、仕事に具体的な影響がある配慮事項は事前に伝えておくと、自分に合った職場を見つけやすくなります。がんの病歴だけを理由に不採用にすることは不適切とされています※1。

本記事は2026年8月11日時点の公的機関の情報および両立支援ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療と仕事の両立の進め方は、必ず主治医や職場の担当者、相談窓口にご相談ください。

参考資料

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと仕事:働き方を考える」(最終確認日: 2026年8月11日)
  2. 厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」(最終確認日: 2026年8月11日)
  3. 厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(2026年度からの事業主の努力義務化を含む)(最終確認日: 2026年8月11日)
  4. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」(最終確認日: 2026年8月11日)
  5. 独立行政法人 労働者健康安全機構「両立支援コーディネーター」(最終確認日: 2026年8月11日)

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