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更新日:2026/08/19

ベストサポーティブケア(BSC)

キッチンに並べられた新鮮な野菜と水のグラス、ウォーキングシューズを描いた水彩イラスト

「ベストサポーティブケア(BSC)」という言葉を、治療の説明のなかで聞いたり、検査結果の書類で目にしたりして、不安になった方も多いのではないでしょうか。「もう治療しないという意味だろうか」と受けとめてしまうことがあります。

結論から書きます。BSCは、積極的治療の中止を意味する用語ではありません※1。この記事では、学会の用語集と公的機関の情報にもとづいて、言葉の意味を正確に整理します。

この記事でわかること

  • BSCという言葉の正確な意味と、よくある誤解
  • 臨床試験で使われるときと、日常の診療で使われるときで意味が違うこと
  • 緩和ケア・支持療法・対症療法との関係
  • 緩和ケアはがんと診断されたときから受けられること
  • どこで、誰から、いくらで受けられるのか

ベストサポーティブケア(BSC)とは

日本緩和医療学会の用語集には、次のように記載されています※1。

Best Supportive Care(BSC)は、臨床試験では非抗がん治療群を指すことがあるが、日常診療ではがん治療の有無を問わず患者の生活の質を支える医療を指す。積極的治療中止を意味する用語ではない。

ここには2つの大事なことが書かれています。

ベストサポーティブケアについてのよくある誤解と実際の意味を並べた比較図。治療をやめることではなく、治療の有無を問わず生活を支える医療であることを示す
BSCという言葉をめぐって起きやすい受けとめ方のずれ

1. 臨床試験での使われ方

新しい抗がん剤の効果を調べる臨床試験では、比較のために「抗がん治療を行わない群」を設けることがあります。この群を指してBSCという言葉が使われることがあります※1。試験の結果を読むときに出てくる用法です。

2. 日常の診療での使われ方

一方、日常の診療でのBSCは、がん治療を行っているかどうかにかかわらず、患者さんの生活の質を支える医療を指します※1。抗がん剤治療を受けている最中の人にとってもBSCはあります。

つまり「BSCになりました」という言葉は、そのままでは「治療をやめます」という意味にはなりません。実際にどういう方針を指しているのかは、主治医に確認する必要がある言葉です。「BSCというのは、私の場合は具体的にどういう方針という意味ですか」と尋ねてよい場面です。

緩和ケア・支持療法・対症療法との関係

似た言葉が並ぶため、整理しておきます。

言葉意味出典
ベストサポーティブケア(BSC)日常診療では、がん治療の有無を問わず患者の生活の質を支える医療。積極的治療中止を意味する用語ではない日本緩和医療学会 用語集※1
緩和ケア生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチWHO(2002)・日本緩和医療学会定訳(2019)※2
支持療法がんの治療に伴う副作用や合併症、後遺症などの症状を軽減し、生活の質(QOL)を維持・向上するための予防、治療、およびケアがん情報サービス 用語集※5
対症療法病気の原因そのものを治すのではなく、現れている症状を和らげたり、取り除いたりするための治療法がん情報サービス 用語集※6

いずれも「がんそのものを叩く治療」とは別の軸にある考え方で、がんの治療と同時に行われるものです。

緩和ケアは、がんと診断されたときから受けられる

緩和ケアは終末期のものだと思われがちですが、実際にはがんと診断されたときから始まります。進行した段階に限らず、がんの治療と並行して、つらさがあるときにいつでも受けられます※3。

がんと診断されてから治療中・経過観察・進行期まで、支える医療がどの段階でも関わることを示す流れ図。診断の時点から受けられることを強調している
診断の時点から、どの段階でも受けられる

これは国の方針でもあります。がん対策推進基本計画(平成24年6月閣議決定)では「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として位置づけられ、「身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われることが求められています」とされています※4。

何を支えてもらえるのか

緩和ケアが対象とするつらさは、痛みだけではありません※3。

種類
身体的な症状痛み、吐き気、息苦しさ、だるさ
精神的なつらさ気持ちの落ち込み、不安
社会的な問題仕事のこと、人間関係のこと
スピリチュアルな問題生きる意味についての問い

また、緩和ケアにはご家族へのケアも含まれます※3。支える側の負担や不安も対象です。

どこで、誰から受けられるのか

基本は主治医と看護師ですが、必要に応じて医師・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー・カウンセラーなど、さまざまな職種がチームを組んで対応します※3。

内容
外来通っている一般の外来のほか、緩和ケア外来がある施設もある
入院一般の病棟のほか、緩和ケア病棟がある施設もある
在宅訪問診療・訪問看護を利用して自宅で受ける

また、がん診療連携拠点病院などに設置されているがん相談支援センターでは、緩和ケアについて無料で相談できます※3。その病院にかかっていなくても利用できる窓口です。

費用

緩和ケアは公的医療保険の対象です。緩和ケア病棟は定額の診療報酬が定められています。在宅での療養は入院より費用を抑えられる場合があり、条件によっては介護保険が使えることもあります※3。

費用についてはがんの治療費もあわせてご覧ください。

主治医に確認しておきたいこと

BSCという言葉は、使われ方に幅があります。だからこそ、言葉のまま受けとめずに、自分の場合は何を指しているのかを確かめることが大切です。次のような聞き方ができます。

  • 「BSCというのは、私の場合は具体的にどういう方針という意味ですか」
  • 「がんそのものに対する治療は、いま行っていますか。今後行う可能性はありますか」
  • 「いま出ているつらい症状に対しては、どんな対応ができますか」
  • 「緩和ケアチームや緩和ケア外来に相談することはできますか」
  • 「今後、方針を見直すとしたら、どんなときですか」

説明を受けたその場で聞けなかったことは、次の受診時に改めて尋ねてかまいません。メモを持っていく、家族に同席してもらうといった方法もあります。

がん相談支援センターという窓口

全国の「がん診療連携拠点病院」「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」には、がん相談支援センターが設置されています※8。

項目内容
利用できる人患者さん本人だけでなく、ご家族や地域の方など、どなたでも。その病院に通っていなくても利用できる
費用無料
匿名可能。同意なく担当医や病院スタッフに内容が共有されることはない
対応する人看護師やソーシャルワーカーなどの相談員
相談できること診断、治療、副作用、療養生活、お金、仕事、学校、家族関係など

主治医に聞きづらいと感じることも、ここでなら相談できます。

「効果が証明されていない免疫療法」に注意

症状がつらいとき、標準的な治療以外のものを探したくなることがあります。ここで注意が必要なのが、免疫療法という言葉です。

免疫療法には、保険診療で使われているものと、効果が証明されていないものの両方があります。後者は治療効果や安全性が立証されておらず、医療として確立されたものではありません。自由診療として提供される場合は全額が自己負担になるため、治療効果・安全性・費用について慎重に確認する必要があるとされています※7。

つらい症状をやわらげたいという目的であれば、まずは保険診療の枠内で受けられる緩和ケアについて主治医やがん相談支援センターに相談することができます。

関連して緩和ケア緩和医療とはがんの痛みもご覧ください。

よくある質問

Q. 「BSCで」と言われました。治療をやめるということですか。
A. BSCは積極的治療の中止を意味する用語ではありません※1。日常の診療では、がん治療の有無を問わず生活の質を支える医療を指します。実際にどういう方針を指しているのかは主治医にご確認ください。

Q. 緩和ケアは、もう治療法がなくなってから受けるものですか。
A. いいえ。緩和ケアはがんと診断されたときから始まり、がんの治療と並行して受けられます※3。国の基本計画でも「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が課題に位置づけられています※4。

Q. 緩和ケアと支持療法は違うものですか。
A. 支持療法は「がんの治療に伴う副作用や合併症、後遺症などの症状を軽減し、生活の質を維持・向上するための予防、治療、およびケア」と定義されています※5。緩和ケアはより広く、身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を対象とするアプローチです※2。

Q. 緩和ケアは保険がききますか。
A. 公的医療保険の対象です※3。緩和ケア病棟には定額の診療報酬が定められています。条件によっては介護保険が使えることもあります。

Q. 家族の立場でも相談できますか。
A. 緩和ケアには家族へのケアも含まれます※3。がん相談支援センターでは無料で相談できます。

本記事は2026年7月27日時点の公的機関の情報および学会の用語集・診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。

参考資料

  1. 日本緩和医療学会「用語集(2025)」(最終確認日: 2026年7月27日)
  2. 日本緩和医療学会「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)定訳」(最終確認日: 2026年7月27日)
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(最終確認日: 2026年7月27日)
  4. 厚生労働省「緩和ケア」(最終確認日: 2026年7月27日)
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「支持療法」(最終確認日: 2026年7月27日)
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「対症療法」(最終確認日: 2026年7月27日)
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(最終確認日: 2026年7月27日)
  8. 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターとは」(最終確認日: 2026年7月27日)

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