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更新日:2020/12/26

食道がんとは|症状や検査、治療、ステージなど

● 監修)東京女子医科大学東医療センター 外科 細胞治療 島川武 准教授

食道がんについて、特徴・症状・原因・分類・検査方法・診断・病期(ステージ)・生存率・治療法・再発・転移など様々な観点から解説します。

国立がん研究センターの調べによると2017年にがんで亡くなった人は男性で220,398人、女性152,936人のあわせて373,334人でした。また、2014年に日本全国で新たにがんと診断された人は、男性で501,527例、女性365,881例でした。(以上、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より)。

2017年に食道がんで亡くなった人は男性で9,580人、女性1,988人の男女計11,568人となりました。また、2014年に食道がんと診断された人は男性で19,067例、女性3,643例です。(以上、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より)。

生涯がんで死亡するリスクは男性で25%となり、これは4人に1人の割合となります。男性が生涯食道がんで死亡するリスクは1%となりますが、これは94人に1人という確率です。女性では生涯全がんで死亡する確率は15%で7人に1人、食道がんだけでみると0.2%で494人に1人となっています。(以上、国立がん研究センターがん情報サービス「累積死亡リスク」より)。

食道がんとは

食道はのどと胃をつなぐ長さ約25㎝、太さ2~3㎝、厚さ約4㎜の管状の臓器で、食べ物が通りやすいように内側が粘液を分泌する粘膜でおおわれています。食道がんは、この粘膜の表面にある上皮から発生します。日本では、食道がんの90%以上が扁平上皮癌というがんですが、欧米では腺癌というがんが増加しており、そのほとんどは胃の近くの食道下部に発生します。日本でも、生活習慣の欧米化によって、今後、腺癌が増えることが予想されます。

食道がんにかかる率(罹患率)や食道がんによる死亡率は、ともに40歳代後半以降に増加し始める傾向にあります。また、女性よりも男性に多いがんです。発生の危険因子(リスクファクター)としては、喫煙や大量の飲酒が明らかになっています。特に扁平上皮がんでは、喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることも指摘されています。また、熱い飲食物がリスクを上昇させるという研究結果も多く報告されています。腺癌では、食べ物や胃液などが胃から食道に逆流する「胃・食道逆流症」に加え、肥満で確実にリスクが高くなるとされています。

日本人の食道がんの約半数は胸の中の食道の真ん中付近から発生し、4分の1は食道の下部に発生しています。粘膜上皮から発生したがんは、大きくなるにつれて食道外膜に向かって広がっていきます。食道の周囲には、気管・気管支や肺、大動脈、心臓など重要な臓器が近接しているので、がんが大きくなるとこれらの臓器に広がっていきます。これを浸潤といいます。腹部や首のリンパ節、他の臓器などに転移することもあります。

食道がんは初期症状がないことが多く、検診や人間ドックのときに発見されることが20%近くあります。症状としては、がんの進み具合によって異なりますが、食べ物を飲み込んだときに胸の奥が痛む、熱い物を飲み込んだときにしみる、食道で食べ物がつかえる、体重が減少する、胸や背中が痛む、むせるようなせきや血の混じったたんが出る、声がかすれるなどがあります。定期的な検診を受けることはもちろん、症状が続くときは早めに消化器科を受診することが大切です。

食道がんの標準治療は手術ですが、病状によっては食道を切除しない化学放射線療法(放射線治療+抗がん剤治療)でも手術とほぼ同等の効果が得られたという報告もあり、そのような治療法を選択することにより生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)の向上が期待されています。

食道がん死亡者数

食道がんの症状

ごく早期の食道がんの場合、がんは粘膜内にとどまっており、目立った自覚症状がないことが多いという特徴があります。そのため、初期症状といえる症状はほとんど無く、早期の食道がんの約20%は、健康診断や人間ドックなどのがん検診で発見されることが多いとされています。しかし、がんが進行するにつれてさまざまな症状が出現します。

● 食道がしみる感じ
食べ物を飲み込んだ時などに、食道や胸がしみて「チクチクとするような感じ」や、熱いものを飲み込んだかのような感じがする、という症状です。この症状は食道がんの初期症状としては比較的多く見られるものの、がんが進行すると、自覚症状としては見られなくなってしまうので、注意が必要です。

● 食べ物がつかえる感じ
がんが大きくなると食道の内腔が狭くなるため、食べ物を飲み込んだ時、特に硬いお肉などを飲み込んだ時に、胸のあたりがつかえる感じがします。初期症状としては、硬いものを食べた時にみられ、やわらかいものはつかえずに食べることができますが、症状が進行してくると、水や自身の唾液でさえもつかえるようになります。

● 体重減少
食べ物がつかえるようになると食事摂取量が減り、栄養が吸収できずに体重が減少します。3か月で5~6㎏の体重減少が見られたら要注意です。

● 胸部痛、背部痛
がんが進行し、肺や背骨、動脈を圧迫すると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。末期症状としてよく出現する症状です。

● 咳・痰
がんが進行して気管、気管支、肺まで浸潤すると、せきや血のまじった痰が見られるようになります。末期症状としてよく出現する症状です。

● 声のかすれ(嗄声)
声の調整をしている反回神経が食道の脇にあるため、がんが進行すると風邪をひいた時のように声がかすれます。

食道がんの原因

食道がんは、高齢者や男性に比較的多いとされますが、食道がんは大きく腺がんと扁平上皮がんの2つに分類され、がんの種類によって原因が異なるといわれています。

腺がんの場合は、胃食道逆流症や繰り返す逆流症状、それに伴うバレット食道※1という食道の変化が原因となっています。また、肥満や喫煙、欧米型の食事、あるいは胸部への放射線治療の既往や抗コリン薬の内服、血縁者に食道がんの方がいる場合などが、腺がんの誘因となります。

一方、扁平上皮癌は飲酒と喫煙が最大の誘因とされており、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる体質の方は、食道がんのリスクが高くなることが明らかになっています。

また、熱い食べ物、辛い食べ物、冷たい食べ物などの刺激が強いもの、肉や魚のこげたものの摂取や胸部への放射線治療の既往、食道アカラシアや腐食性食道炎の既往なども、扁平上皮癌の原因となると考えられています。

※1 バレット食道:食道下部の内側にある細胞が変化したり、食道がんを発生し得る異常細胞に置き換わったりしている状態

食道がんの検査と診断

食道がんが疑われると、一般にⅩ線による食道造影検査と内視鏡検査を行います。食道がんの広がりを調べる検査としては、CT、MRI、超音波内視鏡検査、超音波検査があります。

食道造影検査(X線検査)

バリウムを飲んで、食道を通過するところをX線で撮影します。
がんの場所や大きさ、食道の狭さなどの全体像を見ることができます。

内視鏡検査

管の先端に小さなカメラを搭載した内視鏡(ビデオスコープ)を食道に挿入し、直接、消化管粘膜や病変を観察します。
病変の位置や大きさだけでなく、病変の数、広がり、表面の形状(凹凸)、色調などから病変の進行度を判断することができます。食道を特殊な薬品(色素・染色液)を用いて詳細に調べたり、がんが疑われる場所の組織を採取して、がん細胞の有無を調べる病理検査で確定診断されます。

CT、MRI検査

CTは、Ⅹ線を使って体の内部(横断面)を描き出し、治療前に転移や周辺の臓器へのがんの広がりを調べます。
食道造影検査で認めた病変の長径の広がりも見ます。MRIは磁気を使用します。食道の周囲には、気管・気管支や肺、大動脈、心臓など極めて重要な臓器がありますが、CTはこれらの臓器とがんの関係を調べることもできます。造影剤を使用する場合、アレルギーが起こることがあります。ヨードアレルギーの経験のある人は医師に申し出る必要があります。

超音波内視鏡検査

内視鏡の先端についた超音波装置を用いて、がんがどの程度深くに及んでいるか、食道の外側にあるリンパ節が腫れていないか(リンパ節転移の有無)などについてより詳細な情報を得ることができます。

超音波(エコー)検査

体表から観察する超音波検査は、腹部と首(頸部)に行い、肝臓や腹部リンパ節への転移、頸部リンパ節への転移の有無を検索します。頸部食道がんの場合は、主な病巣と気管、甲状腺、頸動脈など周囲臓器との関係を調べるために行います。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、がんの存在により異常値を示す血液検査の項目のことで、がんの種類に応じて多くの種類があります。
食道がんの腫瘍マーカーとしては、扁平上皮癌ではSCCとシフラで、腺癌ではCEAです。進行したがんの動きを把握するために使用されます。しかし、がんがあっても異常値を示さないこともあります。
腫瘍マーカーについてもっと詳しく見る

PET

放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで、全身のがん細胞を検出する検査です。他の検査で転移・再発の診断が確定てきない場合に行うことがあります。
PET-CT検査についてもっと詳しく見る

食道がんの病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいいます。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることも多いです。病期には、ローマ数字が使われ、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分類されています。病期はがんがどこまで広がっているか(T:原発腫瘍 primary Tumor)、リンパ節転移があるかどうか(N:所属リンパ節 regional lymph Nodes)、他の臓器への転移があるかどうか(M:遠隔転移 distant Metastasis)で決まります。これをTNM分類といい、各因子の組み合わせにより、病期が決まります。

食道がんのTMN分類は以下のようになります。

【T因子(がんの広がり)】
● T1a:がんが粘膜内にとどまる
● T1b:がんが粘膜下層にとどまる
● T2:がんが固有筋層にとどまる
● T3:がんが食道外膜に広がっている
● T4:がんが食道周囲の組織まで広がっている

【N因子(リンパ節転移) 】
● N0:リンパ節転移がない
● N1:第1群リンパ節のみに転移がある
● N2:第2群リンパ節まで転移がある
● N3:第3群リンパ節まで転移がある
● N4:第4群リンパ節まで転移がある

【M因子(遠隔転移) 】
● M0:遠隔転移がない
● M1:遠隔転移がある

TMN分類を基に、病期は以下のように決定します。
● 0期:早期がん、初期がんといえる状態で、がんが粘膜にとどまっている段階
● I 期:
  ≫ がんが粘膜にとどまっているが近くのリンパ節に転移がある
  ≫ 粘膜下層まで浸潤しているがリンパ節や他の臓器、胸膜や腹膜でのがんが認められない
● II 期:
  ≫ がんが筋層や食道の壁の外にわずかに出ている
  ≫ リンパ節への転移がある
● III 期:
  ≫ がんが食道の外に明らかに出ている
  ≫ 食道壁にそっているリンパ節か食道のがんから少し離れたリンパ節にがんがあるが、他の臓器や胸膜・腹膜にはがんが認められない
● IV期:
  ≫ がんが食道周囲の臓器におよんでいる
  ≫ がんから遠く離れたリンパ節にがんが転移している
  ≫他の臓器や胸膜・腹膜にがんが認められた場合

食道がんの病期分類には、日本食道学会による食道癌取扱い規約と、海外で主に用いられている分類があります。このうち、海外で用いられているのがTNM分類です。

がんの深さの分類であるT分類は、日本も海外もほぼ同じですが、リンパ節転移に関しては、日本の方が転移の部位が重要視されており、海外では転移個数が重要視されているという特徴があります。

食道がんの生存率・予後

食道がんの5年生存率を見てみると、ごく早期である0期では100%、I期で86%です。Ⅱ期になると51.9%、Ⅲ期で26.4%、Ⅳ期で12.2%と、生存率は徐々に低くなっていきます。リンパ節転移を起こす前に治療を開始できれば、5年生存率は80%代で推移することが可能です。

病期(ステージ)症例数5年生存率
Ⅰ期2,06885.4%
Ⅱ期1,69353.4%
Ⅲ期2,51828.6%
Ⅳ期2,21712.4%
全病期8,66343.2%

全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2019年2月現在)による
※対象データは、診断年:2005年~2009年の最新5年間とした

がんが粘膜でとどまっている場合、手術で切除できれば5年生存率は100%とされています。しかし、進行がんになると、手術で目に見えるがんをとりきれたとしても5年生存率は54%とされています(日本食道疾患研究会の「全国食道がん登録調査報告」より)。ステージⅡやステージⅢの場合、補助化学療法を術前に受けてから手術をすることで、生存率は飛躍的にアップするとされています。

食道がんでは食事の摂取量が安定するまでは、1か月に1回の診察が必要となり、安定すれば3~6か月に1回の診察となります。

また、手術後に食事摂取量を増やしていくことが課題となり、多くの人が健康時の70%前後の食事を摂ることができるようになるとされています。

食道がんの治療法

内視鏡治療

内視鏡治療には、内視鏡的切除術と、内視鏡的焼灼術があります。食道がん治療ガイドラインでは、リンパ節への転移の可能性が低い、ごく初期(0期)の食道がんが適応となります。

<内視鏡的切除術>
内視鏡的切除術は、食道の内側からがんを切り取る方法です。内視鏡切除術にはさらに、EMR(内視鏡的粘膜切除術)とESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる2つの方法があります。 いずれの治療法も、がんの下側、粘膜下に生理食塩水などを注入し、がんの部分を浮き上がらせて切除する手術です。

● EMR:「スネア」と呼ばれる輪状のワイヤーをがん細胞の根元に引っ掛けるようにし、ワイヤーに熱を加えることで、がんを根元から焼き切る方法
● ESD:がんの周囲に目印をつけ、それよりも少し外側の粘膜から粘膜下層までを、ナイフ状の器械を使って、はぎ取るようにして切除する方法

EMRの方が古くから行われてきましたが、がんが大きくなっている場合には分割切除を行うことになり、がんを取り残してしまったり、再発するリスクがありました。こうしたリスクを回避するためにESDという治療法が開発され、現在はESDによる一括切除も可能となりました。治療法選択の目安としては、1㎝前後の小さな病変に対してはEMRが、それよりも大きながんの場合はESDが選択されることが多いようです。

<内視鏡的焼灼術>
内視鏡的焼灼術は、光や特殊なガスを用いて病変を焼く(焼灼する しょうしゃくする)方法です。内視鏡的焼灼術には、PDT(光線力学的治療)やAPC(アルゴンプラズマガス凝固法)があります。ESDが適応にならないケース(高齢者、合併症が多い、出血しやすい、粘膜下の浸潤が深くて穿孔などのリスクがある、ESD後に狭窄が起こる可能性があるなど)に対して、選択されることがある治療法です。
病変を焼いてしまうため、病変部を病理学的に評価することはできません。

手術(外科療法)

がん病巣を手術で除去する療法で、原発巣だけでなく、他の部位に転移した転移巣も取り除きます。がんそのものを外科手術で除去する局所療法です。がんの治療法として最も基本的な治療法です。

手術としては、胸部から腹部の食道を切除する「食道亜全摘」と、頸部・胸部・腹部のリンパ節を周囲の脂肪組織ごと切除する「リンパ節郭清」、さらに胃を使って再建する「胃管再建」を行うことが基本的な術式となります。

一般的には開腹、開胸にて手術を行うため傷が大きくなりがちですが、近年では開胸は開腹をせずに、腹腔鏡や胸腔鏡などを使用して、小さな傷での治療を行うことも可能です。

また、リンパ節転移がない早期のがんであれば、内視鏡を用いた内視鏡的粘膜切除術 (EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)という術式も選択可能になります。

手術(外科療法)についてもっと詳しく見る

抗がん剤(化学療法)

化学物質(抗がん剤)を利用してがん細胞の増殖を抑え、がん細胞を破壊する治療法です。全身のがん細胞を攻撃・破壊し、体のどこにがん細胞があっても攻撃することができる全身療法です。全身の状態やがんの性質などから、複数の薬を組み合わせることもあれば、単独で用いることもあります。また、放射線治療や手術と組み合わせる時には、状況に合わせて治療の順番を変えることもあります。

食道がんでは、5-FUとシスプラチンの点滴にて化学療法を行いますが、一般的には、化学療法単体ではなく、放射線療法と併行して行う「化学放射線療法」が行われます。

化学療法、放射線療法ともに副作用がみられることがありますが、実際に見られる症状や、症状の強さなどは、人によって異なるとされています。

食道がんの進行がんの場合、手術でも取りきれないがん細胞がある場合や、ある程度進んでしまった食道がん(すでにリンパ節転移のあるステージⅢ以上など)では、手術でがんを切除した後も、別の部位へ転移することがあります。例えば、肺や肝臓、骨などに再発する可能性があります。そのため、食道がんは手術療法だけでなく、治療方針の中に化学療法を加えることで、再発を抑える可能性が示されています。

抗がん剤(化学療法)についてもっと詳しく見る

放射線療法

高エネルギーのX線など、がん細胞に直接あてて、腫瘍の成長を遅らせるために、あるいは縮小させるために放射線を使用する治療法です。がんに侵された臓器の機能と形態の温存が出来ます。

食道がんに対しての治療として行う場合、通常、週5日で6週間など、スケジュールを決めた連日照射を行います。 食道がんにおける放射線治療は、単独で行うよりも、化学療法と同時に行うほうが、効果的であるといわれています。

放射線治療には大きく2つの治療法があり、ひとつはがんを治すことを目的にした根治照射で、もうひとつはがんによる症状を抑えるための緩和照射です。

<根治照射>

がんの広がりが、放射線を当てられる範囲にある場合に、がんの治癒を目指して行われる治療法です。手術で食道を切除した場合と比較すると、食道の温存を図る(目指す)治療であるため、治療後の食生活への影響は少ないとされています。

<緩和照射>

がんの範囲が大きく、がんによる痛みや臓器への圧迫、食道狭窄などの症状を緩和させることを目的として行われる治療法です。一般的には、根治照射よりも短い期間で行われることが多いとされています。

<副作用>

放射線治療にも、副作用の可能性はあります。例えば、
● 放射線皮膚炎:放射線が当たった皮膚が炎症を起こし、かゆみ、ただれなどが生じる
● 放射線食道炎:食道粘膜が炎症を起こしてただれてしまい、食事によりしみる、閊えるなどの症状を生じる
● 放射線肺炎:肺に放射線が当たることで肺炎を起こし、微熱、息切れ、咳などを生じる
などです。特に放射線肺炎は、放射線照射から3か月頃まで肺炎になる可能性があり、高齢者にとっては重篤な状態になることもあります。また、放射線照射から、数か月経過してから起こる副作用もあります。頻度は数%と高くはありませんが、食道穿孔や出血などを起こすことがあります。

放射線療法についてもっと詳しく見る

免疫療法

上記の三大治療法に加えて、免疫療法は近年「第4の治療法」として期待されています。免疫療法は研究が進められていますが、有効性が認められた免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤などの一部に限られています。自由診療で行われている免疫療法には効果が証明されていない免疫療法もありますので、慎重に確認する必要があります。

免疫療法についてもっと詳しく見る

食道がんの先進医療

陽子線治療

通常のX線の放射線治療ではがん局部の周囲の正常な細胞も傷つけてしまいますが、陽子線治療はがん局部だけを照射して周囲の正常な細胞が傷つくことをより抑えることができます。また、痛みもほとんどなく、1日15~30分程度のため、身体への負担が少ない治療です。1日1回、週 3~5回行い、合計4~40回程度繰り返します。

食道がんでの陽子線治療の適応は、手術の適応外あるいは手術拒否例のうち、ステージⅠ~Ⅲに該当する方です。または、術後の再発症例にも、適応となることがあります。陽子線治療も放射線治療の一つですので、化学療法と併用されることが多くなります。

副作用としては、皮膚炎や食道炎などがみられることがあります。

陽子線治療についてもっと詳しく見る

重粒子線治療

陽子線治療と比べて、さらにがん局部を集中的に治療が可能となります。がん細胞の殺傷効果は陽子線治療の2~3倍大きくなります。 進行したがんは低酸素領域がありますが、このようながんでも治療が可能です。また、X線では治療が難しい深部にあるがんの治療も可能です。治療は1日1 回、週3~5回行い、合計1~40回程度繰り返します。平均では3週間程度の治療になります。1回当たり、20~30分程度の治療時間になります。

重粒子線治療についてもっと詳しく見る

食道がんの集学的治療

患者さん個々人のがん種やがんの進行度に応じ、手術治療、放射線治療、化学療法だけでなく、効果が期待される様々な治療を組み合わせて治療を行うことを集学的治療といいます。食道がんへの主な集学的治療について解説します。

外科的手術と抗がん剤(化学療法)の組み合わせ

過去の食道がん治療において、ステージII?IIIの進行がんに対しては、外科的な手術治療のみが標準治療でした。しかし、完全に切除できた例でも再発するケースが多くみられました。手術単独ではなく抗がん剤との組み合わせが研究され、現在では、手術前に抗がん剤治療を行う術前化学療法が標準治療となっています。(ステージII?IIIの患者さんには、手術前にフルオロウラシル+シスプラチン療法を2コース行うことが標準治療です。)

根治を目指した放射線治療と抗がん剤(化学療法)との組み合わせ

根治的化学放射線療法
食道がんの中でも扁平上皮がんと呼ばれるものは、放射線治療の効果が高いことが知られています。
がんの進行具合により異なりますが、多臓器への転移やリンパ節転移がない状態であれば、放射線と抗がん剤を組み合わせて治療することで、がんの縮小効果が期待できます。心臓・肺の機能の状態や年齢などの理由で手術が難しい方などの場合に、手術の替わりとして検討されます。

根治的化学放射線療法は、放射線治療と抗がん剤を用います。例を挙げますと放射線治療を、1日1回、週5回、5週間から6週間、原発巣と呼ばれる食道の腫瘍、転移リンパ節や転移の可能性が予測される周囲のリンパ節に行います。

抗がん剤は、放射線治療の間に、2コース行います。

放射線治療終了後にもがんのステージや患者さんの状態によって追加治療等が行われます。

症状緩和のための抗がん剤(化学療法)と放射線治療との組み合わせ

食道がんの再発や、多臓器(肝臓、肺、遠隔リンパ節など)へ転移がある場合は、体内にある腫瘍のすべてに対して、手術や放射線による排除ができないため、全身療法である化学療法が治療の軸となります。また、進行度によっては、生活の質の低下(食事が食べられない、痛みが激しいなど)があり、日常生活に影響を及ぼすと考えられるときには、原因となっている病巣に対して、「症状緩和を目的」とした放射線治療を行うことがあります。

緩和を目的にするケースの場合で注意すべきことは、体力の低下です。体力の低下によって、抗がん剤や放射線の副作用が以前より強く出たり、免疫能が低下し、抗がん剤や放射線の効果が最大限に引き出せなくなる可能性もあります。

食道がんの再発・転移

転移

食道がんが進行すると、多くのケースでリンパ節と肺、肝臓などの臓器や、骨への転移が見られます。
食道の周りには多くのリンパ節がありますが、食道がんは粘膜から筋層、さらにその外膜まで深く達していくと、周囲のリンパ節へと転移します。また食道は咽頭部(のど)から胃までをつなぐ臓器であるため、のどの周囲や胃周辺のリンパ節へも転移することがあります。例えば、声帯の動きをつかさどる「反回神経周囲リンパ節」や食道のすぐ近くにある「傍食道リンパ節」などは、比較的早い時期からの転移を起こしやすいとされています。この他、「胃周囲リンパ節」や「頸部リンパ節」も、転移しやすいとされるリンパ節です。
さらに、食道の外膜の周囲にある血管から転移すると、血液の流れにのってがん細胞が離れた臓器へと転移しますが(血行性転移)、多くの場合は肺、肝臓、骨に転移するとされています。


再発

再発は、ほとんどが2年以内に起こるとされており、リンパ節、肺、肝臓、骨などへの転移が多いとされています。
食道がんは、再発後の治療が難しい疾患とされており、再発後は、転移の有無や拡がり方、これまでの治療内容や結果、患者さんの全身状態などを総合的に判断して、治療法が検討されます。多くの場合は手術療法の適応にはなりませんが、頸部リンパ節への転移のみであれば、これを切除する手術が行われることがあります。
基本的には、抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療など、症状緩和を目的にした緩和治療が行われます。特に、転移が拡がっている場合や、再発進行食道がんでは、抗がん剤治療も検討されますが、再発食道がんに適した抗がん剤は限られており、現在のところは「完治」が期待できる治療法は確立していません。
しかし、海外では新しい抗がん剤の開発などが進められており、新たな抗がん剤による治療法の開発が期待されています。

参考文献

国立がんセンター 中央病院 食道がんについて
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/esophageal_surgery/030/index.html
東京慈恵医科大学 外科学講座 上部消化管外科 食道癌
http://www.jikeisurgery.jp/diseasegroup/upper-dig/esophagus/esophageal-ca/
愛知県がんセンター中央病院 いろいろながん 食道がん
https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/01shokudo.htmlhtt
がん研有明病院 がんに関する情報 食道がん
http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/esophagus.html
一般社団法人 国際医学情報センター がんinfo 食道がん
https://www.imic.or.jp/library/cancer/010_esophageal.html
国立がん研究センター がん情報サービス 各種がん102 食道がん
https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/odjrh3000000uj16-att/102.pdf
日本癌学会 【公聴会+パブリックコメント意見後】(禁複製) 食道癌診療ガイドライン
https://www.jca.gr.jp/researcher/topics/2016/files/Draft_20160913.pdf
岐阜県総合医療センター 食道がん
http://www.gifu-hp.jp/esophageal_cancer/#point07
京都大学医学部付属病院 消化器外科 食道がんの進行度
https://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/clinic-contents/%E9%A3%9F%E9%81%93%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC/194
大阪医科大学 一般・消化器外科 食道癌の診断と治療
https://www.osaka-med.ac.jp/~sur000/html/service/service01.html

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