更新日:2026/07/30
前立腺がんとは|症状や検査、治療、ステージなど
前立腺がんについて、症状・家族歴と高年齢というリスク要因・PSA検査の利益と過剰診断という不利益・グリーソンスコアとリスク分類・低リスクで検討される監視療法・手術と放射線治療と内分泌療法・治療後の尿失禁や性機能障害・生存率など、さまざまな観点から解説します。
前立腺がんは、日本の男性で最も多く診断されているがんです。
そして、「見つけたらすぐ治療する」とは限らないがんでもあります。この記事では、その理由も含めて、公的機関と学会診療ガイドラインの情報にもとづいて整理します。
前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺の細胞が異常に増殖することにより起こる悪性腫瘍で、多くの場合比較的ゆっくり進行します※1。
重要な特徴があります。進行がゆっくりで、寿命に影響しないと考えられるがんもあるとされています※1。高齢の男性に多く発症します※1。
日本では2023年に102,094例が前立腺がんと診断されました。人口10万人あたりでは168.8です※2。
前立腺がんの症状
早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません※1。
進行すると次の症状がみられることがあります※1。
- 尿が出にくい
- 排尿の回数が多い
- 血尿、排尿痛
- 骨への転移による腰痛
ここは知っておくべき点です。ガイドラインは、発見される前立腺癌の10%前後は診断時に骨転移を伴っているとしています※3。
前立腺がんの原因
がん情報サービスは、前立腺がんのリスクを高める要因として、前立腺がんの家族歴、高年齢が明らかにされていますとしています※1。
そのほかに肥満や喫煙についても研究が進められています※1。
前立腺がんの予防
前立腺がんについて、確立した予防法は示されていません。明らかにされているリスク要因が家族歴と高年齢という、自分では変えられないものであるためです※1。
そのため、対策の中心は早期に見つけることになります。ただし後述するとおり、検査を受けることには利益と不利益の両方があります※3。
前立腺がんの検査と診断
行われる検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| PSA検査 | 血液検査。前立腺がんの発見の入口になる※1 |
| 直腸診 | 直腸から前立腺を触って調べる※1 |
| MRI検査・CT検査 | 広がりを調べる※1 |
| 骨シンチグラフィ | 骨への転移を調べる※1 |
| 経直腸エコーを用いた前立腺生検 | 確定診断のために行う※1 |
PSA検査の利益と不利益
ここが前立腺がんで最も重要な論点です。
ガイドラインは次のように述べています※3。
「がん検診の導入にあたり、死亡率低下効果という最も重要な利益が明らかになったPSA検査を用いた前立腺がん検診ではあるが、一方でその死亡率低下の過程において過剰診断、過剰治療や治療によるQOLの低下によって不利益を受ける可能性もある」※3
つまりPSA検査には、死亡を減らす効果が示されている一方で、治療しなくてよかったがんを見つけて治療してしまう(過剰診断・過剰治療)という不利益もあるということです。
ガイドラインは、それらの不利益は、(PSA)監視療法やQOLを考慮に入れた低侵襲的治療の進歩、新しいバイオマーカーの臨床応用等により、より不利益が少なくなり、利益が大きくなる方向で進化することが期待されているとしつつ、現時点での検診の受診による利益と不利益を正しく啓発したうえで、受診希望者に対して最適な前立腺がん検診システムを提供することが重要であるとしています※3。
PSA検査を受けるかどうかは、この両面を知ったうえで決めるべきことです。なお、前立腺がん検診は国の指針にもとづき市区町村が実施する5種類のがん検診(胃・大腸・肺・乳・子宮頸)には含まれていません※4。
前立腺がんの病期(ステージ)
病期にはTNM分類が用いられます※1。
あわせて、グリーソンスコア(パターン3〜5)により悪性度を判定し、超低リスク、低リスク、中間リスク、高リスクに分類されます※1。
前立腺がんは「病期」だけでなく「リスク分類」で治療が決まるのが特徴です。次の治療の項につながります。
前立腺がんの生存率・予後
前立腺がんの5年相対生存率は95.7%です。2018年に診断された方についての、全国がん登録生存率データによる数値です※2。
参考として、死亡数は2024年で13,670人でした(人口動態統計死亡データ)※2。
この数字を読むときは、次の点にご注意ください。
- 病期別の数値は、一般向けの統計としては公表されていません。がん情報サービスは病期別・経過年数別に異なるとするにとどめています※1。ご自身の見通しは主治医にお尋ねください
- 集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません
- 2018年に診断された方のデータであり、その後に登場した治療の効果は反映されていません
前立腺がんの治療法
がん情報サービスは、治療の選択肢として監視療法、手術(前立腺全摘除術)、放射線治療(外照射療法・組織内照射療法)、内分泌療法(ホルモン療法)を挙げています※1。
監視療法 ― すぐに治療しないという選択
ほかのがんではあまり見られない選択肢です。
ガイドラインは、低リスク限局性前立腺癌に対しては、制癌効果と治療毒性のバランスを鑑み、監視療法・待機療法やfocal therapyといった根治的治療以外の治療介入の可能性が議論されているとしています※3。
つまり低リスクの場合、すぐに手術や放射線治療をせず、定期的に検査をしながら経過をみるという選択肢があるということです。過剰治療を避けるための考え方です。
手術(外科療法)
前立腺全摘除術が行われます※1。
放射線療法
外照射療法と組織内照射療法(小線源治療)があります※1。放射線治療全般については放射線療法とはをご覧ください。
内分泌療法(ホルモン療法)
前立腺がんの治療の柱の一つです※1。副作用については後述します。
抗がん剤(化学療法)
薬物療法については抗がん剤一覧をご覧ください。
陽子線治療・重粒子線治療
重粒子線治療では局所前立腺がん・局所進行前立腺がんが保険適用疾患とされています※5。
ただし、これはすべての前立腺がんが対象になるという意味ではありません。適応があるかは主治医・治療施設にご確認ください。詳しくは陽子線治療と重粒子線治療をご覧ください。
治療後に起こること
治療の選択にあたって、あらかじめ知っておくべき点です。
| 治療 | 主な合併症・副作用 |
|---|---|
| 手術 | 尿失禁、性機能障害※1 |
| ホルモン療法 | ホットフラッシュ、性機能障害、乳房の症状、骨密度低下※1 |
前立腺がんは生存率が高い一方で、治療の影響が生活の質に長く関わります。だからこそ、低リスクでは監視療法という選択肢が検討されます。
前立腺がんの再発・転移
治療後は定期的に通院して経過をみます。PSAの値が、治療後の経過をみる指標になります。
骨への転移が起こることがあり、腰痛などの症状としてあらわれることがあります※1。診断時に骨シンチグラフィで調べるのはこのためです※1。
再発・転移の仕組みについてはがんの再発と転移はなぜ起こる?、療養中のつらさについては緩和ケアもあわせてご覧ください。
本記事は2026年7月30日時点の公的機関の情報および学会診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。検査を受けるかどうか、治療をどう選ぶかについては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 前立腺」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン「前立腺がん」(日本泌尿器科学会『前立腺癌診療ガイドライン』)(最終確認日: 2026年7月30日)
- 厚生労働省「がん検診」(最終確認日: 2026年7月30日)
- QST病院(量子科学技術研究開発機構)「重粒子線治療が適応となる疾患」(最終確認日: 2026年7月30日)


















