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更新日:2026/08/08

がんと運動について

「治療中でも体を動かしていいのか」「どんな運動なら安全なのか」——そうした疑問を抱えながら過ごしている方は多いことと思います。がんと診断された後の運動は、やみくもに制限すべきものでも、気にせず続けてよいものでもありません。体の状態にあわせて、医療チームと相談しながら取り組むことが大切です。

この記事では、がんと運動の関係について国立がん研究センター がん情報サービスをはじめとする一次情報をもとに整理します。がん種別の注意点や、主治医に相談すべき状況も合わせてご確認ください。

この記事でわかること

  • がん治療中・治療後に運動を続けることで期待できること
  • 乳がん術後・悪性リンパ腫・骨転移・リンパ浮腫それぞれで異なる運動の考え方
  • 身体活動と大腸がん・乳がんのリスク低下の関係(評価レベルとその限界)
  • 運動の目安(頻度・強度・種目)とがん患者への適用の注意点
  • 運動を始める前に必ず主治医に相談すべき状況

適度な運動

がんと診断された後、できる範囲で体を動かし続けることは、治療に伴う身体機能の低下を防ぎ、疲れにくい体を維持することにつながると報告されています※1。がんリハビリテーション医療では、「運動をすることによって身体機能が高まるため、動いてもエネルギーをそれほど消費しなくなり、疲れにくくなります。また、すっきりした気分になり、精神的苦痛も軽減されて毎日が快適になることが期待できます」と記されています※1。

一方、過度な運動は体に余分な負担をかけることがあります。体調が優れないとき、治療の副作用が強い時期に無理に運動しようとすると、かえって回復の妨げになることがあります。「少し物足りないくらいから始めて、無理をせずに自分のペースで」という考え方が、がんリハビリテーションの基本とされています※1。

どのような運動をどの程度行うかは、病状・治療段階・体力によって大きく異なります。「動いたほうがいいとは聞いたけれど、どこまでやっていいのかわからない」と感じたときは、担当医やリハビリテーション科のスタッフに相談する選択肢があります※1。詳しくはがん患者とリハビリテーションもご覧ください。

治療中/治療後

運動をどのように行うかは、症状や治療の内容によって一人ひとり異なります。安静が必要な時期には無理に体を動かさないことが大切ですが、可能な状態になったら少しずつ体を動かし始めることが、治療に耐えられる体づくりにつながるとされています※1。

がん関連倦怠感(だるさ)に対しては、ウォーキングやヨガ・体操などの有酸素運動が倦怠感を軽くするために効果的であるといわれています※2。ストレッチについても、全身の血液やリンパ液の流れをよくして倦怠感を軽くするのに役立つとされています※2。倦怠感とどう向き合うかについては、がん治療の副作用と合併症もあわせてご参照ください。

がん治療中や治療後に運動を始める際は、自分にとってどのような方法が良いか、適切な回数はどのくらいかについて、担当医や医療スタッフに確認することが大切です※1。貧血や感染などで体調がすぐれない時期は無理をせず、体調が許す範囲で行うことが勧められています※2。骨転移がある場合など、運動によって体に負担やリスクが生じうる状況では、運動の種類や強度について、始める前に必ず担当医に相談してください。

がん治療中・治療後に運動を始める前の確認の流れ。体調の確認、気になる症状や持病の有無、担当医への相談、無理のない範囲での開始、という4段階を示す概念図
運動を始める前に確認すべき状況の目安。どのケースでも担当医・医療スタッフへの相談が出発点です。

乳がん術後の運動

乳がんの手術後は、手術した側の腕や肩が動かしにくくなることがあります。術後早期(おおむね1週間程度)から、手術した側の手や腕・肩関節が動く範囲や、傷のひきつれ感・痛みを確認しながら、状態に合わせた運動を開始するのがよいといわれています※3。バンザイをする・肘の曲げ伸ばし・手でグーとパーを繰り返すなどの運動を、ゆっくりとした動作で行うことが挙げられています※3。

術後1カ月程度は激しい運動を控え、ウォーキング程度の軽い運動から始めることが勧められています※3。具体的な運動の開始時期や内容は、担当医に相談のうえ決めてください。

悪性リンパ腫と運動

悪性リンパ腫(リンパ球や白血球から発生するがん)では、化学療法や放射線療法を受けている間、体力の低下や感染リスクへの注意が必要です※4。治療中は感染リスクの状態に応じて運動内容を担当医と相談することが重要です。体の状態が比較的安定している時期には、負担の少ない柔軟運動やウォーキングなどの有酸素運動が選択肢になるとされています※1。どのような運動が自分に適しているかは、担当医やリハビリスタッフに確認してください。詳しくは悪性リンパ腫のページもご覧ください。

骨転移がある場合

骨転移(がんが骨に広がった状態)がある場合、骨折リスクへの配慮が特に重要とされます。運動や歩行の内容、転倒を防ぐ工夫については、始める前に必ず担当医やリハビリテーションスタッフに相談してください。骨転移がある方が運動を行う際の具体的な注意点や活動できる範囲は、骨転移の部位や程度によって異なるため、自己判断で始めないことが大切です。

リンパ浮腫がある場合

リンパ浮腫(リンパ液の流れが滞ることで起きるむくみ)がある場合は、弾性着衣や弾性包帯で患部を圧迫した状態での運動療法(圧迫下の運動療法)が有効とされています※5。筋力トレーニングや有酸素運動によってむくみが軽減することが分かってきているとされています※5。一方、急に激しい運動を始めたり、リンパ浮腫を起こしている皮膚に強い刺激が加わるような運動は、症状を悪化させる恐れがあると記されています※6。どのような運動がよいかは、医師や看護師などの医療者に相談することが勧められています※6。リンパ浮腫の詳しい説明はリンパ浮腫とはをご覧ください。

大腸がん術後の運動

大腸がん(結腸がん・直腸がん)の手術後は、術後1〜3カ月程度を目安に手術前の日常生活が送れるよう、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動から始めて、こまめに体を動かすことが勧められています※7。ただし、腹筋を使う激しい運動は数カ月間控えることが記されています※7。

予防としての運動

身体活動の多い生活習慣は、がんの発症リスクの低下と関連することが研究から示されています。国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防法」には、「仕事や運動などで体を動かすことが多い人ほど、がん全体の発生リスクが低くなります」と記されており、身体活動とがんリスクの関係について以下のように評価されています※8。

表: 身体活動とがんリスク低下の評価(がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防法」をもとに作成)※8
がん種 評価
大腸がん 身体活動によってリスクがほぼ確実に減少する
乳がん リスクが減少する可能性がある

「ほぼ確実に減少」とは、現時点の研究のエビデンスの評価を示す表現であり、身体活動によって大腸がんが100%予防できることを意味するものではありません。また、このデータは大腸がん・乳がんについて示されたものであり、すべてのがん種に同様の評価が確認されているわけではありません。

また、がん情報サービスでは禁煙・節酒・食生活・身体活動・適正体重・感染対策の6つの生活習慣が「がん予防の観点から実践が勧められる」とされており、身体活動はその一つに位置づけられています※8。身体活動だけでなく生活習慣全体でのアプローチが大切です。詳しくはがん予防12か条もご覧ください。

一般成人向けとがん治療中・治療後の推奨運動量(有酸素運動・筋力トレーニング)を比較した表の概念図
一般成人向けの身体活動目安とがん治療中・治療後の参考値の比較。がん患者の場合は体調・治療段階に応じて調整が必要です。

運動の内容

国立がん研究センター がん情報サービス「がんとリハビリテーション医療」では、化学療法・放射線治療中の患者さんへの運動プログラムの目安として、「週150分以上の中等度の有酸素運動と週2〜3日(1日おき)の上半身・下半身の大きな筋肉を中心とした筋力トレーニングとストレッチ」が挙げられています※1。中等度の有酸素運動の例としては、早足散歩や自転車エルゴメーターが示されており、強度の目安は「ややきつい」と感じる自覚的運動強度とされています※1。

ただし、これは「体調をみながら、少し物足りないくらいから始めて、無理をせずに自分のペースで」という前置きのもとに示されている参考値です※1。がん患者さんにとって適切な運動量は、病状・体力・治療の段階によって異なります。まず担当医やリハビリスタッフに相談し、自分の体に合った範囲から始めることが大切です。

一般成人向けの身体活動の目安(厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」)として、歩行等を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日が示されています※9。ただし、これらの数値はがん患者向けではなく健康な一般成人を対象とした推奨値です。がん治療中の方やがん経験者の方が、これを目標とする際には病状・体力に応じた調整が必要であり、始める前に担当医に相談してください。

運動の種目としては、ウォーキング・ヨガ・体操などの有酸素運動や、ストレッチが挙げられています※2。過度な運動ではなく、体調に合わせて継続できるものを選ぶことが重要です。食事や栄養も運動の効果を支える大切な要素です。詳しくはがんと食事・栄養についてもあわせてご確認ください。

よくある質問

Q. がん治療中でも運動してよいですか?
体の状態が許す範囲で、ウォーキングやヨガ・体操などの軽い有酸素運動やストレッチを行うことは、倦怠感を軽くするために効果的であるといわれています※2。ただし、骨転移がある場合、貧血・血小板減少が強い場合、感染リスクが高い時期などは、まず担当医に相談することが大切です。どのような運動をどの程度行えるかは、個々の状態によって異なります※1。
Q. 運動を始める前に主治医に確認が必要な状況はどんなときですか?
骨転移がある場合、貧血や血小板減少がある場合、化学療法・放射線療法の治療中で体調が不安定な場合、強い倦怠感・発熱・息切れがある場合は、必ず担当医や医療スタッフに相談してから運動を始めてください※1※2※6。「どのような方法が良いか、適切な回数はどのくらいか」をチームに確認することが勧められています※1。
Q. リンパ浮腫がある場合、運動はできますか?
リンパ浮腫があっても、必ずしもスポーツを控える必要はないとされています※6。弾性着衣や弾性包帯で圧迫した状態での運動療法が有効とされていますが、急に激しい運動を始めることや皮膚への強い接触刺激のある運動は症状を悪化させる恐れがあります※5※6。どのような運動がよいかは、医師や看護師など医療者に相談することが勧められています※6。
Q. 運動ですべてのがんが予防できますか?
現在、がん情報サービスでT1根拠が確認できているのは、大腸がん(「ほぼ確実に減少」)と乳がん(「減少する可能性がある」)についての評価です※8。身体活動がすべてのがんの予防に等しく有効であるという評価は、現時点では確認されていません。また「ほぼ確実に減少」とは、現時点のエビデンスの評価であり、確実に予防できることを意味するものではありません。
Q. 術後はいつから運動を始めればよいですか?
術式やがん種によって異なります。乳がん術後では術後早期〜1週間程度から、状態に合わせた運動を開始するのがよいといわれており、術後1カ月は激しい運動を控えることが勧められています※3。大腸がん術後では術後1〜3カ月を目安にウォーキングなど軽い運動から始めることが示されています※7。いずれも担当医の指示にしたがって開始時期を確認してください。

本記事は2026年8月9日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。

参考資料

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「がんとリハビリテーション医療」(最終確認日: 2026年8月9日)
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「倦怠感(だるさ)」(最終確認日: 2026年8月9日)
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」(最終確認日: 2026年8月9日)
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「悪性リンパ腫」(最終確認日: 2026年8月9日)
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ浮腫」(最終確認日: 2026年8月9日)
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ浮腫Q&A」(最終確認日: 2026年8月9日)
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)療養」(最終確認日: 2026年8月9日)
  8. 国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防法」(最終確認日: 2026年8月9日)
  9. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版推奨シート(最終確認日: 2026年8月9日)

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