更新日:2026/08/01
併用療法とは
この記事でわかること
- なぜ複数の薬を組み合わせて治療するのか(多剤併用の考え方)
- 「レジメン」とは何か
- 放射線治療や手術と薬物療法を組み合わせる目的
- 分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の位置づけ
- 副作用の管理と費用負担を軽くする制度
併用療法とは
薬物療法は、薬を使ってがんの治癒や症状の改善を目指す治療法です※1。全身に作用することが特徴で、手術・放射線治療と並ぶ主要な治療の柱として位置づけられています。
薬物療法のなかには、複数の薬を組み合わせて行う「併用療法」があります。使う薬は細胞障害性抗がん薬(いわゆる抗がん剤)だけにとどまらず、分子標的薬・内分泌療法薬・免疫チェックポイント阻害薬という4種類が薬物療法に分類されます※1。組み合わせの内容は、がんの種類や患者さんの状態によって異なります。
なぜ複数の薬を組み合わせるのか
細胞障害性抗がん薬による治療では、「作用の仕組みの異なる何種類かの薬を組み合わせて治療することもある」とされています※1。この考え方の背景には、薬ごとにがん細胞へ働きかける仕組みが異なることがあります。
複数の薬を組み合わせる方法は、急性の白血病や悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍、絨毛がんなど、薬物療法の治療効果が特に高いとされているがんの治療で活用されています※1。どの薬をどのように組み合わせるかは、診療ガイドラインや患者さんの状態をふまえながら、主治医と薬剤師が相談して決めます。
レジメンという考え方
薬物療法の治療計画は「レジメン」と呼ばれます。レジメンとは、薬剤の用量・用法・治療期間などを明記した薬物療法の治療計画のことです※1。
レジメンは、医師と薬剤師が診療ガイドラインをもとに、がんの種類と患者さんの状態に合わせて作成します※1。「どの薬を」「どのくらいの量で」「いつ・どのくらいの期間投与するか」が細かく定められており、同じ病院内でも複数の専門家が確認し合う仕組みになっています。
主治医からレジメンの説明を受けたときは、使う薬の種類・投与のスケジュール・予想される副作用について確認しておくと、治療中に気をつけるべきことが明確になります。
放射線・手術と組み合わせる治療
薬物療法は、放射線治療や手術と組み合わせることもあります。組み合わせ方によって目的が異なります。
化学放射線療法(薬物療法+放射線治療)
薬物療法と放射線治療を同時に行う方法を「化学放射線療法」といいます。「両者を組み合わせることで、放射線をあてた部分の治療効果を高め、全身に対する薬物療法の治療効果と合わせて、治癒の可能性を高める」ことを目指します※1。この組み合わせは、標準治療となっている場合にのみ行われます※1。
放射線療法の詳細については、放射線療法とはをあわせてご覧ください。
術前・術後の薬物療法(集学的治療)
薬物療法は手術と組み合わせる「集学的治療(しゅうがくてきちりょう。複数の治療法を組み合わせてがんに対抗する考え方)」としても活用されます※1。
| タイミング | 主な目的 |
|---|---|
| 術前(手術の前) | 転移・再発のリスクを下げる。薬で腫瘍を小さくして手術できるようにする、または切除範囲を小さくする |
| 術後(手術の後) | がんの再発を予防する。肉眼では確認できない小さながん細胞が体内に残っている可能性に対応する |
集学的治療については、集学的治療の記事でより詳しく解説しています。また、治療法全体の種類と関係性についてはがんの治療方法についてをご参照ください。
分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の位置づけ
近年の薬物療法では、細胞障害性抗がん薬のほかに分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬が、すでに標準治療の枠組みに組み込まれています※1。
分子標的薬は「がんの発生や増殖に関わるタンパク質などのさまざまな分子を標的として、その機能を抑えることでがんを攻撃する薬」と定義されています※1。細胞障害性抗がん薬とは異なる仕組みで働くため、それぞれ異なる副作用が生じることがあります。主な副作用として「皮膚障害や高血圧、間質性肺炎、タンパク尿などさまざま」であることが知られています※1。
免疫チェックポイント阻害薬は「がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外して、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬」とされています※1。免疫反応はがんのない部位でも強くなることがあり、副作用の時期や症状・場所の予測は困難とされています※1。
どの薬を使うか、あるいは組み合わせるかは、がんの種類と患者さんの状態、診療ガイドラインの推奨に基づいて主治医が判断します。
併用療法を受けるうえで知っておきたいこと
副作用と支持療法
複数の薬を使う治療では、それぞれの薬に由来する副作用が生じる可能性があります。副作用の出方には個人差があり、「症状の出る時期や強さなどは人によって異なります」とされています※1。
副作用に対しては「支持療法(がんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症の予防や治療、ケアのこと)」が同時に行われます※1。吐き気や嘔吐に対する制吐剤の使用、口内炎に対する口腔ケア、皮膚や爪のトラブルに対するケアなどが代表的な支持療法です※1。副作用の詳しい情報はがん治療の副作用と合併症もご参照ください。
また、薬の相互作用にも注意が必要です。「別の薬や特定の食べ物や飲み物と一緒に飲むと、互いに作用して、薬の効果が弱くなったり、逆に強くなったりすることがある」とされています※1。市販薬やサプリメントを使用する場合は、事前に主治医・薬剤師に相談することが大切です。
薬物療法で生じる吐き気・嘔吐の管理については、日本癌治療学会が「制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版」を発行しており、Mindsガイドラインライブラリに収載されています※2。主治医はこのガイドラインに基づいた制吐療法を選択します。
費用と高額療養費制度
複数の薬を使う治療では、使用する薬の数や期間に応じて費用がかかります。ただし、「高額療養費制度」によって、ひと月(月の1日〜末日)の医療費の自己負担に上限額が設けられています※3。上限額は年齢と所得に応じて定められており、上限を超えた分は後から支給されます(または「限度額適用認定証」を提示することで窓口負担をあらかじめ上限額内に抑えることもできます)※3※4。
また、直近12か月のうち3か月以上高額療養費に該当した場合、4か月目以降は上限額がさらに軽減される「多数回該当」の仕組みもあります※4。費用に不安がある場合は、医療機関のソーシャルワーカーや医療相談窓口にご相談ください。詳しくはがんの治療費の記事をご覧ください。
よくある質問
- Q. 「レジメン」は自分で変更できますか?
- レジメンは医師・薬剤師が診療ガイドラインと患者さんの状態をもとに作成する計画です※1。自己判断で薬の量や回数を変えることは、治療効果や安全性に影響する可能性があるため、変更を希望する場合は必ず主治医に相談してください。
- Q. 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は誰でも使えますか?
- 使用できるかどうかは、がんの種類・遺伝子変異・患者さんの全身状態などによって異なります。使用前に検査(遺伝子検査など)が必要な薬もあります。主治医と相談して判断します。
- Q. 副作用が心配です。治療を続けながら管理できますか?
- 支持療法(制吐剤・口腔ケアなど)を組み合わせることで、副作用を管理しながら治療を続けられる体制が整えられています※1。副作用の出方は個人差があるため、気になる症状があれば担当医・看護師に早めに伝えることが大切です。
- Q. 市販薬やサプリメントを飲んでいても大丈夫ですか?
- 薬の相互作用が生じる可能性があります※1。必ず治療前に主治医・薬剤師に申告し、指示を仰いでください。
本記事は2026年8月2日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(最終確認日: 2026年8月2日)
- Mindsガイドラインライブラリ「制吐薬適正使用ガイドライン 第3版(日本癌治療学会、2023年10月改訂)」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「医療費の負担を軽くする公的制度」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(最終確認日: 2026年8月2日)





















