更新日:2026/08/22
集学的治療
この記事でわかること
- 集学的治療の定義(手術・放射線治療・薬物療法・支持療法・緩和ケアの組み合わせ)
- 標準治療としての免疫療法=免疫チェックポイント阻害薬とは何か
- キャンサーボードと多職種チームがどのように治療方針を決めるか
- がん診療連携拠点病院の役割と施設数(2026年4月現在)
- 主治医に確認しておきたいポイント
集学的治療”には、多くの専門家が関わっている
手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせて治療することを集学的治療といいます※1。がんの種類やステージなどによってさまざまな組み合わせが実施され、個別の状況に合った効果が得られることが分かっているとされています※1。
治療方針は、ステージや組織型に基づいた標準治療を基盤としながら、患者さんの希望・生活環境・身体状態を総合的に検討して決定されます※1。
がん治療の3つの柱と支持療法・緩和ケア
集学的治療を構成する主な要素は以下のとおりです※1。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 手術療法 | がんやその周辺組織を切除する治療。内視鏡を用いた切除術も含む |
| 放射線治療 | 放射線をがん細胞に照射して細胞を破壊・縮小させる治療 |
| 薬物療法 | 細胞障害性抗がん薬(化学療法)・内分泌療法(ホルモン療法)・分子標的療法・免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)などに分類される※2 |
| 支持療法 | がんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症の予防、治療、ケア※3。療養生活の質(QOL)を維持・向上させることを目的とする |
| 緩和ケア | がんに伴う心と体のつらさを和らげ、自分らしく過ごせるようにするための治療※4。がんと診断されたときから始まる |
薬物療法の一分類としての免疫療法
薬物療法は、使用する薬の種類によって「化学療法(細胞障害性抗がん薬)」「内分泌療法(ホルモン療法)」「分子標的療法」「免疫療法」などに分類されます※2。このうち標準治療として保険診療で使用できる免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬を指します※5。
免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞が免疫細胞(T細胞)にかけた「ブレーキ」を外すことで、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬です※2。詳しくは当サイトの免疫チェックポイント阻害剤(nivolmab:商品名 オプジーボ®)もあわせてご覧ください。
なお、がん情報サービスは「効果が証明されていない免疫療法」として、一部のクリニックや病院が自由診療として行うがんペプチドワクチン・樹状細胞ワクチンを使うがんワクチン療法などについて、「医療として確立されたものではなく、かつ保険診療で受けることができない」と注意喚起しています※6。こうした自由診療を検討する場合は、必ず担当の主治医にご相談ください。
集学的治療に関わる多職種
1人の患者さんに対して、複数の職種が連携しながらがん治療を進めていくことが集学的治療の特徴です。がん情報サービスが明示している関係職種には、以下が含まれます※1。
- 治療担当医: 手術・放射線治療・薬物療法・病理診断・緩和ケアなどを専門とする複数の医師
- 看護師・薬剤師: 治療の副作用管理・服薬指導・日常ケアを担う
- 社会福祉士(医療ソーシャルワーカー): 治療費の相談、退院後の生活・社会復帰の支援
- 管理栄養士: 治療前後の栄養管理・食事指導
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士: リハビリテーション医療を担う職種※7
- 歯科医師・歯科衛生士: 口腔ケアによる感染予防・治療前後の口腔管理
- 公認心理師・臨床心理士: 心理的サポート
- 緩和ケアチーム: 診断初期から痛みや不安を和らげる専門チーム
がんの種類や病期(ステージ)、患者さんの年齢・生活環境・家族構成などの違いにより、関わる専門家の構成は変わります※1。また、在宅でのケアが必要になれば、訪問看護師や介護支援専門員(ケアマネージャー)が加わることもあります。
仕事を続けながら治療を受ける際のサポートについては、仕事とがん治療のページもご参照ください。
“集学的治療”の実際を見てみると…
集学的治療は、診断から治療、そして療養支援まで、複数の工程を専門家チームが担います。ここでは、どのような流れで進むかを一般的な形で説明します。がんの種類や病院によって流れは異なります。
診断の段階
がんの種類や病期(ステージ。がんの広がりの程度を示す分類)を明らかにするために、病理検査や画像検査などの複数の検査が行われます。これらの診断を担う病理医・検査部門のスタッフは、患者さんと直接顔を合わせる場面は限られていますが、治療方針を決める重要な役割を果たしています※1。
治療方針の決定―キャンサーボード
治療の選択肢が複数ある場合、各専門医がカンファレンス(会議)を開いて検討します。必要に応じて薬剤師や看護師も参加し、最適な治療の組み合わせを判断します※1。
こうした多診療科・多職種によるカンファレンスは、キャンサーボードと呼ばれます。手術・放射線治療・薬物療法・病理診断・緩和ケアなどを専門とする医師が集まり、患者さんの症状や状態、治療方針を多角的に検討する会議で、薬剤師・看護師などが加わることもあります。がん診療連携拠点病院では、キャンサーボードを月1回以上開催することが国の指定要件となっています※8。
治療と並行する支持療法・緩和ケア
抗がん治療の実施と並行して、支持療法と緩和ケアが提供されます。支持療法では、吐き気・しびれ・倦怠感などへの薬剤投与、輸血、感染予防、口腔・スキンケア、リハビリテーション、栄養管理などが行われます※3。緩和ケアは、がんと診断されたときから始まり、入院・外来・在宅のいずれの場でも受けることができます※4。詳しくは緩和医療とはもご覧ください。
退院後・療養中の支援
治療後の生活支援・社会復帰に向けた相談は、医療ソーシャルワーカーや緩和ケアチームが担います。費用・就労・在宅ケアなど幅広い相談に応じる体制が整えられています。
“集学的治療”のメリットとは
集学的治療のメリットは、その患者さんの状況に合った治療方針を、多くの専門家がひとつのチームとなって検討できることにあります。単に複数の治療法を試すことではなく、さまざまな職種の専門家が一堂に集まり、その時点でその患者さんにとってより適切と考えられる方針を多角的に検討するという過程が重要です※1。
また、定期的に治療の効果を評価し、評価結果に応じて以降の治療方針を見直すことも集学的治療の特徴のひとつです※1。病気の状態や患者さんの体調・希望は変わることがあるため、その都度チームで再検討することで、よりその人の状況に沿った対応が可能になると考えられています。
がんにおける複数の治療法の組み合わせについては、併用療法とはのページでもあわせて解説しています。
なお、どの方法が最良かは患者さんの病気の状態・全身状態・生活背景によって異なります。「〇〇の治療がよい」と一概に言えるものではなく、具体的な判断は主治医と相談して行っていただく必要があります。
“集学的治療”に関する、日本の現状と課題
集学的治療を適切に提供するためには、さまざまな職種の専門家が協力する体制と、それを支える制度が必要です。日本では、がん診療連携拠点病院という制度を通じて、こうした体制を整備しています。
がん診療連携拠点病院とは
がん診療連携拠点病院は、国が定める指定要件を踏まえて都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が指定する病院です※9。「専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の整備、患者・住民への相談支援や情報提供」などの役割を担うとされています※9。
指定要件には、集学的治療の提供と、キャンサーボードを月1回以上開催することが含まれており※8、これにより多職種が連携して治療方針を検討する体制が制度として担保されています。
施設数(2026年4月現在)
令和8年(2026年)4月1日現在、以下の施設が指定されています※9。
| 種別 | 施設数 |
|---|---|
| 都道府県がん診療連携拠点病院 | 51施設 |
| 地域がん診療連携拠点病院 | 357施設(特例型11施設を含む) |
| 特定領域がん診療連携拠点病院 | 1施設 |
| 地域がん診療病院 | 59施設 |
全国の拠点病院・拠点病院に準じる施設は、がん情報サービスの病院検索機能から確認できます。受診や転院を検討する際は、主治医に相談のうえご活用ください。
どこで集学的治療を受けるか
現在の日本では、多くの専門家が集まった集学的治療を受けやすいのは、一定規模以上の病院であることが多い状況です。集学的治療の提供体制については、病院によって異なるため、担当医療機関に確認することをおすすめします。
がんの治療方法全般については、がんの治療方法についてのページで詳しく解説しています。
よくある質問
- 集学的治療と標準治療はどう違いますか?
- 標準治療とは、科学的な根拠(エビデンス)にもとづき現在利用できる標準的な治療として推奨される治療法です。集学的治療は、その標準治療を基盤としながら、手術・放射線治療・薬物療法などを組み合わせ、多職種チームで進める体制・考え方を指します。矛盾するものではなく、標準治療の枠組みのなかで実施されます。
- 免疫療法はどこで受けられますか?
- 標準治療としての免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)は、各がん種への適応があれば保険診療で受けることができます。適応の有無・実施できる施設については主治医にご確認ください。一方、一部のクリニックが自由診療として提供する免疫療法(がんペプチドワクチン・樹状細胞ワクチンなど)は、医療として確立されておらず保険診療で受けることができないとがん情報サービスは注意喚起しています※6。
- キャンサーボードとはどういうものですか?
- 複数の診療科の医師や薬剤師・看護師などが集まり、患者さんの状態と治療方針を多角的に検討する会議です※8。がん診療連携拠点病院では月1回以上の開催が義務づけられており、自分がキャンサーボードで検討されているかどうかは、担当医に確認することができます。
- 緩和ケアはがんが進行してから受けるものですか?
- いいえ。緩和ケアはがんと診断されたときから始まります※4。抗がん治療と並行して、痛みや不安などのつらさを和らげることを目的とするもので、早期から受けることが推奨されています。
本記事は2026年8月2日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「集学的治療」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「支持療法」(用語集)(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がんとリハビリテーション医療」(最終確認日: 2026年8月2日)
- 厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」(第22回 令和5年1月19日 資料1)(最終確認日: 2026年8月23日)
- 厚生労働省「がん診療連携拠点病院について」(最終確認日: 2026年8月2日)





















