更新日:2026/08/19
PET-CT検査
PET-CT検査は、がんの広がりや再発を調べるのに有用な検査です。ただし「どんながんでも写る検査」ではありませんし、「疑いの段階で受けられる保険検査」でもありません。
この記事では、わかること・わからないこと・保険が使える条件を、公的機関と学会診療ガイドラインの情報にもとづいて整理します。
PET-CT検査とは?
PET検査は、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を使って行う検査です。静脈からFDGを注射し、細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を、放射性フッ素を目印に画像にします※1。
がん細胞は通常の細胞より多くのブドウ糖を取り込む性質があるため、たくさんのブドウ糖が集まるところには、がんがある可能性が高いと考えられます※1。
仕組みをもう一段詳しく見ると、FDGはグルコーストランスポータにより細胞内に取り込まれ、ヘキソキナーゼによりリン酸化されるため、リン酸化されると代謝が止まり、細胞内に蓄積します※2。多くの悪性腫瘍ではこれらの酵素の活性が高いため、FDGが高く集積します※2。
PET-CT検査とPET検査の関係
PET検査とCT検査の画像を重ね合わせることで、がんの有無、位置や広がりを高い精度で診断することができます※1。
日本核医学会のガイドラインは、PET単独では認識・評価が難しいような異常集積も、同時に撮像したCTの情報が加えられることにより診断が確定する場合があるなど、PETとCTをそれぞれ単独で施行した場合にくらべ、診断能の向上が得られると報告されているとしています※2。
なお同ガイドラインは、PET専用機による検査とPET/CT装置による検査をあわせてPET検査と呼んでいるが、保険適用のうえでは両者が別扱いになっていると注意を促しています※2。
PET-CT検査のメリット:わかること
検査は治療前にがんの有無や広がり・他の臓器への転移がないかを調べる、治療の効果を判定する、治療後に再発がないか確認するなど、さまざまな目的で行われます※1。
日本核医学会のガイドラインは、悪性腫瘍で保険診療の対象となる具体的な場面を次のように挙げています※2。
- 治療前の病期診断
- 二段階治療を施行中の患者において、第一段階治療完了後の第二段階治療方針決定のための病期診断(術前化学療法後、術前化学放射線治療後の病期診断など)
- 転移・再発を疑う臨床的徴候、検査所見がある場合の診断
- 手術、放射線治療などによる変形や瘢痕などのため、他の方法では再発の有無が確認困難な場合
- 治療が有効と思われるにもかかわらず他の画像診断等で腫瘤が残存しており、腫瘍が残存しているのか、肉芽・線維などの非腫瘍組織による残存腫瘤なのかを鑑別する必要がある場合
- 悪性リンパ腫の治療効果判定
4番目と5番目は、PET-CT検査がとくに力を発揮する場面です。手術や放射線治療のあとに残った「かたまり」が、がんなのか治療のあとなのかは、形を見るCTやMRIだけでは判断が難しいことがあります。
PET-CT検査のデメリット
PET-CT検査で写らないもの・紛らわしく写るものがあります。ここを知らないと結果を誤解します。
がんと関係なくブドウ糖が集まる場所(生理的集積)
がん情報サービスは、脳や心臓、消化管、肝臓、咽頭の粘膜、泌尿器などの臓器や、炎症を起こしている組織など、がんと関係なくブドウ糖が集まりやすい部位では、PET検査による診断が難しいことがあるとしています※1。
日本核医学会のガイドラインは、より具体的に示しています※2。
| 集積の程度 | 部位 |
|---|---|
| 高集積 | 糖代謝の活発な脳、排泄経路である腎・尿管・膀胱などの尿路系 |
| 比較的高集積 | 口蓋扁桃、胃・大腸などの消化管、肝臓 |
| 生理的集積を認めることがある | 心筋、肺門部、骨髄 |
| まれに高集積 | 頸部〜鎖骨上窩、傍椎体領域などの褐色脂肪組織 |
がんなのに写りにくいもの
ガイドラインは次の3点を挙げています※2。
- 悪性腫瘍でも分化度の高い腫瘍や、分裂・増殖の遅い腫瘍は高集積とならない場合があり注意が必要
- 空間分解能の問題から、サイズが小さい病巣では集積を過小評価する場合がある
- 活動性の炎症や肉芽腫疾患はFDGを強く集積するものが多く、腫瘍集積との鑑別は困難
つまり「PETで光らなかったからがんではない」とは言えず、「光ったからがんである」とも言えません。ほかの検査と合わせて判断する検査です。血液で調べる検査についても同じことが言えます(腫瘍マーカーとは)。
数値(SUV値)の読み方にも注意がいる
集積の程度はSUV値(standardized uptake value)による半定量的な評価が用いられます※2。
ただしガイドラインは、SUVは撮像条件により変動するので、その値だけではなく、視覚の評価を含めて総合的に判断することが必要であり、とりわけ経時的変化を評価する際などには留意すべきとしています※2。
施設や撮影条件が違うSUV値を単純に比べることはできません。
PET-CT検査の安全性:副作用・被曝量
がん情報サービスによれば、1回のPET検査でFDGから受ける放射線量は約3.5mSvです※1。
またFDGから出る放射線は時間とともに弱くなり、多くは尿と一緒に体の外に出されます※1。がん情報サービスは被ばくの影響を過度に心配する必要はありませんとしています※1。
ここでPET-CT検査の場合はCT撮影の分の被ばくが加わります。合計の被ばく量は撮影の範囲や条件によって変わるため、実際の数値は検査を受ける施設にご確認ください。
なお、被ばくを減らす工夫は検査の手順に組み込まれています。ガイドラインは尿中排泄が主であるので、飲水・利尿を促すとバックグラウンドが低下し、被ばくが低減される、腎臓から膀胱へ排泄されるため、撮像前に排尿して膀胱部の被ばくを低減するとしています※2。
検査後に水分を多めにとって排尿を促すよう案内されるのは、画質のためだけでなく被ばくを減らすためでもあります※1 ※2。
PET-CT検査の流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 検査前 | 検査の5〜6時間前から糖分を含む飲食物の摂取はできません※1(ガイドラインは4時間以上の絶食としています※2) |
| FDGの注射 | 静脈から注射します※1 |
| 待ち時間 | 1時間前後、ベッドなどで安静にしてFDGが細胞に取り込まれるのを待ちます※1 |
| 撮影 | 撮影時間は30分程度※1。ガイドラインは投与60〜90分後に全身を撮像するとしています※2 |
| 検査後 | 水分を多めにとって排尿を促します※1 |
PET-CT検査の注意事項
血糖値の影響
糖尿病などで高血糖の状態では正確な結果が出ないことがあります※1。
ガイドラインはその理由を、血糖値が高い場合や一部の糖尿病患者ではFDGの腫瘍集積が低下し、バックグラウンド集積が増加するために検出能が低下することがあると説明しています※2。またインスリン投与後は筋肉などバックグラウンド集積が高くなるとされています※2。
糖尿病の治療を受けている方は、必ず事前に申し出てください。絶食やインスリンの扱いについて指示があります。
検査前後の運動を控える
ガイドラインは、FDG投与前後、とくに投与後に運動(筋肉の緊張や収縮)をすると骨格筋への集積が増加するため、安静が必要としています※2。
妊娠・妊娠の可能性
胎児は放射線の影響を受けやすいため、妊娠している人、妊娠している可能性がある人は、必ず医師に伝えましょう※1。
PET-CT検査に向くがん、向かないがん
保険診療の対象は、「悪性腫瘍(早期胃癌を除き、悪性リンパ腫を含む。)」と定められています※2。
そして適用要件は、他の検査又は画像診断により病期診断又は転移若しくは再発の診断が確定できない患者に使用することです※2。
「疑い」の段階では保険適用にならない
ここが最も誤解されやすい点です。
ガイドラインは、疑い症例での診断目的の検査は適用にならないと考えられると明記しています※2。
あわせて、実際の診療で守るべき保険診療の原則として次を挙げています※2。
- 保険診療にあっては、診療報酬に規定された適用にのみ用いる
- 保険診療の適用に該当しない疾患では臨床研究、あるいは自由診療として行う
- 混合診療は禁止されている
制度がどう広がってきたか
PET検査の保険適用は段階的に広がってきました※2。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 平成14年4月 | がんを中心とする12疾患(てんかん、虚血性心疾患、肺癌、乳癌、大腸癌、頭頸部癌、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、脳腫瘍、膵癌、転移性肝癌、原発不明癌)に対するFDG PETが健康保険診療として採用 |
| 平成18年4月 | 食道癌・卵巣癌・子宮癌の3癌種が追加。PET/CT検査が新たに定められた |
| 平成22年4月 | 個別の癌腫を指定することをやめ、「悪性腫瘍(早期胃癌を除く。)」と定められた。病期診断、再発・転移診断へ適用拡大 |
| 平成24年3月 | 疑義解釈により、悪性リンパ腫の治療効果判定にPET・PET/CTを行った場合も、転移・再発診断の目的に該当するとの見解 |
| 平成30年3月 | 疑義解釈により、PET/CTを悪性腫瘍に対して使用する場合に、必ずしも事前にCTを実施する必要はないとの見解 |
写りにくいがんがある
前述のとおり、分化度の高い腫瘍や分裂・増殖の遅い腫瘍は高集積とならない場合があります※2。早期胃がんが保険適用から除かれているのも、この検査の性質と関係します。
ご自身のがんでPET-CT検査が有用かどうかは、主治医にご相談ください。再発や転移の調べ方の全体像はがんの再発と転移はなぜ起こる?もあわせてご覧ください。
PET-CT検査の料金
保険診療で受ける場合は、年齢や所得に応じた自己負担割合(1〜3割)での支払いになります。ひと月の自己負担が一定額を超えた場合は高額療養費制度の対象になります。詳しくはがんの治療費をご覧ください。
一方、人間ドックなどで受けるPET検査は保険が使えず全額自己負担となり、金額は医療機関が独自に設定しています。本記事では特定の医療機関の料金を掲載しません。実際の金額は受診を検討している施設にご確認ください。
がん検診としてのPETについて
がん情報サービスは次のように述べています。
PETによるがん検診によって、がんがどれくらいの精度で発見され、がんで亡くなる人がどれくらい減少するのかなどは、まだ十分なデータがありません※1。
そして国内のPET検診はすべて、国が推奨するがん検診ではなく、人間ドックなどで行われる任意の検診です※1。
国の指針にもとづき市区町村が実施するがん検診は胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5種類で※3、いずれもPETを用いるものではありません。PET検診を受けたことで、これらの検診を受けたことにはなりません。
本記事は2026年7月30日時点の公的機関の情報および学会診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。保険適用の要件は診療報酬改定のたびに変わることがあります。ご自身の場合に検査が適切かどうか、保険が使えるかどうか、被ばく量や費用については、必ず主治医および検査を受ける医療機関にご確認ください。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「PET検査」(最終確認日: 2026年7月30日)
- 日本核医学会「FDG PET, PET/CT診療ガイドライン2020」(令和2年8月)(最終確認日: 2026年7月30日)
- 厚生労働省「がん検診」(最終確認日: 2026年7月30日)





















