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がんとたばこの関係は?~関連するがんと発生率~

更新日: 2019/10/13

公共機関などを中心に完全禁煙化が進んでいる昨今。厚生労働省による成人喫煙率調査によれば、昭和40年代には成人男性の喫煙率は80%を上回る数値であったものの、平成30年にはわずか27.8%まで低下していることが分かりました。特に20代の喫煙率が低く、若者の嫌煙化も指摘されています。
これは、ひとえに「たばこは身体に悪い」というイメージが定着してる結果と言ってよいでしょう。たばこには多くの有害物質が含まれるため、喫煙者だけでなく、周囲で受動喫煙を受ける人もまた様々な健康被害を受ける可能性があるとされています。そんな健康被害の中で多くの人が恐れるのが「がん」です。
そこで今回は、たばことがんの関係について詳しく解説します。

目次


たばこはなぜがんを引き起こすのか?

たばこを吸い続けるとがんになる可能性が高くなる…。そう漠然と考えている人は多いでしょう。若い世代の人では、学校教育を通してたばこの危険性を学び、がんとたばこの関係について学んだことがある人もいるかも知れません。
「たばこはがんにつながる」ことは事実です。しかし、なぜたばこはがんの原因になるのか詳しく知っている人は少ないのが現状でしょう。ここでは、なぜたばこはがんの原因になりうるのか詳しく見てみましょう。

発がん性物質

たばこの原料は、ニコチアナ・タバカムやニコチアナ・ルスチカなどのナス科の植物です。これらの葉を乾燥させて1年以上熟成させ、細かく切り刻んだものを紙で巻くとたばこが完成します。
原料は自然の植物であるため、たばこの煙で健康を害することを疑問に思う人もいるかも知れません。実は、たばこのけむりに含まれる有害成分の多くは、喫煙したときの不完全燃焼によって生じるのです。その種類は、200種類以上にも上るとされています。
そして、それらの中にはベンゾピレン、多環芳香族炭化水素類、たばこ特異的ニトロソアミン類などを始めとして約70種類もの発がん性物質が含まれていることが報告されています。
たばこに含まれる発がん性物質の多くは、そのもの自体や、体内で代謝される過程で生成される物質が遺伝子にダメージを与えることが分かっています。
例を挙げると、たばこに含まれる代表的な発がん性物質であるベンゾピレンは、体内で代謝される際の中間生成物が遺伝子の複製を阻害し、がん抑制遺伝子であるp53に不可逆的なダメージを与えると考えられています。その結果、がん細胞の増殖が止まらず、がんを発症しやすくなるのです。

有害物質による炎症

たばこのけむりに含まれる有害物質の中には、炎症を引き起こすものも少なくありません。口やのど、肺などはこれらの物質にさらされやすく、長期間に渡る暴露によって慢性的な炎症を生じることががんにつながるとの説もあります。
慢性的な炎症は活性酸素を生み出します。活性酸素やその代謝物は細胞内の過酸化水素やヒドロキシラジカルなどの物質の生成を促し、それらがDNAにダメージを与えることでがんを発症すると考えられているのです。

受動喫煙でもがんになる?

周囲の喫煙者が吐きだしたけむりを吸ってしまう受動喫煙。たばこを直接吸っていないため、健康被害は少ないと考えられがちです。しかし、実はたばこから直接吸い込むけむりよりも受動喫煙で吸い込むけむりの方が多くの有害物質を含むことが分かっています。
また、けむりに含まれる有害物質の大きさも副流煙の方が小さいとされており、吸い込むと肺の奥深くまで行き渡り、がんのリスクがより高くなってしまうことも指摘されているのです。

たばこと関連するがんとは?

このように、たばこは受動喫煙も含めて多くの発がん性物質を体内に取り入れてしまうことになるため、がんの発症に深く関わることがわかります。
一般的に、たばこの煙を吸い込んで真っ先に行き渡る口・のど・肺、血液中に吸収された発がん性物質の通り道となる肝臓・腎臓・膀胱、唾液などに溶けた発がん性物質にさらされる食道・胃などの器官のがん発症率が高くなるとされています。
では、それぞれどのようなリスクがあるのか詳しく見てみましょう。

科学的に証明されているがん

厚生労働省による「喫煙の健康影響に関する検討会」(2016年)では、部位別にたばこによるがん発生のリスクにていて4つのランク分けが行われました。
様々な研究によって科学的に因果関係が証明されているものを「レベル1」とし、鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんが「レベル1」のカテゴリーに含まれています。
また、国際がん研究機関(IARC)
の発表では、上記の他にも、大腸がん、腎臓がん、尿管がん、卵巣がん、骨髄性白血病もたばことの因果関係があると判定されています。

代表的ながんの科学的根拠は次の通りです。

肺がん

たばこと言えば肺がんを思い浮かべる人も多いでしょう。
肺は吸い込んだたばこのけむりに直接さらされる部位であるため、肺細胞の遺伝子変異を引き起こしてがんを発生させやすいことが分かっています。また、長期間に渡る研究で喫煙指数(喫煙年数×1日の喫煙本数)が高いほど肺がんの発症率が高くなり、禁煙すると発症リスクが低減することが示されています。このことからも、たばこは肺がんを引き起こすと言うことができるのです。

口腔がん、咽頭がん、喉頭がん

口やのども肺と同じくたばこの煙に直接さらされる部位です。口やのどの粘膜が長期間に渡って発がん性物質にさらされると、遺伝子が傷つくことが分かっています。また、がんの前段階である「前がん病変」も出来やすく、さらにたばこを吸い続けることでがんに進行するケースが多いとされています。

胃がん

胃がんの原因と言えば、ピロリ菌感染を思い浮かべる人も多いでしょうが、たばことも密接な関りがあります。胃は発がん性物質が溶けた唾液などにさらされることより、実はがんを引き起こしやすい部位なのです。
たばこに含まれる発がん性物質の中には、がん抑制遺伝子の一種であるCDH1遺伝子にダメージを与え、がんを引き起こしやすくなることが分かっています。

肝臓がん

肝臓は血流が非常に豊富な臓器であるため、血中に含まれた発がん性物質にさらされやすい臓器です。その上、発がん性物質の中には肝臓で分解されるものもあるため、肝臓は長期間に渡って発がん性物質の被害を受けることになります。その結果、肝細胞のDNAがダメージを受けて発がんを促すとされています。
また、たばこのけむりに含まれる炎症性物質によって肝臓の細胞は線維化することがわかっており、肝硬変のリスクを高めることで将来的な肝臓がんの発症率も上昇させるとの報告もあります。

膀胱がん

尿が蓄積される膀胱には、尿と共に排出される発がん性物質が多く含まれます。その結果、発がん性物質が膀胱内壁の細胞の遺伝子にダメージを与え、がんを引き起こすのです。
また、膀胱がんを引き起こす主な発がん性物質であるBアリルアミンを代謝する酵素は欧米人よりも日本人の方が代謝速度の速いタイプが多いため、たばこによる膀胱がんの発症率は欧米人の方が高いことも指摘されています。

たばことの関連が指摘されているがん

科学的に因果関係があるとは言い切れないものの、たばことの関連が疑われるがんとしては、乳がん、前立腺がんなどが挙げられます。
一方、驚くべきことに子宮体がんは喫煙者の発症率の方が低いことが指摘されています。これは、たばこが子宮体がんの原因となる女性ホルモンのエストロゲンの分泌量を減らすことが原因と考えられていますが、明確なメカニズムは解明されていません。

たばことがんの発生率は?

最後に、たばこを吸い続けるとがんの発生率はどのように上昇するのか見てみましょう。
国立がん研究センターの研究によれば、たばこを吸う人は吸わない人に比べて男性で1.6倍、女性で1.4倍も上昇することが分かっています。特に、上記の「レベル1」に分類される喉頭がんでは32.5倍も死亡率が上昇するとされています。その他にも、肺がん4.5倍・肝臓がん3.1倍・口腔咽頭がん3.0倍・食道がん2.2倍もの死亡率が上昇するとのデータもあり、特定のがんではたばこによる深刻な影響を受けることが示されているのです。

また、日本人は毎年男女合わせて48万人もの人が何らかのがんに罹患しています。性別によって罹患しやすいがんは異なりますが、男性に多い胃がんや肺がん、肝臓がんはいずれも「レベル1」に分類されるもの。女性の場合でもトップ1,2の乳がんや大腸がんにはたばことの関係に明確な科学的根拠はないとされていますが、3~5位を占める胃がん、肺がん、子宮がん(子宮頸がん)は「レベルⅠ」のものです。
国立がん研究センターの推計によれば、男性のがんの29%、女性のがんの3%はたばこによって引き起こされるがんであり、日本人全体では毎年約9万人の人がたばこによるがんに罹患するとのことです。
そして、科学的根拠は明確ではないものの、たばこはがんの生命予後を悪化させ、再発するリスクを高めるほか、治療効果を低めたり治療による副作用を生じやすくすることが示唆されています。つまり、たばこはがんに罹患しやすくなるだけでなく、罹患した後も治療に苦渋したり、十分な治療を行えない可能性もあるのです。たばこは単にがんの発症率を上昇させるだけでなく、「質の悪い」がんを引き起こしやすいこともに注意が必要なのです。

まとめ

たばこががんの発症率を上昇させるのはもはや周知の事実です。科学的に因果関係が証明されているがんも多く、今後もさらにたばことの関係が証明されるがんが増えるかも知れません。
日本人の死因第一位であるがん。老化や生まれ持った遺伝子変異など予防できないことが原因のがんも多くあります。しかし、たばこが関係するがんは思いのほか多く、禁煙することでリスクを低減することが可能です。
現在喫煙中の人は禁煙外来などを上手く利用して禁煙に挑戦してみましょう。そして、非喫煙者の人は一生吸わない!という意思を強く持ち続けることが大切です。

参考文献

公益財団法人健康・体力づくり事業財団 成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
JT 製造
https://www.jti.co.jp/tobacco/knowledge/process/manufacturing/index.html
がん情報サービス たばことがん もっと詳しく知りたい方へ
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco02.html
がん情報サービス 最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
日本生活習慣病予防協会 生活習慣病の予防・改善は禁煙から!
http://www.seikatsusyukanbyo.com/monthly/img/nosmoke_leaflet.pdf
一般社団法人神戸市医師会 たばこの問題
http://www.kobe-med.or.jp/kenkou/kinen5.html
一般社団法人広島県医師会 たばこの発癌性
http://www.hiroshima.med.or.jp/kenmin/kinen/img/atlas/15.pdf
一般社団法人くまもと禁煙推進フォーラム がん
http://square.umin.ac.jp/nosmoke/text/1-2cancer.pdf
厚生労働省 e-ヘルスネット 喫煙とがん
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-001.html
厚生労働省 喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf
一般社団法人日本呼吸器学会 喫煙と各種の癌との因果関係
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=94
広島県禁煙支援ネットワーク たばこの健康障害
http://www.menet-hiroshima.jp/kin-en/Illness/Gan.html

執筆者 成田 亜希子  医師


2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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