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更新日:2023/05/17

世界におけるがんの動向

世界全体を見渡すと、がん患者やがんによる死亡者は近年、増加傾向にあるといわれています。その一方で、日本では、がんは「死ぬ病気」から「治るかもしれない病気」へと変わりつつあります。日本におけるがん患者の数は、世界的な状況とどのような差があるのでしょうか。

世界中で増加するがん罹患者数と死亡者数

2018年に世界で新たにがんに罹患した人は約1810万人、がんにより死亡した人は約960万人と推計されています。これは、WHO(世界保健機関)のがん研究専門組織である国際がん研究機関(IARC)が世界185か国に対して行った、がんの発症や死亡についての統計調査によるものです。2002年には、がん罹患者が約1010万人で、がん死亡者が約670万人でした。2008年にはがん罹患者は約1270万人、がん死亡者は約760万人と増え、さらに2012年にはがん罹患者は約1410万人、がん死亡者は約820万人へと大きく増加し、2018年にかけても増加傾向にあります。世界的に見て、がんにかかる人の数およびがんによる死亡者数は増加していることが明らかになっています。

2002年と2018年の調査結果を比較すると、肺がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんなどにおいて新たにがんにかかった人の増加幅が大きくなっています。ただし、肺がん、大腸がん、胃がんなどは地域によっては減少傾向に転じているケースもあり、地域差が大きいことが伺えます。減少しているがん種において考えられる理由として、例えば肺がんであれば禁煙率の上昇、胃がんであれば食品保存に使用される食塩量の減少や衛生環境の改善、大腸がんであればがん検診の積極的な実施によりポリープの状態で早期発見・早期切除が可能となったことなどが挙げられます。国や地域によって、健康意識の高まりや医療技術の発達、健康診断の実施率などが異なり、がんの罹患率において地域差が生じていると考えられます。

日本のがん死亡率と国際比較

厚生労働省は、日本と英国、米国、カナダ、オーストラリア、韓国の6か国について10万人あたりの75歳未満年齢調整死亡率を国際比較し、その動向やそれらが及ぼす影響などをまとめた結果を公表しています。
この6か国比較によると、全がんにおいて死亡率は減少傾向にあることが分かっています(※なお、韓国のデータはがん種により1980年代もしくは1990年代から開始)。 日本におけるがん種ごとの死亡率は、次のような傾向にあるとまとめられています。

●胃がん:死亡率は高いが男女とも減少している
●肝臓がん:死亡率は高いが男女とも減少している
●大腸がん:男女とも1990年代後半から減少しているが、諸外国よりも減少が鈍い
●肺がん:男女とも1990年代後半から減少しているが、諸外国よりも減少が鈍い
●前立腺がん:死亡率は低く減少している
●女性乳がん:韓国と同様に、死亡率は低いが増加が続いている。なお、その他の国では1990年代初頭あたりから減少傾向にあり、1990年代後半から急減している
●子宮頸がん:死亡率は増加に転じ、諸外国と順位が逆転している。直近の統計では、子宮頸がんによる死亡率は6か国中1位
●子宮体がん:諸外国も増加傾向にあるが、日本においても死亡率は増加。1970年代は、子宮体がんによる死亡率は6か国中で最も低かったが、直近の統計では諸外国と同等の死亡率となった
●膵がん:男女とも増加し、諸外国と順位が逆転している。なお、膵がんによる死亡率は、1950年代中盤は男女とも6か国中で最も低かったが、1980年代頃から男女ともに上昇し、現在では男性は6か国中1位、女性は2位となっている

このように、がん種別でみると死亡率が上昇しているものもありますが、日本におけるがん全体としては死亡率が低下していることが分かります。なお、日本の全がんによる年齢調整死亡率の低下には、胃がん、肝臓がん、男性の肺がんの減少が主として寄与しているとしています。

がんは治る病気へ

現代は、検査方法の発達などでがんを早期発見できるようになっています。例えば、胃がんではX線検査や内視鏡検査、大腸がんでは便潜血検査や内視鏡検査などが、日本をはじめ多くの国で用いられています。胃がんや大腸がんなどは、早期発見後に内視鏡でがんを確認しながら切除できることも多く、体への負担がより少ない治療法も可能になっています。
これらのことから、がんは今や「治る病気」になりつつあるといえます。

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