更新日:2026/08/06
二次がん


主な研究内容・論文:カプセル内視鏡、消化器内視鏡、消化器病
保有免許・資格:米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医、日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医
がんの治療に使われる放射線治療や薬物療法は、がんを治すための重要な手段である一方で、治療を終えてから長い年月を経て、もとのがんとは別の新たながん(二次がん)が生じるリスク因子になることが知られています。この記事では、二次がんとは何か、放射線治療や小児がん治療との関係、そして治療後に大切な経過観察について、国立がん研究センターがん情報サービスなどの一次情報にもとづいて解説します。
この記事でわかること
- 二次がんとは何か、なぜ起こるのか
- 放射線治療と二次がんの関係(リスクはあるが「非常に低い確率」)
- 粒子線治療(陽子線・重粒子線)の線量を集中させる特性
- 小児がん治療後に注意したい晩期合併症と長期フォローアップ
二次がんとは
二次がんとは、薬物療法や放射線治療によって正常な細胞がダメージを受けたことが原因で、治療を終えた数年から数十年後に、もとの病気とは別のがんが発生することをいいます※1。もとのがんが再び現れる「再発」が同じ性質のがんであるのに対し、二次がんはもとのがんとは種類の異なる新たながんである点で区別されます。
つまり、がんの治療がうまくいった後でも、時間がたってから別のがんが生じる可能性があるということです。症状は発生した部位や進行度によってさまざまなので、体調に気になる変化があれば早めに医療機関を受診することが大切です。万が一二次がんが生じても、早期に発見できれば治療の選択肢が広がります。そのためにも、治療後の定期的な検査を習慣づけることが重要です。
放射線治療と二次がんの関係
がんの治療では、主に手術・放射線治療・薬物療法が行われます。このうち放射線治療について、がん情報サービスは「放射線はがんを治す力ばかりではなく、がんをつくり出してしまう力もあります」と説明しています。放射線が照射された部位からがんができる確率は、照射していない場合に比べて高いとされていますが、それは非常に低い確率であるとされています※2。二次がんは、放射線治療の晩期の副作用(治療から時間がたって現れる副作用)の一つに位置づけられています※2。
放射線治療では、がんの部位・その周囲のがん細胞が残っている可能性のある部位・正常組織の部位について、それぞれの線量分布を綿密に計算して治療計画が立てられます※2。放射線は正常組織にも影響を与えますが、正常組織はがん細胞ほどには放射線の影響を強く受けないとされています※3。こうした計画のもとで、正常組織への影響をできるだけ抑えながら治療が行われます。
二次がんの発症例
二次がんは、放射線が照射された部位やその周辺から生じることがあり、治療から発症までには数年から数十年という長い時間がかかることがあります※1。放射線治療は、がんを治すために必要で有効な治療法です。二次がんのリスクは非常に低いものですが、リスクがゼロではないことを理解したうえで、治療後の経過観察を通じて予防や早期発見につなげることが大切です※2。放射線を用いる治療全般については放射線療法とはもあわせてご覧ください。
重粒子線治療と二次がん発症率
治療に用いられる放射線には、X線・電子線・陽子線・重粒子線・γ(ガンマ)線・中性子線などさまざまな種類があります※3。このうち陽子線や重粒子線(炭素イオン線)は、体内に入っても表面近くではエネルギーをあまり放出せず、止まる直前に大きな線量を放出するという特性(ブラッグ・ピーク)をもっています。この特性を利用して、病巣に効率よく線量を集中させ、正常組織への線量を少なくできることが、粒子線治療の特徴です※4。
ただし、この「線量を集中できる」という物理的な特性は、「他の治療法に比べて二次がんが少ない」ということを意味するものではありません。粒子線治療と他の治療法とで二次がんの起こりやすさを比較した確立した結論は、公的機関の一般向け情報では示されていません。治療法の選択は、二次がんのリスクだけでなく、がんの種類・進行度・体の状態・費用など多くの要素をふまえて、主治医とよく相談して決めることが大切です。重粒子線治療の対象や費用などは重粒子線治療の記事で解説しています。
小児がん治療後の注意点
小児がんは治療の効果が高く、生存率も向上して、多くが治癒する病気になってきました。その一方で、小児がんは治癒した場合でも、治療後にさまざまな体の変化(晩期合併症)が起こることがあり、二次がんもそのひとつとして注意が必要です※5。
小児がんの主な晩期合併症と二次がんの例
がん情報サービスは、小児がんの晩期合併症を次のように整理しています※5。
| 分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 成長・発達への影響 | 身長の発育障害、無月経、不妊、肥満、やせ、糖尿病など |
| 中枢神経系への影響 | 白質脳症、てんかん、学習の困難など |
| 臓器機能への影響 | 心機能・呼吸機能・肝機能の異常、免疫機能の低下など |
| 二次がん(続発腫瘍) | 白血病、脳腫瘍、甲状腺がん、その他のがんなど |
晩期合併症や二次がんは、年齢を重ねるにつれて現れやすくなり、治療が終わって数十年たってから症状が出ることもあります※5。海外の調査でも、小児がんを経験した人は二次がんを含む晩期の影響のリスクが高いことが報告されており、米国国立がん研究所(NCI)の調査では、診断から30年の時点で悪性の二次がんが生じた割合が約7.9%、これは一般集団のおよそ6倍と報告されています(海外のデータ)※6。日本の状況と完全に一致するとは限りませんが、長期にわたる注意が必要であることを示しています。
このため、いつ・どのような治療を受けたかを明確に記録しておくこと、そして定期的な診察と検査による長期間のフォローアップを続けることが大切です※5。小児がんそのものについては小児がんの記事でも解説しています。
よくある質問
Q. 二次がんと再発は同じものですか?
A. 異なります。再発はもとのがんと同じ性質のがんが再び現れることを指すのに対し、二次がんは治療の影響などによって、もとのがんとは別の種類のがんが新たに生じることをいいます※1。
Q. 放射線治療を受けると必ず二次がんになりますか?
A. いいえ。放射線が照射された部位からがんができる確率は、照射していない場合より高いとされていますが、それは非常に低い確率です※2。放射線治療はがんを治すために有効な治療法であり、リスクを理解したうえで治療後の経過観察を続けることが大切です。
Q. 治療後はいつまで検査を続ければよいですか?
A. がんの種類・治療内容・年齢などによって異なります。とくに小児がんでは、数十年たってから症状が出ることもあるため、長期間にわたるフォローアップが必要とされます※5。検査の間隔や続ける期間は主治医の指示に従ってください。定期的な検査の考え方はがん検診についても参考になります。
本記事は2026年8月7日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「二次がん」(最終確認日: 2026年8月7日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の実際 4.副作用と対策」(最終確認日: 2026年8月7日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療」(最終確認日: 2026年8月7日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の種類と方法」(最終確認日: 2026年8月7日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「晩期合併症/長期フォローアップ」(最終確認日: 2026年8月7日)
- NCI PDQ®「Late Effects of Treatment for Childhood Cancer–Health Professional Version」(最終確認日: 2026年8月7日)


















