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更新日:2023/06/09

二次がん

監修医師: 中路 幸之助 医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター
主な研究内容・論文:カプセル内視鏡、消化器内視鏡、消化器病
保有免許・資格:米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医、日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医

胃がん、乳がん、大腸がんなどさまざまながんがありますが、その治療法も手術や抗がん剤治療、放射線治療などさまざまです。がんを治すはずの放射線治療や抗がん剤も万能ではなく、「二次がん」の発症リスク因子にもなっていることをご存じでしょうか。もちろん、これらの治療を受けたら必ず二次がんを発症するわけではありませんが、自分にとって最適な治療法を選択するためにも、治療後の定期検査を習慣づけるためにも、二次がんについてあらかじめ知っておく必要があります。

二次がんとは

二次がんとは、がん治療終了後にまた別の新たながんを発症することをいいます。二次がんは、放射線治療や化学療法などのがんの治療により、正常な細胞がダメージを受けたことが原因であるといわれています。つまり、がん治療がうまくいっても、数年~数十年後に別のがんを発症する可能性があるということです。そのため、がん治療が終わった後の二次がんのリスクについてもきちんと把握しておく必要があります。

二次がんの症状は、発症した部位や進行度によってさまざまです。少しでも体調が変だなと感じたら病院を受診するようにしましょう。万が一、二次がんが発症したとしても早期発見できることが大事です。定期的に検査を受けることが早期発見につながります。※1

放射線治療と二次がんの関係

がん治療としては、主に手術、放射線治療、化学療法が行われます。
近年、放射線治療や抗がん剤による二次がんの発症率やリスク因子について多くの研究が報告されています。これらの研究により、放射線治療や抗がん剤が、実は二次がんの発症リスク因子であるということが明らかになってきました。
なぜ、がんを治療するために用いられる放射線治療が二次がん発症に関係しているのでしょうか。放射線治療では、がん細胞に放射線を集中して照射します。しかし、周辺にある正常な細胞への照射を完全にゼロにすることは難しいからです。

二次がんの発症例

・子宮頸がん治療後に大腸がんや乳がんを発症
・頭頚部がん治療後に食道がんを発症
・甲状腺がん治療後に舌がん、口腔がん、喉頭がん、食道がんを発症 など※2、3

放射線を照射してから二次がんが発症するまでの期間は、数年~数十年とされています。例えば、白血病だと6~7年が発症のピークとされており、固形腫瘍の場合は10~15年から増え始めるといわれています。※4

放射線治療に二次がんの発症リスクがあるのは事実ですが、放射線治療後に得られる利益に比べれば極めて小さいことといえます。例えば、食道がんを手術する場合、術後1か月以内に亡くなるリスクは約5~9%といわれていますが、放射線治療を行った場合の5年生存者における二次がん発生のリスクは、1%に満たないといわれています。 ※5 放射線治療はがんを治すためには必要な治療法です。放射線による二次がんリスクがあるということを把握し、いかに予防や早期発見につなげるかが重要であるということを頭に入れて、がん治療後の生活を意識することが大切です。

重粒子線治療と二次がん発症率

放射線治療には、電子線、X線、γ線、陽子線、重粒子線など、さまざまな種類の放射線が用いられています。なかでも重粒子線治療は、がんに放射線を集中させ、正常な細胞に当たる放射線量を少なくできるという特徴があります。そのため、重粒子線治療は二次がん発症率が低いという報告もあり、注目されています。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の研究チームでは、前立腺がんの重粒子線治療後の二次がん発生率について調査し、その発生率が全国のがん罹患率や、X線治療後の発生率とどの程度違うのかを比較しています。

前立腺がんの重粒子線治療後とX線や電子線などの光子線治療後を、年齢などの背景因子をできるだけ揃えたうえで比較したところ、重粒子線治療後の方が二次がんの発生が少ないことが分かりました。一方で、重粒子線治療と手術療法と比較したところ、明らかな差はないことが分かりました。※3

もちろん治療方法の選択は患者の意思に委ねられます。二次がんの発症リスクやこういった研究結果などを事前に知っておくことで、よりよい治療選択ができるようになります。

小児がん治療後の注意点

ここで、小児がんにおける二次がんの発生についても解説します。小児がんは治療効果が極めて高く、生存率も上がっており、治癒する病になってきました。その一方で、小児がんは治癒した場合でも治療後にさまざまな合併症が起こりやすく(晩期合併症)、二次がんを引き起こす可能性もあるため注意が必要です。

小児がんの主な晩期合併症と二次がんの例

・成長発育の異常(身長発育障害、無月経、不妊、痩せ、肥満、糖尿病など)
・中枢神経の異常(大脳白質の障害、てんかん、学習障害など)
・臓器の異常(心機能、呼吸機能、肝機能などの異常、免疫機能低下など)
・二次がん(白血病、脳腫瘍、肉腫、甲状腺がん、乳がん、その他のがん)

がん患者は、がん治療後も油断はできません。がん治療後の過ごし方がとても重要となります。
がんの種類や治療内容、年齢などが関係するため、いつ、どのような治療を行ったかを明確に記録しておくことが大切です。晩期合併症や二次がんは年齢が経つにつれて発症しやすく、がん治療が終わって数十年経った後に症状が出ることもあります。

抗がん剤や放射線治療だけでなく、日光暴露や喫煙などもリスク因子となり得ます。がん治療が終わった後も、気になる症状があればすぐに受診し、長期間にわたってフォローアップを受けるようにしましょう。※6、7、8

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