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更新日:2021/06/04

がん治療を苦痛なく続けるための支持・緩和医療―こころとからだを楽にして自分らしさをとりもどす

『がん治療を苦痛なく続けるための支持・緩和医療―こころとからだを楽にして自分らしさをとりもどす』書評

著者名:髙橋孝郎・小島真奈美・藤堂真紀・加藤眞吾・大西秀樹(埼玉医科大学国際医療センター)
出版社 : ライフサイエンス出版
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がん治療の基本は「手術」「薬物」「放射線」といわれていますが、最近第四の治療として行われるようになったのが「緩和医療」といわれるものです。緩和医療についてはあまり知られておらず、まだ誤解も多いようですが、がんと診断された時から行うことが推奨されています。

  同著は埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンターの専門家が緩和医療および支持医療についてまとめたものです。医師、看護師、薬剤師など、それぞれを担当する専門の立場から緩和医療についてまとめられている一冊です。

誤解の多い緩和医療

「がん治療は辛い」と思っている人は少なくないと思います。辛さを完全にとり除くことはできないにしても、それを和らげることは可能です。その部分を担っているのが支持・緩和医療といわれるものです。

がん治療においては痛みや吐き気といった身体面の苦痛のほか、不安やうつといった精神面、「どうして自分ががんになったのか」といったスピリチュアル的な部分など、あらゆるタイプの苦痛を伴います。支持・緩和医療は、そういった苦痛をトータル的に和らげる役割を担っています。

同著の第一章を担当した支持医療科の高橋孝郎氏によると、緩和医療には暗いイメージがあり、がんの末期に受けるものだと思っている人が多いのだといいます。この章では誤解の多い緩和医療や支持医療について解説されています。また、高橋氏は、がん治療の成功には「攻撃」と「守り」が必要だと指摘します。手術や放射線、抗がん剤などの攻撃はとても大切ですが、それ以上に大事なのが生活の質(QOL=Quality Of Life)を維持させること。そのためにも支持・緩和医療は重要な役割を果たしているのです。

がん治療で変化する外見へのケアも

がん治療といえば抗がん剤を思い浮かべる人も多いと思います。抗がん剤治療は吐き気や脱毛などを伴うイメージがあるかも知れませんが、以前と比べて治療は大きく変化しました。いまでは吐き気に対しては予防薬(制吐剤)の投与が行われています。脱毛においてもかつら・ウィッグなどが充実したことによって日常で感じる身体的な苦痛を軽減できるようになりました。加えて、治療中はQOLを維持できるように副作用への対策が必要になってきます。この部分のケアを担当しているのが看護師です。

抗がん剤治療による副作用の苦痛について国立がん研究センターが行った調査結果が同著に紹介されています。それによると、苦痛の感じ方については男性と女性でも違うようです。男性で上位に上がっているのは①全身の痛み、②吐き気、③発熱です、一方、女性では①頭髪の脱毛②吐き気、③しびれ、という順番になっています。女性の場合はがん治療によって起こる脱毛や皮膚の障害、爪の変化といった外見的な変化を気にする人が多いようです。

同センターではこれらの整容性に関するケアが行われています。例えば、治療による脱毛へのケアや使用するシャンプーのアドバイス、まゆげがなくなった時の対応方法などへの支援です。

このような外見上の変化に起因する苦痛を軽減するケアのことを「アビアランスケア」と呼ぶのだそうです。

がん治療は包括的に

埼玉医科大学国際医療センターでは、さまざまな専門家が協力しながらがん治療を行っています。治療においては、医師や看護師のほか薬剤師も重要な役割を担っています。薬剤師は薬の調剤を行うだけではなく、使用する抗がん剤の説明や指導、副作用に対する対策など、ベッドサイドで患者さんを支えます。

進行したがんの痛みや呼吸困難などの症状を緩和させる放射線治療もチームの一躍を担っています。同センターでは、痛みの軽減や身体的症状の改善、QOLの向上を目的に緩和的放射線治療が行われています。

患者さんの辛い心は「精神腫瘍科」が対応します。この精神腫瘍科は、大学病院では同センターだけなのだとか。がんと診断された患者さんの多くがうつ症状を呈しますが、精神腫瘍科では患者さんのみならず、第2の患者である家族の心のケアも行っています。

同著はそれぞれの専門領域を四章に分けて解説されているので、どこから読んでもいい構成になっています。埼玉県の人もそうでない人も、支持医療・緩和医療を理解するのに参考になると思います。

執筆者 美奈川由紀 看護師・メディカルライター

国立療養所南福岡病院(現・国立病院機構福岡病院)附属看護学校卒業。看護師
看護師の経験を活かし、医療記事を中心に執筆
西日本新聞、週刊朝日、がんナビ、時事メディカルなどに記事を執筆
著書に「マンモグラフィってなに?乳がんが気になるあなたへ」(日本評論社)がある

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