更新日:2023/09/09
ロングリードシークエンスデータから複雑な後天的構造異常を高精度に検出するソフトウェアを開発
国立がん研究センターは、ロングリードシークエンスデータからがんゲノムに生じている後天的構造異常を高精度に検出するソフトウェア「nanomonsv」の開発に成功しました。このソフトウェアは、腫瘍と対照正常組織のロングリードシークエンスデータをペアで利用して、高精度に後天的構造異常の検出を達成するもので、世界的にも先駆けた開発となっています。
ロングリードシークエンス技術の発展により、これまで主流となっているショートリードに比べて、高感度に後天的構造異常の検出が可能になると期待されています。しかし、腫瘍と対照正常組織の双方のロングリードシークエンスデータをペアで利用して、高精度に後天的構造異常の検出を達成できるソフトウェアの開発は、世界的にもほとんど実現されていませんでした。そこで、国立がん研究センターでは、ロングリードシークエンスデータを活用した「nanomonsv」を開発し、約95%という高い精度、かつ高感度な検出を達成しました。
また、本研究では、消化器系のがんや肺がんで多く見られる構造異常の一種である「モバイルエレメント挿入」を高感度に検出することに成功しました。さらに、「Single Breakend SVモジュール」というアルゴリズムを開発し、これまでの技術では検出不能であったセントロメアやテロメア配列を巻き込む構造異常の検出が可能であることを実証しました。
今後がんにおいてもロングリードシークエンスデータを使ったより精密な全ゲノム解析の重要性が増してきています。本研究成果は今後のゲノム情報解析の基盤となり、研究・医療に展開されることが期待されます。
(Medister編集部 2023年9月8日)
<参考資料>
ロングリードシークエンスデータから複雑な後天的構造異常を高精度に検出するソフトウェアを世界に先駆けて開発