google+
はてなブックマーク
LINE
  • Medister
  • コラム
  • 書評
  • 医療系企業・特集
がん治療.com おすすめコンテンツ
心理状態の遷移
告知をされてから、がん患者の心理はどのように遷移するのか?
ストレス解消法
がん治療は大きなストレスとなりますが、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
医師との付き合い方
がん治療するうえで、医師と上手に付き合っていくには?
  • がん治療.com コンテンツ一覧
  • がん治療.com 用語集

更新日:2023/11/03

類上皮肉腫患者を対象としたEZH2阻害薬(E7438)の全国4施設共同第2相医師主導治験開始

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、局所進行・再発類上皮肉腫患者を対象に、ヒストンメチル基転移酵素の一種、EZH(enhancer of zeste homolog)2に対する選択的かつ可逆的な低分子阻害薬であるE7438(タゼメトスタット)単独療法の多施設共同第2相医師主導治験(試験略称:TAZETTA)を開始した。当院のほか東北大学病院(所在地:宮城県仙台市)、愛知県がんセンター(所在地:愛知県名古屋市)、九州大学病院(所在地:福岡県福岡市)の全国4施設で実施する。

類上皮肉腫は、前腕から手の浅層に多く発症する稀な肉腫である。有効性が高い薬物療法はなく、唯一根治が期待できる治療法は手術による完全切除であるが、診断時点で約半数は手術が行えず、予後の極めて厳しいがんである。また、超希少疾患であることから企業による治療開発が進み難い現状である。今回用いるEZH2阻害薬のタゼメトスタットは、海外での臨床試験において類上皮肉腫に対する有効性が報告されている。本試験では、日本人での有効性を検証し、良好な結果が得られた場合は類上皮肉腫では初となるEZH2阻害薬の国内での薬事承認を目指す。

希少がんの新規治療開発は、患者の数が極めて少ないことや、対象となる疾患の患者の情報を集約する仕組みが十分に構築されていないことから、患者登録に長い年月を要し、ランダム化比較試験を実施することが困難であり、企業による開発が積極的に行われていなかった。国立がん研究センター中央病院では、希少がんでの治療開発を推進するため、2014年には「希少がんセンター」を開設し、2017年からは企業とも共同で希少がんの研究開発・ゲノム医療を推進する「MASTER KEY(マスター キー) プロジェクト」を立ち上げている。MASTER KEY プロジェクトはレジストリ研究と副試験の2つのパートに分かれ、これまでに3,200例以上の患者が登録している。副試験パートでは現在27件(16件の医師主導治験、11件の企業治験を実施)の臨床試験を実施している(2023年5月)。今回の医師主導治験もMASTER KEYプロジェクトの枠組みで実施するものである。

本試験を、希少がんの中でも極めて少ない超希少ながん腫で成功させることにより、超希少がんの臨床試験計画や新薬開発手法の新たなモデル構築となり、わが国の希少がん領域における臨床開発の活性化に貢献できるものと考えられる。

2020年に海外から、類上皮肉腫に対してEZH2阻害薬であるタゼメトスタットが有効だという臨床試験結果が報告された。類上皮肉腫の患者にタゼメトスタットを投与し、15%の患者で腫瘍の縮小を認めている。この試験結果を参考に、ドキソルビシンを含む1レジメン以上の化学療法治療後に増悪を認めた日本人の類上皮肉腫の患者を対象に、タゼメトスタットの有効性を検証する臨床試験を計画、実施することに至った。

タゼメトスタットは、EZH2阻害薬という分子標的薬の一つである。類上皮肉腫の患者の 90%以上で、SMARCB1 という遺伝子が働いていないことが分かっている。SMARCB1 遺伝子はINI1蛋白の生成に関わっており、INI1 蛋白がないことによって、EZH2 という酵素が過剰に活性を起こし、異常な細胞増殖を引き起こすことがわかっている。EZH2 を阻害することで、類上皮肉腫の進行を抑制することが期待されている。

今回の医師主導治験は、国立がん研究センター希少がんセンター、学会による疾患登録、および臨床試験グループのネットワークを有効に活用し、全国の患者が参加できるよう計画している。また、一般的な治験の多くは、対象年齢が18歳、もしくは20歳以上であるが、本試験では類上皮肉腫の特性を踏まえ、対象年齢を16歳以上として計画した。本試験はエーザイ株式会社から資金および薬剤の提供を受けて実施する。
(Medister 2023年9月4日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 類上皮肉腫患者を対象としたEZH2阻害薬(E7438)の全国4施設共同第2相医師主導治験開始 「MASTER KEYプロジェクト」で超希少がんの治療開発に挑む

ページの上部へ戻る

がんの種類アクセスランキング

ページの先頭へ

医療系企業・特集

戦国武将とがん

書評

がんの種類