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更新日:2023/01/23

手術予定の早期非小細胞肺がんを対象とした遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を開始

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院は、肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)」の新たなプロジェクトとして、2022年8月29日より、手術予定の早期非小細胞肺がん患者を対象にした遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM- Advantage/MRD(エルシー・スクラム・アドバンテージ・エムアールディー」を開始した。 LC-SCRUM-Asiaでは、研究を開始した2013年2月から2022年8月までの約9年間で、17,000例を超える、肺がん患者の遺伝子解析を行い、国内における様々な分子標的薬や遺伝子診断薬の開発、臨床応用に貢献し、進行非小細胞肺がんのゲノム医療を推進してきた。2020年からは、進行・再発非小細胞肺がん患者を対象に、薬剤耐性遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-TRY(エルシー・スクラム・トライ)」も始動し、分子標的薬の耐性機序を明らかにして、薬物耐性を克服する新たな治療薬・診断薬の開発を推進している。 現在、早期(ステージ1、2、および3の一部)非小細胞肺がんに対する標準治療は手術である。国内における約20,000例を対象とした肺がん手術例の検討では、手術前後に従来の点滴の抗がん剤治療を追加した場合でも、ステージ2や3の非小細胞肺がん患者の半数以上が再発し、5年生存率は40~50%と、大腸がん、胃がん、乳がんと比べて満足のいく治療成績が得られていない。そのため、遺伝子変化を有する進行非小細胞肺がんにおける分子標的薬の優れた効果をふまえて、最近では、早期非小細胞肺がんの手術前後に遺伝子変化に基づいた治療を追加し、治療成績の改善につなげる研究が行われている。しかし、遺伝子変化を有する早期非小細胞肺がんの特徴はまだ明らかではなく、十分な遺伝子解析も行われていない。 そこで今回、LC-SCRUM-Asiaでは、早期非小細胞肺がんにおける遺伝子変化の特徴を明らかにすることを目的に、手術予定の早期非小細胞肺がん患者を対象にした新たな遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を計画した。 遺伝子スクリーニングには、複数の遺伝子変化を同時かつ迅速に調べることが可能なマルチ遺伝子検査を用い、Amoy Diagnostics社が開発したマルチPCR検査や、サーモフィッシャーサイエンティフィック社が開発した次世代シーケンサー(NGS)解析システム「on Torrent Genexus System/Oncomine Precision Assay (以下、Genexus/OPA)」を用いて遺伝子解析を行う。これら最新のマルチ遺伝子検査を用いることで、検体提出から1週間以内に遺伝子変化に関する情報を研究機関へ提供することが可能になる。もし、特定の遺伝子変化が見つかった場合、患者は、対応する分子標的薬の臨床試験への参加を検討できる可能性がある。 上記Advantageと同時に、手術、放射線治療、または薬物療法の治療予定の肺がん患者を対象にして、治療中や治療後、定期的に血液や尿を採取して遺伝子解析(リキッドバイオプシー)を行い、MRDが存在するか調べる。MRDの解析には、SeekIn社が開発した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を検査する技術やCraif社が開発した尿中マイクロRNAを検査する技術を用いる。最新技術により、MRDの評価が肺がん治療後の再発や治療効果予測につながるか検討する予定である。 (Medister 2023年1月10日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 手術予定の早期非小細胞肺がんを対象とした遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を開始 ~LC-SCRUM-Asiaが遺伝子スクリーニング基盤を早期肺がんまで拡大~

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