更新日:2022/11/19
膵がん患者血液中で変化するアポリポ蛋白A2アイソフォーム濃度を測定する体外診断用医薬品の製造販売承認申請について
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援等により、日本医科大学大学院医学研究科本田一文大学院教授(前国立がん研究センター研究所早期診断バイオマーカー開発部門長)らが行った研究で、アポリポ蛋白A2(以下、「APOA2」と略す)というタンパク質のうちAPOA2-ATとAPOA2-ATQの量比が膵がん患者の血液中で変化するということが明らかとなった。
先行研究で、本田教授らは膵がん患者や膵がんのリスクが高い疾患の患者でAPOA2アイソフォーム濃度が低下することを発見している。膵臓の消化酵素作用により、血液中を循環するAPOA2 2量体のC末端アミノ酸は特徴的な切断を受ける。健常者と異なり、膵がん患者の血液中では消化酵素の切断異常により中間鎖であるApoA2-ATQ/ATが減少する。また、同現象は、日本国内の多施設共同研究や米国国立がん研究所との共同研究でも確認された。
これを受けて、本切断異常を簡便な血液検査によって判別する検査キットの開発が、AMEDの「次世代がん医療創生研究事業」及び「革新的がん医療実用化研究事業」の支援により、東レ株式会社、日本医科大学、国立がん研究センターの共同研究として進められてきた。
この共同研究により、2022年6月27日に、東レ株式会社より、血液中のAPOA2アイソフォーム濃度を測定する酵素免疫測定法(ELISA)キットを体外診断用医薬品として厚生労働省へ製造販売承認申請がなされた。
この検査の社会実装により膵がんの早期診断が進み、難治がんである膵がんの早期発見、早期治療に繋がることが期待される。日本医科大学は、本体外診断用医薬品を患者にできるだけ早く届けられるように今後も関係各位と協力しながら迅速な社会実装を目指す方針である。
(Medister 2022年11月7日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 膵がん患者血液中で変化するアポリポ蛋白A2アイソフォーム濃度を測定する体外診断用医薬品の製造販売承認申請について