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更新日:2022/08/16

国立がん研究センター中央病院などで膠芽腫(こうがしゅ)(悪性脳腫瘍)に対する糖尿病治療薬メトホルミンと抗がん剤の併用療法の有効性を評価する先進医療(第II相臨床試験)を開始

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院などは、最も悪性度の高い脳腫瘍である初発膠芽腫の患者を対象に、現在の標準治療に糖尿病治療薬メトホルミンを併用した場合の安全性・有効性を評価する第I相臨床試験(研究代表者:脳脊髄腫瘍科長 成田善孝)を日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業の支援により実施し、その安全性を示すことができた(2021年4月から2022年3月)。2022年6月からは、中央病院など5施設にて第II相臨床試験を実施し、今後2年間かけ評価するという。

膠芽腫は、手術後に放射線治療と薬物療法(テモゾロミド)を行うのが標準治療であるが、治療開始からの5年生存割合は15%程度の難治がんで、急速に言葉の障害や手足の麻痺が進む悪性脳腫瘍である。年間発生数は2200人程度(2016年全国がん登録データ)の希少ながんでもあり、新規治療の開発が進んでおらず、有効な治療開発が望まれている。

膠芽腫の治療成績を改善するためには、治療後の再発を抑制することが重要で、そのためには再発の要因となるがん幹細胞を標的とする治療法の開発が一つの鍵となると考えられる。

山形大学医学部と国立がん研究センター中央病院の研究チームは、一連の研究からがん幹細胞中のFOXO3という分子を活性化することができれば、がん幹細胞を再発不可能な「ただのがん細胞」に変化させられることを確認し(日本学術振興会科学研究費助成事業 2009-2011年度 基盤研究[B])、さらに、メトホルミンがFOXO3活性化能を持つことに着目した研究を進めた。その結果、培養状態の膠芽腫幹細胞にメトホルミンを作用させると、がん幹細胞としての性質が消失する可能性が示唆され、また膠芽腫モデルマウスにメトホルミンを投与したところ腫瘍中のがん幹細胞が減少することを確認し、メトホルミンが膠芽腫のがん幹細胞の腫瘍形成能を喪失させる可能性が示唆された(山形大学・国立がん研究センターにて「ガン幹細胞に対する分化促進薬及び脳腫瘍治療薬」として2019年特許取得[特許6489517])。

研究チームは、これらの研究成果をもとに、膠芽腫の患者に対してメトホルミンの有効性を評価する臨床試験の実施を模索してきたが、メトホルミンの薬価が1日投与分(2250mg)でも90.9円で、1年投与しても33,178円と安価であること、さらにメトホルミンは後発品が多数あり、抗がん剤としての開発には多額の経費が必要であることから、企業の協力が得られなかった。このように、製薬企業主導では臨床開発を進めにくいことから、医師主導で臨床試験を計画し、2020年度AMEDの革新的がん医療実用化研究事業で本試験である「がん幹細胞を標的とした初発膠芽腫の放射線+テモゾロミド+メトホルミン併用療法の第I・II相臨床試験(研究代表者 成田善孝)」が採択された。

本臨床試験は、20歳-75歳の外来通院可能な初発膠芽腫患者を対象に、標準治療である手術後の放射線治療と薬物療法(テモゾロミド)にメトホルミンを併用する。第I相試験では、安全性の評価と推奨用量の決定を行い、第II相試験では安全性と有効性を評価する。

2021年2月に「メトホルミン経口投与及びテモゾロミド経口投与の併用療法」として先進医療Bでの実施が許可され、2021年3月から第I相臨床試験を、国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科などで実施した。2022年3月までに、7人の初発膠芽腫の患者に標準治療薬であるテモゾロミドとメトホルミン1500mg(4人)および2250mg(3人)を投与し安全性を評価する第I相試験を行ったが、併用時に重篤な有害事象は見られず、メトホルミンの最大用量である2250mgとテモゾロミドを併用しても問題ないことが分かった。その後、先進医療技術審査部会で審議され、2022年6月から有効性を評価する第II相臨床試験を国立がん研究センター中央病院など5施設で開始する。第II相臨床試験では15人の患者の参加を予定している。

本臨床試験は先進医療Bのもとで行われ、患者に投与されるメトホルミンはAMEDの委託研究費で購入したものを用いる。膠芽腫に対するメトホルミンの有用性が明らかとなれば、患者にとって新たな治療法の選択肢となり、また医療費も安く抑えられることとなる。
(Medister 2022年8月15日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 国立がん研究センター中央病院などで膠芽腫(こうがしゅ)(悪性脳腫瘍)に対する糖尿病治療薬メトホルミンと抗がん剤の併用療法の有効性を評価する先進医療(第II相臨床試験)を開始

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