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更新日:2022/03/11

肝転移病変における免疫チェックポイント阻害薬に対する新規耐性メカニズムの解明

国立がん研究センター研究所と名古屋大学などの研究チームは、肝転移病変を始めとした解糖系が亢進した腫瘍において免疫チェックポイント阻害薬治療に耐性が導かれる新たな機構を発見した。

免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん免疫治療法は、日本では2014年に悪性黒色腫で保険適用されて以降、肺がんや胃がんを始めとした様々ながん種の治療に用いられている。しかしながら治療効果が認められる患者が20から30%と少なく、治療効果が認められない原因を解明し、新たな治療法を生み出すための研究が必要である。

これまで研究チームはがん組織に存在するPD-1を発現した制御性T細胞がPD-1/PD-L1阻害薬治療耐性と相関があることを見出して報告してきた。本研究では免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペンブロリズマブ)による治療もしくは手術治療を受けた悪性黒色腫、肺がん、胃がん患者のがん組織検体を用いて、がん組織に存在する免疫細胞に関する詳細な解析を行った。その結果、肝転移病変を始めとした解糖系が亢進した腫瘍においては、グルコースが代謝されることによりがん組織内の乳酸濃度が高まり、それに伴い制御性T細胞のPD-1発現が高まり、PD-1/PD-L1阻害薬治療耐性につながっていることを見出した。また、T細胞の中で制御性T細胞だけが乳酸を代謝して活性化する経路を持っていることを発見し、それにより制御性T細胞が乳酸濃度の高いがん組織で活性化(PD-1発現)していることを明らかにした。これは、肝臓転移巣が抗PD-1抗体治療でhyper progressionする機序の解明に繋がった。乳酸の代謝機構の阻害薬を併用することで、制御性T細胞によるがん組織の免疫抑制が解除され、PD-1/PD-L1阻害薬治療への耐性が改善することを示した。

これまで、PD-1/PD-L1阻害薬を始めとした免疫チェックポイント阻害薬治療は様々ながん種において、治療効果が証明されてきた。一方で、免疫チェックポイント阻害薬が奏功しない患者も多く、治療効果を高める必要がある。特に、肺がんや胃がんの肝転移病変は免疫チェックポイント阻害薬治療が効きづらいことが知られている。本研究により、肝転移病変を始めとした解糖系が亢進した腫瘍においては、乳酸代謝を介して腫瘍浸潤制御性T細胞のPD-1発現が高まり、PD-1/PD-L1阻害薬が奏効しづらくなっていることが明らかになった。

今後、肝転移病変を有する患者では、乳酸代謝経路を阻害する薬剤を併用することで、PD-1/PD-L1阻害薬治療の効果を高められる可能性が期待される。がん患者を対象にした臨床開発に向けて検討を重ね、新たながん免疫治療法への展開を目指す方針である。
(Medister 2022年3月12日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 肝転移病変における免疫チェックポイント阻害薬に対する新規耐性メカニズムの解明 新規がん免疫療法開発の可能性が期待

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