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更新日:2022/02/06

国際共同研究による食道がん全ゲノム解析

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野は、英国サンガー研究所 (Wellcome Sanger Institute)並びにWHO国際がん研究機関 (International Agency for Research on Cancer, IARC)との国際共同研究において、Cancer Grand Challenge “Mutographs project”に参加し、発症頻度の異なる8か国(日本・中国・イラン・英国・ケニア・タンザニア・マラウイ・ブラジル)における食道がん(食道扁平上皮がん)552症例の全ゲノム解析の結果を報告した。食道扁平上皮がんは、食道がんの中で最も頻度が高く、日本人食道がんの9割以上を占める。

本研究は、世界の様々な地域における食道扁平上皮がんの全ゲノム解析を行うことで、人種や生活習慣の異なる地域ごとに発症頻度が異なる原因を解明し、地球規模で食道扁平上皮がんの新たな予防戦略を進めることを目的として行われたもので、世界で初めて国際的ながん疫学研究に全ゲノム解析が用いられた。

本研究の結果、発がん要因の推定に用いられる遺伝子変異のパターン(変異シグネチャー)解析を実施することで、飲酒といった生活習慣、並びにアルコール代謝酵素 (ALDH2)・BRCA遺伝子多型が食道がんにおける突然変異誘発に関係していることが明らかになった。中でも飲酒関連の変異シグネチャー (SBS16)が、日本並びにブラジルの食道がんで特徴的に多く、また飲酒歴のある患者ではSBS16によるTP53変異が多く起こっていることも明らかになった。

本研究は、世界で初めての全ゲノム解析を用いた国際的ながん疫学研究であり、その結果、地域ごとの食道扁平上皮発がん分子機構の特徴を明らかにすることができた。とりわけ日本人症例には飲酒に伴う遺伝子変異機構が強く働き、TP53といったがんドライバー遺伝子の異常を誘発し、食道扁平上皮がんが発症するという仕組みの詳細が明らかとなった。また環境要因のみならず、様々な遺伝子多型の違いも食道扁平上皮がんにおける遺伝子変異獲得に寄与していることも解明された。この結果を日本における食道がんの新たな予防法開発に応用するためには、飲酒に伴う変異誘発機構を解き明かす必要があり、今後も研究を進めていく予定である。
(Medister 2022年1月24日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 国際共同研究による食道がん全ゲノム解析 日本人食道がんに特徴的な発がんメカニズムを発見

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