更新日:2022/02/05
小児がんを対象としたニボルマブの医師主導治験結果を基に古典的ホジキンリンパ腫の小児用法・用量が国内初承認
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、小児期およびAYA(Adolescent and young adult、思春期・若年成人)世代のがん患者のうち、標準的な治療に抵抗性の難治性悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)を対象に、免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの医師主導治験(NCCH1606、試験略称:PENGUIN)を2017年より開始した。
本試験の結果、ニボルマブが投与された26の小児がんの患者のうち、古典的ホジキンリンパ腫の患者1でがんの完全奏効が得られた。また、ニボルマブの有害事象(副作用)と薬物動態は、小児でも成人でこれまで観察されたものと大きな違いがないことを確認した。本試験の結果に基づき、ニボルマブを開発・販売する小野薬品工業株式会社から2021年1月に古典的ホジキンリンパ腫の小児用法・用量を追加する承認事項一部変更承認申請が行われ、今回、2021年9月27日に厚生労働省から承認された。
本試験の責任者で中央病院小児腫瘍科長の小川千登世は、「標準的な抗がん剤治療に抵抗性の難治性小児悪性腫瘍は、がんの種類を問わず予後が不良で、有効な治療がほとんどありません。さらに成人に比べて患者数が少ないことから臨床試験や臨床開発が極めて困難な状況です。そのため本試験のように、早期相の試験であっても、成人ではすでに承認されているがんに対して、小児においても成人同様の有効性が確認されれば、選択肢の少ない小児がん患者における非常に有望な治療選択肢となるとともに、症例数の少ない小児がんの領域において新しい臨床開発のモデルとなることが期待されます。
さらに、今後治験が開始される薬剤では、小児成人同時開発が重要と考えます。小児と成人で病態が同じ疾患で、小児でも一定数の患者がいる場合は、成人の有効性評価と並行して小児でも安全性・有効性評価を行い承認に至れば、小児も含めた患者さんが同時に使用可能となります。また、小児に特有の疾患でも、治療標的を同じくする成人疾患と同時開発することで、小児での臨床開発の加速を期待しています」と述べた。
国立がん研究センター中央病院は、企業が積極的に取り組みにくい小児がんをはじめとするアンメットメディカルニーズに対して有効な治療薬を開発するため、医師主導治験に積極的に取り組んできた。今回の承認は、医師主導治験により治療薬の安全性・有効性が示され、小児での承認取得に結び付いた成功事例となる。
(Medister 2021年11月22日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 小児がんを対象としたニボルマブの医師主導治験結果を基に古典的ホジキンリンパ腫の小児用法・用量が国内初承認