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更新日:2021/09/24

全ゲノム解析によってスキルス胃がんの治療標的を同定

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所の細胞情報学分野(間野博行分野長)および基盤的臨床開発研究コアセンター創薬標的・シーズ探索部門(佐々木博己研究員)を中心とした研究グループと慶應義塾大学医学部病理学教室(金井弥栄教授)は、難治がんであり、また検体の入手や解析が難しく発がん機構やゲノム異常がほとんど明らかになっていないスキルス胃がんについて、しばしば病初期から存在することが知られる腹膜播種による腹水細胞を対象として全ゲノム解析等を行い、病態の解明と治療標的の同定を試みた。

スキルス胃がんは、がん細胞が、粘膜下に広く浸潤し、診断時に既に腹膜播種や腹水を来すことが多い悪性腫瘍で、膵臓がんなどと並んで最も予後の悪いがん種と考えられている。スキルス胃がんでは腫瘍細胞は低分化型あるいは印環細胞の形態を取り、粘膜下への浸潤によって周辺間質の著明な線維化を来すことが知られている。これまで胃がん全体あるいはびまん性胃がんのゲノム解析は報告されてきたが、スキルス胃がんは、手術があまり行われず、また検体を入手できても線維化が強くがん細胞の含有割合が低いため、スキルス胃がんのゲノム異常や発がん機構はほとんど明らかにされていなかった。

そこで今回研究チームは、高純度の試料を得るため、胃がんの腹膜播種からがん性腹水を来した患者の腹水中のがん細胞を純化すると共にがん細胞株を樹立し、これら試料に対して全ゲノム解析を含む網羅的マルチオミックス解析を行い、スキルス胃がんの病態解明と治療標的の同定を試みた。

その結果、スキルス胃がんに特徴的な遺伝子異常を数多く同定し、しかも全体の約4分の1が既存の分子標的薬剤の有効性が期待できることを見いだした。さらに、腹水中のがん細胞から樹立した細胞株を用いて腹膜播種モデルマウスを作成し、各阻害剤を投与したところ、がん細胞の増殖抑制または腹膜播種の消失を確認した。

本研究成果により、スキルス胃がんの詳細なゲノム異常が明らかになった。特に受容体型チロシンキナーゼ―RAS―MAPK経路の遺伝子の高度増幅が特徴的であった。また、マウス実験で多くの分子標的薬の有効性も確認されたことから、今後は同様な患者のがん遺伝子パネル検査への実装や分子標的治療薬の開発への展開が期待される。また、TEAD経路の阻害が全く新しいスキルス胃がんの治療薬剤として開発される可能性がある。
(Medister 2021年9月21日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 全ゲノム解析によってスキルス胃がんの治療標的を同定 難治性がんに対する新たな治療法開発の可能性

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