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更新日:2021/09/04

代表的な小児がんである神経芽腫に対してジヌツキシマブが承認―小児がん用抗がん剤で初めての医師主導治験による国内承認取得―

地方独立行政法人大阪市民病院機構大阪市立総合医療センターは、ジヌツキシマブ(抗GD2抗体)の「大量化学療法後の神経芽腫」に対する薬事承認を得るため、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、医師主導治験を実施してきた。治験結果に基づき、大原薬品工業株式会社がジヌツキシマブの「大量化学療法後の神経芽腫」への適応について薬事申請を行い、6月23日薬事承認を受けた。

神経芽腫は小児がんの中では白血病、脳腫瘍に次いで多く発生するがんである。神経芽腫は主として副腎に発生するが、約6割の子どもたちは診断時に骨や肝臓、皮膚、骨髄などに遠隔転移があり、再発せずに5年間生存できるのは40%程度と予後が悪い疾患である。2010年に米国小児がんグループから、がん免疫療法として抗GD2抗体を用いることで、約20%生存率(無イベント生存率)が向上することが発表された(ANBL0032試験)。これを受けて北米や欧州においては、本治療法が神経芽腫の標準治療として用いられている。

わが国では神経芽腫は希少疾患であるため、製薬会社主導による抗GD2抗体の国内導入の見通しがつかないことから、医師自らが治験を行って承認を目指すこととし、また、米国で免疫強化のために併用された薬剤(サルグラモスチム、アルデスロイキン)が今後も入手不可能であることより、代替としてフィルグラスチム(G-CSF製剤)とテセロイキン(IL-2製剤)を用いることとした。平成25年から開始した第I相及び第II相試験の結果、本治療法が米国で用いられた治療法と遜色のない有効性を示したことから、ジヌツキシマブは、厚生労働省より令和2年8月17日付けで希少疾病用医薬品に指定され、大原薬品工業株式会社より薬事承認申請が行われた。同時に、併用薬であるフィルグラスチム、テセロイキンの神経芽腫に対するジヌツキシマブの併用薬としての適応拡大の承認申請が行われた。この結果、令和3年6月23日に薬事承認され、近日中に保険適用を受けて国内販売される見通しとなった。

なお、本研究では大原薬品工業(ジヌツキシマブ)、協和キリン(フィルグラスチム)、シオノギ製薬(テセロイキン)の各社からの薬剤提供を受けた。医師主導治験(主任研究者:大阪市立総合医療センター原純一)は厚生労働科学研究費補助金、日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業の支援を受けて実施した。

GD2は神経細胞などの表面に存在する糖脂質であり、抗GD2抗体はGD2を認識する1990年に米国で開発されたキメラモノクローナル抗体である。神経芽腫細胞表面に多く存在するGD2にこの抗体が結合すると顆粒球やNKリンパ球が抗体のFc部分に結合して神経芽細胞を攻撃する(ADCC活性)。サイトカインであるGM-CSFは単球や好中球を、IL-2はNKリンパ球を刺激するので、これらをジヌツキシマブと同時に使用することで、より強力な抗腫瘍効果が得られる。しかし、前述のANBL0032試験で使われたGM-CSFは米国内のみの販売で国内への導入の見込みが立たず、また用いられたIL-2製剤のアルデスロイキンは国内ではテセロイキンという別の製剤であったことから、代替としてそれぞれG-CSF(フィルグラスチム)とテセロイキンをジヌツキシマブに併用することとした。そのため、この国内で提供可能な薬剤を用いた治療法が、ANBL0032試験で検証された米国における標準治療法と近似した効果が得られることを国内で医師主導治験として検証する必要があった。検証の結果、国内で提供可能な薬剤を用いた治療法で80.8%(95% CI: 51.4% to 93.4%)であったのに対し、米国での治療法では62.3%(95% CI: 36.7% to 80.0%)の2年無イベント生存率が得られた。

国内製剤であるフィルグラスチムとテセロイキンを今回承認されたジヌツキシマブと併用することで、米国で用いられている治療法に近似した有効性が得られることが明らかとなった。GM-CSFは欧州でも販売されていないため、今回の治療法は米国以外のGM-CSFが入手できない地域においても有用な治療法になると思われる。
(Medister 2021年8月16日 中立元樹)

<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構プレスリリース 代表的な小児がんである神経芽腫に対してジヌツキシマブが承認―小児がん用抗がん剤で初めての医師主導治験による国内承認取得―

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