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更新日:2020/12/30

おしゃべりながんの図鑑

『おしゃべりながんの図鑑』書評

著者名:小倉 加奈子
出版社:CCCメディアハウス
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日本人の二人にひとりががんに罹る時代となりました。ひとことで「がん」といってもその種類はさまざまです。同じ臓器にできたがんであっても、がんのタイプによって治療法もその後の経過も異なります。がんの場合、ただ「がん」と診断するのではなく、そのがんがどのようなタイプのがんなのかというところまで診断が行われます。このようにがんをはじめとする病気の診断を専門に行っているのが病理医です。

同著には病理医がどのような仕事をしているのか、がんをどのように診断しているのか、普段は知ることのできない診断の舞台裏が描かれています。

病理医の仕事

病気になって入院しても病理医に会うことはほとんどないと思います。また、どのように診断が行われているのか知らないという人は多いのではないでしょうか。治療を行うにあたっては、病理医の存在なくしてはじまりません。それほど重要な役割を担っているのが病理医なのです。

著者の小倉先生によると、病理医は日本国内に2483人(2018年8月現在)しかいないといいます。この数値は日本全体の医師の0.7%にあたり非常に少ないのが現状です。加えて、平均年齢は54.6歳と、比較的高いのも病理医の特徴だといいます。病理医へのなり手が少ないことから、特に地方ではがんを専門とする大学病院でも常勤の病理医がいないところもあるのだそうです。人気のない理由は、患者さんを直接診る機会が少ないため感謝されることがないことや、地味であることだと小倉先生は述べています。その一方で、病理医の仕事は増加の一途をたどっているため、病理医不足は深刻な問題となっているのです。

病理医の仕事は多岐にわたります。診断が主体となる病理医ですが、細胞診断や組織診断のほか、病理解剖も病理医が担当します。また、手術予定の患者さんがいる場合には、外科医とのカンファレンスに参加したり、手術後の標本を作ったり、若手の病理医や研修医の指導にあたったりすることもあります。そんな中でも緊張感が高まるのが術中迅速病理診断の時なのだと小倉先生は語ります。これは、いま正に手術を受けている患者さんの病理組織を30分以内に診断するという診断法です。進行性のがんであれば、断端が陽性か陰性かによって切除する範囲も変わってくるため、正確な診断が求められるのです。

がん細胞もさまざま

同著は、タイトルにあるように「がん」の診断について書かれた本です。がんといっても胃がんや大腸がん、肺がんや肝臓がん、血液のがんなどさまざまなタイプのものが存在しています。がんができた臓器によってもがんの種類が異なるため、病理医はそれぞれに応じた判断が求められるのです。

同著の中で代表的ながんとしてあげられているのが「大腸がん」です。大腸がんはほかのがんと比較して、がんらしい強い異型を有しているのだと小倉先生は言います。つまりがんの有無を判断しやすいがんのひとつということです。そのため、若い病理医や研修医が最初に診断を学ぶ時に勉強するのが大腸がんなのだそうです。診断を行うにあたって重要となるのが、さきほど出てきた「異型」という状態です。異型とは、正常から逸脱していることを意味する専門用語です。いま見ている細胞が、正常からどの程度逸脱しているのかということを見極めるのが病理医としての役割なのです。大きく逸脱している場合は「異型が強い」、小さければ「異型が弱い」といったように表現されます。さらに、異型は「核異型」と「構造異型」に大別され……と、同著の中では病理診断に必要な解説もされています。

小倉先生は、病理診断は見た目で判断する主観的な診断法といいます。組織の正常な形や構造がわからなければ「異常である」と判断することはできません。そんななか、がんの中でも最も診断の難しいがんのひとつが乳がんなのだといいます。その理由のひとつは、総称して乳腺症と呼ばれている、乳がんと非常に形が似ている良性の疾患が数多くあることだと小倉先生は指摘します。そして、もう一つの理由は乳がん自体が非常に多彩であることです。

決してひとくくりにできないがんの病理診断。私たちのほぼ知らないところで、日々顕微鏡と向かい合いながら正しい診断に尽力している「縁の下の力持ち」的な病理医の日常に触れられる一冊です。

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