更新日:2023/02/24
発がん性物質を体内に運ぶ?マイクロプラスチックの人体への影響
近年、マイクロプラスチックや海洋プラスチックによる環境汚染が問題となっています。海洋生物や自然だけの問題ではなく、マイクロプラスチックは人体にもさまざまな影響を及ぼします。そもそも自然界には存在していなかった「人がつくり出してきた物質=プラスチック」は、めぐり巡って人の体に害をなす物質になってしまったのです。私たちの日常生活にあふれるプラスチックの有害性についてお伝えします。
マイクロプラスチックとは
マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチック類のことをいい、大きく2種類に分けられます。
●一次的マイクロプラスチック
洗顔料や化粧品などに含まれているマイクロビーズなど、もともとマイクロサイズで製造されたもの
●二次的マイクロプラスチック
レジ袋やペットボトルなど大きなプラスチックが自然環境下で砕けて小さくなり、5mm以下のマイクロサイズになったもの
後者の二次的マイクロプラスチックの細分化は、海のなかではなくほとんどが陸上で起こっています。ポイ捨てされたり不法投棄されたりしたプラスチックごみが紫外線により劣化し、ぶつかりあい摩耗することで小さくなって、川から海へと運ばれていきます。
マイクロプラスチックは5mm以下と小さいため、ひとたび海に流出すると、波に乗って世界中の広い範囲を移動します。北極や南極でもマイクロプラスチックが観測されたという報告もあり、マイクロプラスチックによる海洋汚染は世界中に広がっています。
さらに近年、海岸へ漂着したり、海を漂流したりする海洋プラスチックごみが世界中で問題となっています。日本でも海に漂着したごみの種類を調査した結果、プラスチック類が最も多く漂着していたことが分かりました。
陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量が多い国ランキングでは、1位中国、2位インドネシア、3位フィリピン、4位ベトナムとなっており、上位4位までを東・東南アジアが占めています。日本は30位という結果ですが、プラスチック大国である日本では年間約6万トンのプラスチックごみが発生していると報告されています。また、日本は「廃プラスチック」をマレーシアやベトナム、台湾などの東南アジアに輸出していることもあり、私たち日本人にとってもマイクロプラスチックによる環境汚染問題は他人事ではありません。
汚染されたマイクロプラスチックの有害性!発がん性物質を体内に運ぶ恐れあり
マイクロプラスチック問題は、海洋生物が海の流出したプラスチックごみやマイクロプラスチックを餌と間違えて食べてしまう恐れがあるというだけではありません。マイクロプラスチックはもともと、有害物質を吸着しやすい性質を持っています。その有害物質のなかには発がん性があるものも含まれているため注意が必要です。「汚染されたマイクロプラスチック」ともいわれ、これを大量に体内に取り込んでしまうことで生物にとって有害性があるのです。
マイクロプラスチックが人体に悪影響を及ぼすようになる原因としては、次のことが考えられます。
①有害物質が付いたマイクロプラスチックを海洋生物が誤飲する。
②マイクロプラスチックが体内に蓄積した海産物を人間が食べる。
③その結果、有害物質が人体に蓄積される可能性がある。
このように、食物連鎖を通して最終的に人体にも悪影響を及ぼす可能性があるということが問題となっています。
ここで海洋中の有害物質について少し触れておきます。海洋中の残留性有機汚染物質はたくさんありますが、その中でも発がん性があるとされている有害物質として、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)、多環芳香族炭化水素類(PAHs)などが挙げられます。なお、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)は現在ストックホルム条約によって使用が禁止されており、多環芳香族炭化水素類(PAHs)は一部の国で摂取許容量が設定されています。
発がん性物質を人体に取り込まないためには、海洋プラスチックごみの削減が必要不可欠です。元をたどれば、ポイ捨てや不法投棄などによってプラスチックがマイクロプラスチックとなってしまうわけですから、まずは陸上での廃棄物の適切な回収・処分が重要となります。いま私たちができるのは、不法投棄をしないこと、自治体が定めたルールに従ってごみを出すこと、そしてプラスチックの再利用とリサイクル性を高めることです。そうしなければ、自分たちで生み出したマイクロプラスチックによって発がん性物質を自分の体に溜め込むという、人類にとっての悪循環を断ち切ることは決してできません。
参考資料
(Web)環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況
東洋大学 プラスチックごみから海を守るために消費者の意識を変えるには?
環境庁 海洋プラスチック問題について
日本貿易振興機構(ジェトロ) 2020年の日本の廃プラ輸出量、前年比8.6%減の82万トン
農林水産省 マイクロプラスチックおよび化学物質の影響