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更新日:2021/03/16

肝がん治療選択のための新たなバイオマーカーを同定 ―悪性度や薬物療法治療効果予測の臨床応用に期待―

大阪大学大学院医学系研究科の明神悠太医員、小玉尚宏助教、竹原徹郎教授(消化器内科学)らの研究グループは、肝がんでは患者ごとに異なる様々ながん遺伝子の異常が発症に関与している(腫瘍間不均一性)ことから、これらがん遺伝子の違いががんの悪性度や薬物療法の治療効果に影響を与えていると仮説を立て、新たなマウスモデルを樹立することで、新規バイオマーカーST6GAL1の同定に成功した。

C型肝炎、B型肝炎、並びに近年増加傾向にある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの慢性肝疾患の患者は病気の進行に伴い肝がんを併発することが知られており、その発症は生命予後に大きな影響を与える。肝がんは、現在本邦においてがんによる死亡原因のうち第5位となっている極めて予後不良な疾患である。特に悪性度の高い肝がんは早期発見が極めて重要であるが、現在用いられている腫瘍マーカーの感度は十分ではなく、悪性度の高い肝がんを同定出来る有用なバイオマーカーはなかった。また、進行肝がんに対してはこれまでマルチチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるソラフェニブとレンバチニブが標準治療として使用されてきた。現在異なる作用機序を有する新たな治療薬も開発されているが、この2剤のTKIは肝がん治療において重要な役割を担っている。一方で、2剤の治療効果は同程度であり薬剤選択の指標となる有用なバイオマーカーは存在していなかった。

がんは遺伝子の変異による病気であるという考え方に基づき、近年多数例の肝がんを対象としたがんゲノムシークエンス解析が世界的なプロジェクトとして行われてきた。その結果、肝がんにおいては病態進展に関わるがん遺伝子の異常が非常に多様で、患者ごとに異なることから、極めてがん遺伝子の腫瘍間不均一性が高いことが明らかとなった。一方で、この腫瘍間不均一性が薬物療法の治療効果に与える影響はよく分かっていなかった。

本研究グループは、がん遺伝子の違いによる腫瘍間不均一性が、がんの悪性度や薬物療法の治療効果に影響を与えていると仮説を立て研究を開始した。まず複数のがん遺伝子を一度に肝細胞に導入する手法を確立し、これによりがん遺伝子がランダムに活性化した腫瘍間不均一性の高い肝がんを発症する新規のマウスモデルを作成することに成功した。そこで、このモデルに対してレンバチニブ治療を行うとFGF19遺伝子を発現した腫瘍の割合が無治療群と比べて有意に減少し、FGF19高発現肝がんがレンバチニブに対して高感受性であることを見出した。次に肝がん細胞株を用いたプロテオーム解析により、FGF19の発現制御を受ける分泌タンパクST6GAL1を同定した。また肝がん外科切除例の検討から、血清ST6GAL1により予後不良なFGF19高発現肝がんを選別できることを見出した。さらに、血清ST6GAL1濃度に基づいて患者を層別化すると、ST6GAL1高値群ではレンバチニブ治療群の予後がソラフェニブ治療群より有意に延長していることを見出した。以上より、血清ST6GAL1濃度が高悪性度肝がんの同定や肝がん薬物療法における最適な薬剤選択のバイオマーカーとして有用である可能性を明らかにすることに成功した。

本研究により同定されたバイオマーカーST6GAL1の臨床応用が進むことで、慢性肝疾患患者における高悪性度肝がんの発見や、進行肝がん患者における薬物療法のより最適・最良な薬剤選択が可能となり、生命予後の改善に寄与することが期待される。
(Medister 2021年1月26日 中立元樹)

<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構プレスリリース 肝がん治療選択のための新たなバイオマーカーを同定 ―悪性度や薬物療法治療効果予測の臨床応用に期待―

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