更新日:2021/01/14
血液中マイクロRNAがんマーカー 初の大規模臨床試験 乳がんの新検診法開発目指して4道県で実施
国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室の加藤健室長らの研究グループは、血液検査による簡便で精度の高い乳がんの早期発見方法の開発をめざし、3000人を対象とした大規模臨床試験を2020年12月より全国4道県(愛媛県、鹿児島県、北海道、福井県)で順次開始する。
各道県の日本対がん協会各支部で乳がん検診被検者らに協力を求めて血液を提供させ、乳がんに関連するマイクロRNAがんマーカーを東レの3Dジーンという技術で測定する。その結果と、実際の乳がん検診(マンモグラフィー)結果、精密検査として実施される乳腺エコー検査結果などを比較分析し、マイクロRNAがんマーカーの性能を評価する。
具体的な参加対象者は、各検診機関で乳がん検診を受診する40歳から69歳の年齢層で文書による同意が得られた受検者である。登録目標は3000人、実施方法はまず、参加者全員にマンモグラフィーのほか、乳腺エコー検査を受検させる(マンモグラフィーで「要精検」と判断された受検者は精密検査で、「精検不要」と判断された受検者には本研究による乳腺エコー検査)。採血は9mlで、マイクロRNAがんマーカーを測定する。
マンモグラフィーの結果、乳腺エコーの結果、マイクロRNAがんマーカーの測定結果を比較し、分析する。がんの発見については、まず精密検査による発見で分析し、最終的にはがん登録の情報をもとに分析する。ただし、マイクロRNAの測定結果は、参加者には通知しない(マイクロRNAがんマーカー測定結果と、がん発見との関連を評価するのが本試験であるため)。
血液検査によるがん検診は、手軽で侵襲性が少ないことから、その開発が期待されている。例えば、現行のがん検診の手法にはX線を使うものがあるが、X線の被ばくを減らせるなど、検査時の様々な負担が軽減される。しかし、血液検査によるがん検診の精度に関しては、まだ十分な検証が行われていない。
がん検診に適した検査には、健康な人々(症状のない人々)の中から早期のがんを発見できる、早期治療により死亡率減少につながる、検診を行うことによる不利益が小さい、安価に検査できる、といったことが求められる。既存の検診手法が確立している場合は、その手法と比較して、評価することも欠かせないものである。
本試験は、マイクロRNAをマーカーとした血液検査によるがん検診の精度について、基礎研究での成果が、実際のがん検診においても同等の性能を発揮するのかを検証するための試験である。血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用につながることが期待される。
(Medister 2021年1月14日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 血液中マイクロRNAがんマーカー 初の大規模臨床試験 乳がんの新検診法開発目指して4道県で実施