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更新日:2020/12/22

患者個人に合わせた超高感度血液検査で食道がん再発を早期に検出する方法を開発

岩手医科大学外科学講座の岩谷岳准教授と医歯薬総合研究所医療開発研究部門の西塚哲教授らの研究グループは、札幌医科大学フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門、医療人育成センター生物学教室、国立がん研究センター研究所細胞情報学分野と共同で、血液中を流れる患者特有のがん由来DNAの超高感度検査の食道がん患者診療における実用性を明らかにした。

がん患者診療における治療方針の決定、治療効果判定、治療後の再発診断にはCTスキャンや血液腫瘍マーカーが用いられている。CTスキャンは進行度診断・再発診断に不可欠な検査であるが、放射線被ばくや微小病変の診断精度が問題点とされている。一方、血液を用いた腫瘍マーカー検査は簡便であるが、偽陽性・偽陰性が多く診療経過中の腫瘍量の増減を正確に反映していない症例も数多く見られる。

血液中には体内の細胞から遊離したDNA断片が存在するが、がん患者ではがん細胞から遊離したDNAも血液中を循環しており、腫瘍細胞由来血中循環遊離DNA (circulating tumor DNA: ctDNA)と呼ばれている。ctDNAはがん細胞に由来するため個々の患者のがんに生じている特有の変異を共有しており、個別化血液バイオマーカーとして近年注目されている。さまざまながんでctDNAを用いた診断の有用性を期待する報告がされているが、その実用性に関する検証は少なく、いまだ日常検査には至っていない。

ctDNA検査法は次世代シークエンサー(Next generation sequencer: NGS)を用いた方法とデジタルPCRを用いた方法に大きく分けられる。前者は多数の遺伝子異常を同時に解析可能であり、薬物療法の根拠となる変異の同定などスクリーニング検査に優れている。しかし、解析費用が高額かつ検査に時間がかかるためくり返し行われる検査としては普及させにくいのが現状である。一方、デジタルPCRは少数の変異のみを解析する方法であるが、対象とする変異に対してはNGS解析に比較して10~100倍の検出感度を有するほか、検査時間が短く安価なためくり返し検査に適した手法である。本研究では、デジタルPCRによるctDNA検査が、再発リスクを有する食道がん治療後患者の検査に有効かどうかを検証した。

ステージI~IVの食道がん患者を対象とし、食道がんで高頻度に異常が見られる31遺伝子の変異スクリーニングを行った。患者特有の変異を用いてデジタルPCRにより診療経過中のctDNAの推移を追跡し、CTスキャンや腫瘍マーカーとの比較検討を行った。

治療によりctDNA陰性化が見られた患者では、高度進行がんであっても長期生存が得られた。また、再発が見られた患者ではCTスキャンより約5か月早くctDNAの上昇が確認された。さらに、手術、放射線治療、化学療法の治療効果に合わせてctDNAの増減が見られ、治療終了後無再発の患者ではctDNAの陰性状態が維持されていた。ctDNAによる追跡を行った91%の症例で、「再発・増大の早期予測」、「治療効果の正確な判定」、「無再発状態の確認」、の1つ以上の項目で臨床検査としての妥当性を有することが明らかになった。いずれの項目でもctDNA検査は既存の血液腫瘍マーカーに比べてより多くの症例で臨床所見の推移に合致していた。

ctDNAと食道がん患者の予後に関する検討では、治療開始後にctDNAが陰性化する患者は治療後もctDNA陽性を維持する患者に比べ有意に予後が良いことが示された。以上から、治療経過に合わせ複数の採血ポイントでctDNAの変動を追跡することが重要と考えられた。超高感度デジタルPCR検査を行うことで、ctDNA検査は採血という小さな体の負担のみで、既存のCTスキャンより高い精度で治療後食道がんの診断が可能である。デジタルPCRを活用した本手法は導入しやすく、既存の検査システムを大きく改善する可能性がある。

また、ctDNA検査は再発や治療効果、無再発状態を正確に判定可能でありCTなど侵襲的検査を減少させる可能性があり、ctDNA検査ががん患者の日常的な臨床検査になる可能性がある。
(Medister 2020年11月16日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 患者個人に合わせた超高感度血液検査で食道がん再発を早期に検出する方法を開発

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