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更新日:2020/02/02

体内でのがんリン酸化シグナルを高精度に定量する技術を開発

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所プロテオームリサーチプロジェクト・創薬標的プロテオミクスプロジェクトの足立淳プロジェクトリーダー、朝長毅上級研究員、阿部雄一協力研究員と国立研究開発法人国立がん研究センター朴成和消化管内科長(中央病院副院長)らは、内視鏡検査で採取した直後に凍結した微量の生検検体から、1万個を超えるリン酸化部位を測定し、患者毎のリン酸化シグナルの特性を明らかにする技術を開発した。

がんのゲノム情報を調べて新たな治療につなげる「がん精密医療」が日本でも本格的に開始された。その中でも胃がんや大腸がんなどの消化器がんは、具体的な治療に結びつく割合が低いため、より多くのがん患者に対応することができる次世代型「がん精密医療」の実現が求められている。

抗がん剤として用いる分子標的治療薬の多くはタンパク質に直接作用するため、がん細胞内のタンパク質全体(プロテオーム)の情報は、治療法の選択に有用であると期待されている。特にタンパク質のリン酸化修飾を介したリン酸化シグナルはがん細胞のさまざまな機能を制御し、リン酸化シグナルを標的にした抗がん剤も多数開発されていることから、「がん精密医療」への応用が期待されている。しかし、手術検体等を用いてリン酸化シグナルを解析する場合、手術操作による阻血などの影響のため、体内の状況を反映したデータを取得することが困難であった。

内視鏡用の生検鉗子を用いて採取された生検検体を採取後20秒以内に液体窒素で凍結させることで、リン酸化シグナルの変化を極力抑えたサンプルの採取法を構築した。5名の胃がん患者からそれぞれがん部・非がん部を採取し、生検検体に特化したリン酸化プロテオーム解析によって合計で10162個のリン酸化部位を同定した。がん部と非がん部ではリン酸化プロファイルは大きく異なり、がん部位では細胞周期に関連するタンパク質、DNA損傷に応答するタンパク質のリン酸化が亢進していることが確認された。また患者毎に比較すると、リン酸化情報から取得したキナーゼ活性プロファイルは患者毎の特異性が高く、「がん精密医療」を実行していく上で、その重要性が示唆された。

この技術は、その他の種類のがんにも適用することが可能であり、生検検体は経時的に採取することができるため、治療前の治療法の選択だけではなく治療後の変化をみることで、患者毎に治療の効果判定を迅速に行うことや適切な併用薬の選択が可能になることが期待される。このような次世代型「がん精密医療」が実現すれば、個々の患者に適した薬剤の提供、医療費の抑制、臨床試験の成功率の向上につながる可能性が高まる。
(Medister 2020年2月2日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 次世代がん精密医療への応用に期待 体内でのがんリン酸化シグナルを高精度に定量する技術を開発

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