更新日:2019/11/01
リムパーザ、BRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの画像診断に基づく無増悪生存期間を2倍以上に延長
アストラゼネカ(以下、アストラゼネカ)およびMSD Inc., Kenilworth, N.J., US(以下MSD)は、2019年9月30日、相同組換え修復関連遺伝子変異陽性(HRRm)で、新規ホルモン薬(例えば、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド)による前治療中に病勢進行が認められた転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者387例を対象とした第Ⅲ相PROfound試験の詳細な結果を発表した。
前立腺がんは男性において2番目に罹患率が高いがんであり、2018年には世界中で推定130万人が新たに診断され、高い死亡率を伴う。前立腺がんの発症は多くの場合、テストステロンを含むアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンにより促進される。男性ホルモンの作用を阻止するアンドロゲン除去療法を行ったにもかかわらず、前立腺がんが増殖し、他の部位に転移した場合、mCRPCと診断される。進行前立腺がん患者の約10-20%は5年以内で去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へと進行し、そのうち84%以上の患者はCPRC診断時に転移を有している。また、CRPC診断時に転移のない患者であっても、そのうちの33%が2年以内に転移が発現する。mCRPCに対する治療選択肢は増えてきているが、依然として5年生存率は低いままである。
本試験は、HRRmを有する患者を2つの患者集団に分けて組み入れ解析するよう設計された。主要な解析対象集団は、BRCA1/2またはATM遺伝子変異を有する患者を含めた集団であり、この集団でリムパーザが臨床的ベネフィットを示した場合、副次的な解析対象集団として、HRR関連遺伝子(BRCA1/2、ATM、CDK12およびその他11のHRR関連遺伝子)変異を有する全患者を含めた集団も対象に検定を用いた解析を実施した。
その結果、主要評価項目である画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)のリムパーザによる統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長が示された。BRCA1/2遺伝子またはATM遺伝子変異を有するmCRPC患者のrPFS中央値は、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群で3.6カ月であったのに対し、リムバーザ投与群では7.4カ月に延長していた。リムパーザはこれら患者の病勢進行あるいは死亡リスクを66%低減した(ハザード比0.34に相当)。
本試験では、主要な副次的評価項目である全HRRm患者集団におけるrPFSも達成した。リムパーザは病勢進行または死亡のリスクを51%低減し(ハザード比0.49に相当)、rPFSの中央値はアビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群の中央値3.5カ月に対し、リムパーザ投与群では中央値5.8カ月であった。
また、本結果により、中間解析の時点で別の主要な副次的評価項目である2つの患者集団における全生存期間(OS)の改善傾向が示された。この中間解析の時点で、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群で病勢進行が認められた患者の81%が病勢進行後にリムパーザをクロスオーバーして投与していたにも関わらず、BRCA1/2遺伝子またはATM遺伝子変異を有するmCRPC患者のOSの中央値はアビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群の15.1カ月に対し、リムパーザ投与群では18.5カ月に延長していた。この中間解析の時点で、OSに関する同様の結果が全HRRm患者集団においても認められ、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群ではOSの中央値が14.3カ月に対しリムパーザ投与群では17.5カ月であった(イベント発現割合41%の時点での解析)。
本結果はスペインのバルセロナで開催された2019年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次総会プレジデンシャルシンポウムにおいて発表された。
(Medister 2019年11月2日 中立元樹)
<参考資料>
アストラゼネカ株式会社プレスリリース リムパーザ、BRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの画像診断に基づく無増悪生存期間を2倍以上に延長