更新日:2019/10/13
直腸がんの局所再発に対する医師のためのWEB相談システム運用を開始
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院は、直腸がんが局所再発した患者に対して手術で根治できる可能性があるか、全国5施設の専門医が国内の医師からの問合せにWEBを用いて応じる、相談システム「CONNECT-LR(Consultation system to bring the Next Chance for the Treatment of Locally recurrent Rectal cancer:コネクトエルアール)」(https://connect-lr.net/)を開発し、2019年8月20日より運用を開始した。
直腸がんの根治手術後に初めて再発する部位の頻度は、骨盤内に再発する局所(切除した直腸の付近)が9.6%、肺7.5%、肝臓7.3%であり、局所再発の発生頻度が高いことが特徴である。直腸がんの局所再発は、手術による完全切除(がん組織の遺残のない切除)によって根治が期待できるため、日本及び欧米のガイドラインでは完全切除が可能な場合、手術による切除が推奨されている。しかし、直腸がんの局所再発の診断・治療は難しく、特に切除可否の判断は、担当医の経験や知識、技量によることが大きいため、切除不能と判断され根治の機会を得られないケースもある。
また、高い専門性を持った医師は限られているため、診断・治療の判断に迷った際、直接専門医に相談するのは簡単ではない。本研究では、直腸がんが局所再発したより多くの患者に対して完全切除による根治を目指せるよう、担当の医師が自身の居る場所にとらわれずに容易に相談できる環境を構築した。
「CONNECT-LR」は、株式会社ファインデックスの製品を活用し開発した、WEBを用いた相談システムであり、国内の医師は誰でも無料で利用可能である。システム登録申請後に本システムを通じて、利用者(医師)は専門医(コンサルタント)に対し、直腸がんの局所再発の診断・治療・手術可能施設に関する相談を行うことができる。各相談内容に対してコンサルタントは、原則1週間以内に返答する。本システム専用のメール送受信機能を利用するため、CTやMRI等の画像の送受信が、セキュアな環境で安全かつ容易に行うことができる。
直腸がんの局所再発は手術の難易度が高いため、切除可能な病変であってもかかりつけの病院では切除が困難である場合、専門医がいる病院へ紹介される場合が多くある。本システムが国内で広く利用されることで、より多くの対象となる患者が根治手術を受けられることを目指している。また本システムの有用性が評価された場合、他領域の難治性がん・希少がんへの応用が期待される。
(Medister 2019年10月7日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 直腸がんの局所再発に対する医師のためのWEB相談システム運用を開始 ―全国5施設の専門医が対応、手術による根治を目指す―