更新日:2019/09/09
HER2陽性胆道がん対象医師主導治験開始
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、HER2陽性胆道がん患者を対象に、抗HER2抗体薬物複合体製剤トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)の医師主導治験を開始した。本試験は国立がん研究センター中央病院で開始し、その後順次参加施設を追加し、5施設による多施設共同研究として実施する予定である(現在の本治験登録可能施設は、国立がん研究センター中央病院、北海道大学病院、神奈川県立がんセンター、の3施設である)。
胆道がんは国内の年間罹患数2.2万人、年間死亡数1.8万人という膵がんに次いで予後の悪いがんである。胆道がんは発生部位から、肝内胆管がん、胆嚢がん、肝外胆管がん、乳頭部がんに分類される。治療法は、切除可能な場合は手術が選択され、切除が困難な場合は化学療法が行われる。化学療法としては、1次化学療法としてゲムシタビン、シスプラチン、S-1を組み合わせた治療が標準的な治療とされているが、2次化学療法以降に明確に確立された標準的な治療はないのが現状である。また、近年様々ながん種で承認が相次いでいる、免疫チェックポイント阻害薬も現在までに、胆道がんにおいては有効性が示されておらず、アンメットメディカルニーズの高いがんと考えられている。
本治験の対象となる患者は、産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan GI-SCREEN」に参加している施設において、別途HER2発現胆道がんスクリーニング研究により確認する事としている。
本治験においてHER2陽性胆道がんに対するDS-8201の有効性が確認された場合、胆道がんの治療選択肢が増えるだけでなく、胆道がんにおいても希少フラクションごとや遺伝子異常に基づく治療薬開発が促進されることが期待される。国立がん研究センターでは、治療開発の進みにくい難治がん、希少がんを対象とした医師主導治験や臨床研究を積極的に実施している。
本治験は、日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験推進研究事業「産学連携全国がんゲノムスクリーニング(SCRUM-Japan)患者レジストリを活用したHER2陽性の切除不能または再発胆道癌に対する医師主導治験(研究開発代表者:肝胆膵内科 森実 千種)AMED課題管理番号【19lk0201067h0003】」の支援を受けて実施するもので、DS-8201については第一三共株式会社から治験薬として無償提供されるものである。
(Medister 2019年9月9日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース HER2陽性胆道がん対象医師主導治験開始 胆道がんでの有効な標的別治療開発を目指す