更新日:2019/01/13
「NCCオンコパネル」システムが体外診断用医薬品・医療機器として製造販売承認取得
国立研究開発法人国立がん研究センターは、がんのゲノム医療を提供する遺伝子パネル検査システムとして、国立がん研究センターで開発した遺伝子検査試薬「NCCオンコパネル」と遺伝子変異を検出する解析プログラム「cisCall(シスコール)」の有用性や、解析結果に基づき薬剤選択の検討を行うエキスパートパネルの体制などを、中央病院の臨床研究TOP-GEAR(トップギア)プロジェクトで検証し、保険適用を目指し先進医療での確認を進めている。
それぞれのがんは、生じている遺伝子の変異により、抗がん剤への感受性などの性質が大きく異なる。そこで個々の患者のがんに生じている遺伝子の変異を理解し、最適な治療法を選択することが重要である。このようながんゲノム医療は、がんの治療成績を大きく改善すると期待されている。
これまでのがん医療においては、EGFR遺伝子検査やBRAF遺伝子検査など、ひとつの遺伝子の変異を調べる検査が用いられてきた。しかし、それぞれのがんは、遺伝子の変異が多様であること、また、遺伝子変異をひとつひとつ調べていくには時間がかかることから、一度に多くの遺伝子の変異を網羅的に調べる遺伝子パネル検査を行い、多数の専門家からなるエキスパートパネル会議で検査結果を議論し、最適な治療を選択することが求められている。日本ではこれまで、薬事承認された遺伝子パネル検査がないことから、研究または保険外診療(自由診療)として行われるのみで、保険診療下で行うことはできなかった。
NCCオンコパネルは、研究所ゲノム生物学研究分野/先端医療開発センターゲノムTR分野と研究所臨床ゲノム解析部門からなる開発チームによって、日本のがんゲノム医療のための国産がん遺伝子パネルとして設計・構築されたものである。このパネルには、海外製品には搭載されていないNRG1遺伝子やRHOA遺伝子など日本のがん患者で変異が見られる遺伝子が搭載されており、また、日本人が持つ個人差(遺伝子多型)とがん細胞で生まれた変異(体細胞変異)を識別した検査結果が得られる。加えて、がん患者が生まれながらにもつ遺伝子変異(生殖細胞系列変異)の検出もできることから、遺伝的に発生した腫瘍の診療に役立つ結果も得ることができる。
遺伝子パネル検査では、多数の遺伝子の変異を次世代シークエンサーで解析するが、解析により膨大なデータが生まれることになる。遺伝子の変異には、一塩基変異や挿入欠損変異、コピー数変異、融合遺伝子などあり、これらをコンピュータープログラムで検出することで初めて把握することが可能となる。「cisCall」は、研究所バイオインフォマティクス部門で原版を開発したプログラムで、バイオインフォマティクス(生物情報学)を活用することで、全ての変異を高精度に検出することに成功している。NCCオンコパネルとともにTOP-GEAR(トップギア)プロジェクトでの検証と改良を経て、先進医療で活用されている。また、今回の承認により、シスメックス社より「OncoGuideTMNCCオンコパネル 解析プログラム」として製品化されるという。
今後、がんの遺伝子パネル検査の有効性・安全性が評価され、保険適用について検討される見込みである。
(Medister 2019年1月13日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 国立がん研究センターが開発した日本人のための国産遺伝子パネル検査 「NCCオンコパネル」システムが体外診断用医薬品・医療機器として製造販売承認取得