更新日:2018/04/16
国立がん研究センター中央病院がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査を先進医療で実施
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、患者のがんに関する遺伝子を1回の検査で網羅的に解析し、抗がん剤の選択に役立てる遺伝子検査を4月9日より先進医療Bで実施開始した。
遺伝子解析技術の進歩により、がんの原因となる様々な遺伝子変異が相次いで発見されてきた。遺伝子変異を有する一部のがんには、対応する分子標的薬の治療効果が非常に高いことも分かり、乳がんにおけるHER-2遺伝子増幅、非小細胞肺がんにおけるEGFR 変異、ALK融合遺伝子や悪性黒色腫におけるBRAF変異では、対応する分子標的薬による治療が既に保険診療で行われている。一方、近年、遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる次世代シークエンサーの開発により、治療対象になる多数の遺伝子変異を網羅的に短時間で検出することが可能になった。また、がん種が異なっても(原発部位・臓器が異なっていても)同じ遺伝子に変異がある場合や、同じ分子標的薬が有効な場合もあることが分かってきている。このような背景から、特に標準治療がないがんや標準治療の効果がなくなった患者について、がんの遺伝子を網羅的に調べ、個々の患者のがん組織の遺伝子変異に合った薬剤を選択する治療が望まれている。この、患者のがん組織の遺伝子変異に適した治療を行うがんのゲノム医療は、第3期がん対策推進基本計画においてその推進が掲げられ、全国どこにいてもがんゲノム医療を受けられる体制の整備が進められている。
この遺伝子検査は、国立がん研究センターが日本人の特徴を踏まえ開発した試薬「NCCオンコパネル」を用いて、がんに関連する114個の遺伝子変異と12個の融合遺伝子変異を1回の検査で調べることができるものである。この「NCCオンコパネル」での検査をはじめ、解析に使用するプログラムの開発、解析結果に基づいて方針を決定するエキスパートパネルの実施方法や院内の体制などは、中央病院での臨床研究「TOP-GEAR(トップ-ギア)プロジェクト」(2013年7月開始UMIN000011141)で検証を進めてきた。そして現在、一連の検査システムとして構築し、シスメックス株式会社とともに体外診断用医薬品・医療機器としての薬事承認、保険適用を目指している。
先進医療Bは、保険適用の対象にするかどうかを検討するため、有効性・安全性を臨床研究で評価するものである。本先進医療は「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」として実施する。
対象は、16歳以上の標準治療がない、または標準治療があっても終了(見込み含む)している固形がんの患者あるいは原発不明がんの患者で、国立がん研究センター中央病院のほか、今後、がんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療連携病院の一部とも協力し、205例から最大350例の患者に参加していただきNCCオンコパネル検査の有用性を検証する。その後、遺伝子検査の結果に基づき、既承認薬だけではなく未承認薬や適応外薬を用いた企業治験や医師主導治験なども含めた薬剤選択を行い、その有効性についても確認し保険適用を目指すという。
(Medister 2018年4月16日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 国立がん研究センター中央病院 がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査を先進医療で実施 TOP-GEARプロジェクトで構築した検査システムの保険適用を目指し検証開始
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