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更新日:2018/03/13

がん生存率の推移に関する大規模国際共同研究

国立研究開発法人国立がん研究センターは、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院および40の国際研究機関と共同で、71の国と地域322の人口ベースのがん登録を用い、2000-2014年の15年間に診断されたがん3,750万症例の生存率に関する国際調査(CONCORD-3)の結果を公表した。本研究結果は英国学術雑誌The Lancetに1月30日付で発表された。

CONCORD-3は世界のおよそ10億人をカバーし、がん18局在および局在群を対象とする大規模な国際共同研究である。CONCORD研究事業は、2008年に発表されたのを皮切りに、第2回の2014年に続き今回で3回目となった。日本は、初回2008年のCONCORD-1から参加してきたが、生存率を算出できる精度水準に到達した都道府県が少なく、またがん登録分野での国際研究への関わり方も受け身であることが多かったため、国際共同研究でのプレゼンスを示せずにいた。

今回の共同研究では、日本は研究の企画段階からワーキンググループに参加し、研究に貢献してきた。また、今回用いたデータは、日本の総人口4割をカバーし、データの入力、患者の追跡から集計まで国際標準化した値を用いている。さらに、人口ベースの5年生存率は国際標準の手法で算出され、現時点でもっとも国際的に比較可能性の高いものとなった。

本研究は、前回の10部位よりさらに拡大し、がんの18局在又は局在群を対象とした。対象部位は、成人の食道、胃、結腸、直腸、肝、膵、肺、女性乳房、子宮頸部、卵巣、前立腺と皮膚の黒色腫、成人及び小児それぞれの、脳腫瘍、白血病およびリンパ腫である。

大部分のがんの生存率は、従来同様、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェーとスウェーデンで最も高くなっていた。生存率は、予後不良のがんにおいても上昇傾向にあり、いくつかの国では、肝がん、膵がん、肺がんでも最大5%の生存率向上がみられていた。

日本は、消化器のがんの生存率が世界で最も高い国の一つであり、肺がん、肝がんでも良好な予後を示している。これは、医療水準のみならず、検診の実施状況や、罹患が多いことによる一般的な関心の高さが早期発見につながり、良好な生存率に貢献していると考えられる。一方、皮膚の黒色腫、成人のリンパ性・骨髄性悪性疾患の生存率は、他の地域より低い結果となった。理由は、皮膚の黒色腫および成人のリンパ性・骨髄性悪性疾患で、日本人に発生しやすいがんの構成が違うためと考えられ、日本人の状況を踏まえたがん対策が望まれる。

今回の共同研究により、世界的に対策の必要ながん患者の生存率において、国の特性や年次推移を検討できる、信頼性の高い統計値を算出することができた。CONCORDに基づく生存率は、2017年に経済協力開発機構(OECD)が世界48カ国を対象とした保健医療の質の評価指標の一つに採用されているため、我が国でもがん対策の企画立案・評価に役立てるべきものであろう。
(Medister 2018年3月13日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター がん生存率の推移に関する大規模国際共同研究 2000-2014年に診断された3,750万症例の5年生存率を公表

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