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更新日:2018/03/05

LC-SCRUM-Japan の遺伝子スクリーニングに基づいて、分子標的治療薬に対するがんの新しい薬剤耐性メカニズムを発見

国立研究開発法人国立がん研究センターの研究所ゲノム生物学研究分野、中奥敬史研究員、河野隆志分野長、東病院呼吸器内科、後藤功一科長らは、国立大学法人京都大学、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人理化学研究所、英国クリック研究所と共同で、分子標的治療薬・バンデタニブによって治療されたRET融合遺伝子陽性の肺がん患者のがん試料の機能ゲノム解析を行い、新しい薬剤耐性メカニズムを発見した。

日本におけるがん死因の第1位は肺がんである。現在、日本で年間に約11万人が肺がんを発症し、約7万人が肺がんで死亡している。肺がんの約85%を占める非小細胞肺がんにおいては、約2/3の患者が手術不能の進行がんとして発見され、遺伝子異常にもとづく分子標的治療が有力な治療手段の一つとなっている。しかしながら、がん細胞が獲得する分子標的治療薬への耐性の獲得が、治療効果の大きな障壁となってくる。

薬剤耐性は、EGFR遺伝子変異肺がんにおける二次変異(T790M変異)など、薬剤や酵素の基質であるアデノシン3リン酸の結合部位に生じる変異が主な原因として知られている。今回の研究では、バンデタニブ治療に耐性となる前と後の患者の肺がんのゲノムDNAについて、次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査(NCCオンコパネル検査)を行うことで、RET融合タンパク質の薬剤の結合部位から離れた位置に存在する活性化ループ上に耐性化をもたらす二次変異を発見した。

X線構造解析、スーパーコンピュータ「京」等を用いた分子動力学シミュレーションなど、複合的な解析を行ったところ、この変異は、遠隔的にRETタンパク質の薬剤や基質であるアデノシン3リン酸の結合部位となる領域の3次元構造を変化させる効果を持つことが示された。このアロステリック効果により、変異タンパク質では、酵素活性の上昇と薬剤結合の低下が生じ、薬剤に耐性となると考えられた。

今回の発見により、薬剤の結合部位から離れた位置に存在するアロステリック効果を持つ遺伝子変異が、分子標的薬剤に対する耐性の原因となることが明らかになった。がんのゲノム医療やゲノム研究が進むにつれて、がん細胞のゲノムには、多くの遺伝子変異が生じていることが明らかになっている。しかしながら、それらの多くは、がん化や治療に関する意義がわからないVUS(variants of unknown significance: 意義不明変異)である。今回の研究に用いた手法は、これら意義不明変異を解明し、治療の方針決定の手助けになることが期待される。
(Medister 2018年3月5日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター LC-SCRUM-Japan の遺伝子スクリーニングに基づいて、分子標的治療薬に対するがんの新しい薬剤耐性メカニズムを発見 RET融合遺伝子上に生じるアロステリック効果を持つ二次変異

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